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鮎と蓼 ヌチグスイ*⑤

葉月の旬の魚は、鮎。

きれいな川で育つとスイカ、そうでない川で育つと胡瓜の香りがするとか?そうして、香魚と呼ばれたり、寿命が一年だから年魚とも表わされる。輝く翡翠色も、爽やかな川魚である。

https://japanknowledge.com/articles/kkotoba/26.html

日本の時代の分岐点で、歴史を左右する占いに使われたから、魚編に占うと書くとは歴史も深いお魚だ。

わたくしの育った家庭では川魚を食べる習慣がなかったので、成人してから鮎を口にし、調理した。塩で全体をしごいてぬめりを取り、尻尾やヒレに飾り塩をして焼く。海の魚とは向きを変えて皿に盛り付け、南天の葉を敷いて、蓼酢をかけて頂く。そんなことを大人になってから知った。

京都の涼み処、貴船の川床で頂いたたときは、また格別の気持ち良い極上ランチだった。風流と自然の涼しさで、心身が夏の厳しさから解かれる、なんて素敵な食文化!と感激した。

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山と川の二つのエネルギーを浴びながら、更に美味しい季節の料理を頂ける。コレを幸せとよばず、何と言う?龍穴があると伝わる貴船神社の参拝でご神気まで浴せるとなれば、完璧コーディネートの行楽だ。庶民のわたくしが、そのような僥倖に與れるとは、有難きしあわせ。今思い出しても、嬉しさが心の裡に蘇る。

鮎の塩焼きは、サッパリとして、強い主張のない味、パリッと程よく焼かれた皮の香ばしさと白身のホロリと口の中でほぐれるやさしい感触が好ましい。キモの苦味が好きな人もいるらしい。食欲の落ちてしまいがちな盛夏にピッタリのタンパク源である。

このように鮎は大変美味しいけれど、鮎の塩焼きと言えば、蓼酢。この調味料の妙味がアクセントとなって、鮎の味わいにまた深みをプラスする。

となって改めて蓼酢とは?と思い、調べてみると、予想以上に奥が深い蓼だった。おかげで、驚くほど素晴らしい薬効を持つ、美しい野草について知ることができた。

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蓼食う虫ならぬ蓼食う人は、その大きな癒やしの作用を、酷暑に夏負けしそうな身体に働かせることができるのだ。抗炎症、虫除け、解毒、果ては高血圧抑制作用まであるというこの万能薬草。今まで存じ上げず、大変失礼したような心持ちになる。

レシピもいろいろとあるようで、上の記事を参考に、薬膳メニューとして、積極的に取り入れてみるのも楽しそうだ。

とはいえ、とりあえず、夏に滅法弱いわたくしはまず、シンプルに焼いた鮎と共に蓼の薬効を身のうちに取り入れ、最強の疫病退散の祓えとしたいと願う。

できうれば、久しぶりに豊かな自然の中で、涼やかな川の流れと河鹿の鳴き声をBGMに、が理想である。きっと命が延びるに違いない。これぞ夏のヌチグスイ(命の薬)となるだろう。




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