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うた そら(宇宙)のまにまに⑬ 

音の お稽古

音が出る前の、「音」を大切にしよう
そう わたくしに 話した師
彼は、わたくしが 理解すると
どうしてだか 了知していた

音を この部屋ちょうどの広さに 拡げてごらん
強弱や大小ではない、音の拡がりをリクエストされた
師の求めに応じて、天井の四つの角隅めがけ
弦の音の粒が届くように 弾く

そうだ、旋律が膨らんだ その調子
大層うれし気に ほころんだ表情を見せる師に
ああ、ご希望に添えたのだなと 胸をなでおろした

音のはじまりは 弦が震える少し前なのだ
大切な秘密を打ち明けるように そう言われた時も
わたくしは ただ素直にうなずいていた
師が そう言うのなら そうなんだろうと

みんな(自分たちと)同じように 聴こえないんだよ
溜息をつくように 吐き出された言葉
その諦念を 感じながら
一人ひとり 聴こえている音は 
それぞれに違うのだろうと 考えた
私の聴く音も 師のそれとは違うだろうが
少しだけ 近いのかもしれないと 思ったことだ

自らが求める演奏を 探求することだ
空間に 波長として 出現し、
私の鼓膜を 震わせ
聴覚神経を 伝って
脳に感知されるよりも ずっと以前に
「音」は既に この世界に 生まれている
弾き手の 脳内に 既に 在る 
その「本当の楽曲」(イデア)を 
この宇宙に 解き放つことが 演奏なのだから

* * * * * * * * * * 

箏、三弦、胡弓と、自分の楽しみのためだけに弾いてきた。
一番最後に教わった師との思い出が、心に残っている。
あのお稽古で、わたくしは技術とは別物の、
「音とのかかわり方」を初めて習ったと思う。
貴重で、不思議で、そして為になる時間だった。
その時の一部を記してみた。
あれは、人が人に一対一でなければ伝えられない、
稀有な「音のお稽古」であった。

邦楽とは異なる外国の音楽だが、イデアに近い楽曲と歌だと感じるディマーシュのパフォーマンス。↓ を想起したので、貼り付ける。いかがであろうか。

https://www.youtube.com/watch?v=eOwT9GK_Zho

最後までお読みくださり、ありがとうございます。和風慶雲。







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