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春は牡丹餅 ヌチグスイ⑯

春分の日。昼と夜が同じ長さで、太陽が真東から昇り、真西に沈む日。春分は春の到来となる日であるとか。

真西に極楽浄土があるので、仏教の考え方では其処へ行けるように行いを正して、教えに則った過ごし方を1週間することから、彼岸の入りから真ん中の中日(春分の日)をはさんで彼岸明けまでも7日間である。

母方の祖母の命日はこの彼岸の期間にあり、コロナで法事に参加できなくなって、このたび漸くの里帰りとなった。春爛漫には少し早いが、菜の花が咲く畑や桜の蕾が紅く膨らんで遠目にも枝先がほわほわと薄紅色を纏うようになった風景の中での墓参り。祖母がこの良い時期に逝くことで、毎年わたくしの親族たちを春の再会に招いてくれて改めてありがたいと思った。

振り返ると、祖母は、優しいゴッドマザー気質で、親族全体がうまく世の中を渡ってゆけるように何気ない声がけで導いてくれることが多かった。命令めいたことは全く言わず、肝心なタイミングで、サラリと核心をつく様な一言を聞かせてくれた。彼女は、わたくしの人生の岐路に重大な影響を与えてくれた人々の一人である。

さて、彼岸と言えば、牡丹餅。ラジオで小耳にはさんだ牡丹餅の呼称の四変化が面白い。

春は牡丹餅、夏は夜船、秋はお萩、冬は北窓。

春秋はその時期の花の名前。小豆は赤いので、花に例え牡丹の餅。

夏冬は作り方をダジャレの言い換え。もち米とお米を混ぜて炊いて、すりこぎで潰すが、餅のように搗(つ)かない。「ぺったん」音がしないので、いつついたかわからない。「搗き(つき)知らず」を、夏は暗くてがいつ着いたかわからない「着き知らず」。冬はには「月が見えない」=「月知らず」とするしゃれ心の呼称。夏冬の呼び方、知っているとちょっといい気分、と思うのはわたくしだけかもしれないけれど、日本語の遊び心は風流で楽しいものである。

そして、作り方を調べるうちに知ったのは、小豆の状態に合わせて、元々はお萩は「粒あん」、牡丹餅は「こしあん」が基本だったこと。これは、あんの材料である小豆の収穫時期によると。秋のお彼岸は、小豆の収穫時期とほぼ同じ頃合い。採れたての柔らかい豆であんを作るので、粒あんとなる。一方、春のお彼岸は、冬を越して固くなった小豆の皮を取り除いたこしあんで作るという事情があったようである。今は豆の保存管理技術も品種の改良も進んでいるので、お好みで季節関係なく粒あんこしあんどちらも選べる幸せがある。

ところで、日本の法律「国民の祝日に関する法律」では、春分の日は「自然をたたえ、生物をいつくしむ。」と定義されている。仏教行事とは別に、季節が冬から春に切り替わる春分は、春の到来となる日。春の彼岸の1週間は、長い冬の終わりを意味し、土から草花や虫が顔を出し、そののどやかな雰囲気の日本の自然の神様のお祭り期間である。牡丹餅は、その春の神様に捧げる大事なお供えとも言える。

牡丹餅も祖母と作ったなあ、と懐かしくなったところで、「おはぎがお嫁に行くときは~♪」と、楽しく歌った記憶も蘇ってきた。わたくしが口ずさんだメロディーは↓であるが、今の主流は、曲がアメリカ民謡になっているようだ。けれど、わらべ歌調の渋めの節回しの方がわたくしには、しっくりと耳や心に馴染むものである。

https://www.youtube.com/watch?v=c9JAXgEIA20

牡丹餅を手作りした記憶も蘇ったことをきっかけに、いいレシピはないかと探してみた。すると、カラフルな楽しい牡丹餅レシピを発見できた。↓

https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/2003/spe2_01.html

栄養も豊富なヌチグスイ、牡丹餅を作り、味わい、楽しく歌ったりしてご先祖様と春の神様への感謝の気持ちを改めてかみしめる彼岸、きっと素敵な春のよいさきがけとなるに違いない。

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最後までお読みくださり、ありがとうございます。和風慶雲。

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