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マイクロノベル集 111

826
人類は夏でもマフラーを首に巻いている。あれはなんだろう。「これハ喉っす。口を開っクとウイルスに感染すっかモだし、こコで話ッす」あ、これ寄生するタイプの奴だ。「オ前もツっけろ」病気が怖いんで帰ります。「こうして宇宙人の侵略は食い止められました」


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いいか? 草を引き抜く。根っこが切れる。「あいたっ」喋った。こういう元気のいい草が使い魔になる。根から新しく生えてきた方を使役するんだ。「引き抜いた私を返して下さい」取り返されないように燃やしておく。バレたら家を乗っ取られるから気をつけろ。


828
ふっふっふ。この魔王を倒してトイレに入ろうなど三分早い。「じゃー」うわあ。なぜ俺様の弱点がウォータートルネードだとわかったんだー。覚えておけ、勇者よ。俺様を倒しても第二第三の魔王がトイレの前に立ち塞がるだろう。「お父さん、はやくどいて」はい。


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だから、話の前提条件がお互いにわかっていないから、話が噛み合わないんだよ。『ヤバい』って言葉には『良い』『悪い』両方の意味があるだろ? だからもう一度、丁寧に話してくれ。「さっき可愛い犬を見たわ」わからない! 可愛い猫の間違いじゃないのか!?


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歌う方法を授けましょう。さあ、この種子を飲みなさい。口を開いて。瞼は閉じて。譜面はあなたの耳から入ります。脳に送られた情報は神経を伝って喉を操る。喉と耳はひとつなぎなのです。さあ。口を開き。ここは伸びやかに。ここは儚く。根を張るように。歌え。

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