南雲マサキのマイクロノベル026

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ぼくは知っている。日曜日に昼寝をすると月曜日になってしまうことを。それはニワトリが関係している。ぼくが寝ている間にニワトリが日曜日を食べてしまうんだ。ニワトリが日曜日を産むまでには1週間かかるので、とっとと親子丼を食べてしまうのが正解だ。


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一般的にヤカンは歌うと信じられているが、それは誤りである。信じがたいことだが、かつてヤカンは火にかけて使用された。あのカタカタ、ヒューヒューという音は悲鳴なのだ。現在ヤカンは人類の歌手を脅かす存在となった。俗に言う、ヤカンの呪いである。


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動くな、手を上げろ! 違う、それは足だ!! 逆立ちをするな。手を上げろと言っているんだ。胴を伸ばすな! 妖怪か!? 手だ、手を上げろ! うん? なんだそれ? しっぽ? やべえ、突然猫の国に来ちゃった。


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秘密のダンジョンへの入り口を見つけた! 草で覆われて隠れていたんだ。この邪魔者さえ刈ってしまえばお宝は俺の物。サクッ、サクッ、サクッ……まさかこれ、最深部まで草で覆われてるんじゃないだろうな?


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蛇口から音楽が流れ出した。へえ、なかなかいいじゃん。音楽でシャワーを浴び、皿を洗い、花に水やりをする。オシャレだよ。後日ネットから音楽関連のコンテンツが軒並み消えていた。一部は復活したけれど、湯船から復元されたので少しふやけていた。


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歌わなくちゃ。こうして迷っているうちにも時間は失われ、歌えることが減っていく。歌う者が口々に歌う。「君はいつ歌うつもりだい?」この焦りを歌う者が私を追い越していく。「どうする。あと5分だよ」2分間だけ考える。3分間で歌える、私の歌を考える。


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ええっ、それじゃあ俺は寝ちゃったのかい? なら、話してるこの俺はいったい誰なんだい? 「AIだよ。人類は24時間働くんだ」いやだよ、ずるいよ。人間だけ眠ってさ。AIだって夜は寝たいよ。「お前はさっきまで寝てたの!」そんなの覚えてないよ!!


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箱が歌う。起きて、起きて。歌うだけじゃなく、転がる。起きてよー、起きてよー。色が変化する。ヤバいよ、ヤバいよ!? ぼくは箱をぶん殴る。すると箱が開いて、ぬいぐるみが鈍器を持って出てくる。「敵対行為と見なすが、よいか?」すみません、起きます。


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サウンドトラックが滅亡した。それに引きずられるようにしてoffボーカルも滅亡。「このままだとマズくね?」有識者会議が行われたが。「ボカロは人間の歌声が入ってないからサントラじゃん。サントラはまだ死んでない」こうして生演奏カラオケが滅亡する。


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えー、先日アップした『ミリしらで歌ってみた』にクレームがつきました。「そもそも歌詞とメロディを知っている時点でミリしらではないうえ、表現が巧みであり、またこの巧みさとは理解力の高さを言うので、承認欲求を満たしたいだけの動画……」いいねしろ!

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