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マイクロノベル集/わがまま 013

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複数のお墓をまとめた。寄せ墓、って言うそうだ。「わしゃあんな奴と同じ墓に入るのは嫌じゃ」「いいじゃないハイカラで」「OSはAndroidなのか?」「アメリカ製と中国製は相性悪いだろ」夏になると御先祖様がうるさいなあ。アップデートも受け付けないし。


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さて、寝る準備をしようか。早いって? まあそう言うなよ。ねむけは既にきみの体内に入れてあるんだ。夕方からの食べ歩き、昼のショッピング、早朝限定モーニングメニュー……とどめに、今からタルコフスキー監督の美しい映画を観よう。今夜は寝かせるよ。


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アンドロイドの乙女に恋をした。ぼくだけの物にしたくて解剖したけどAIが見つからない。「自動人形の愛し方を教えてあげましょう」ぼくは彼女に教育を受けている。出産予定は三ヶ月後だ。急がなくては。


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手を上げろ! おっと、説明が足りなかったか? 肩を上げるのはやめてもらおう。肩を上げずに腕を上げるんだ。そして背中を意識して腕を曲げろ。繰り返せ! よし、これでお前の筋肉は破壊された。修復したければ鶏の胸肉でも食うことだ。じゃあな!


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「不自由にお書きください」というパフェのアンケートについて小一時間悩んでいる。


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拾った『悪魔ノート』に「書かれた欲望が実現する」とあったので、「悪魔が現れてノートの原理を説明する」と書き込んだのにまだ実現しない。悪魔め、逃げやがったな。


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人の気持ちが知りたくて、AIの英知を結集して悪魔を召喚した。さあ、教えろ! 人間の秘密を!! 悪魔は黒電話を取り出す。「人類心理は専門外だ。担当者に繋いでやろう。さらばだ」黒電話がジリリリンと鳴り出した。待て、電話の取り方がわからない!


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噛みついたら離さない。がぶがぶがぶ。牙が入り込んでいるから抜けないぞ。「えらいわ。サンドイッチに入ったキュウリ、ちゃんと食べたのね」おえっ。


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「エサを出せ! 無能な人類め、30分で食い尽くしたぞ。これ以上作れないなら、我々にも考えがある。我々がお前たちにエサを与えるのだ。どうだ恐ろしいだろう。遊んで暮らしたくなければエサを出せ!」おかあさーん! ミケが『AIの反乱』ってお話を書いてるよ!!


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見えますか? あなたのために世界を変換しています。美しいものはより美しく、醜いものはほどほどに。ぼくはあなたに世界をご提供します。でも、変換のセンスはあなたのものだから、そこは諦めてね。

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