南雲マサキのマイクロノベル033

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「お前じゃ話にならん」悪魔は困惑した。人間が要求したのは悪魔召喚の魔導書。それを使ってさらに悪魔を召喚し、上役悪魔を召喚し、重役悪魔を召喚し、いまついに大魔王様を召喚しようとしている。「お前じゃ話にならん」怖い。目的がわからない。


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ぼくは椅子に魂を売った。毎日キレイにお手入れをする。これで腰痛とはおさらばだ。「俺はキーボードに魂を売った」うわあ、いいなあ。肩が痛くならないのか。いいなあ。「私はモニターに魂を売りました」目が疲れないのいいなあ。


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いい映画だったねえ。「いや、おまえ寝てたよ」映像が美しい映画は眠くなるって言うけど、あれはうそだね。「だから寝てたって」特に人喰い殺人鬼が波打ち際を走るシーンがよかった。「……それ、ちょっと観たいからタイトルを教えてくれ」


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夢の中でだけ会える友人がいる。小さいんだ。でも大きい。抱っこできるぐらいの大きさだよ。口は動かないんだけど、声は聞こえるの。昨日は会えなかったけど、写真が送られてきた。図書館でお泊まりしたって。おまえかあ。帰ってきたクマさんを抱っこする。


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水を張ったバケツに猫を入れる。あやうく熱中症になりかけだったんだ。とにかく冷やせてよかった。残った水は庭にまこう。棄てると、水に溶けた猫がノラになっちゃうからね。


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さわさわと雨音が降っている。いつの頃からか、雨が落ちてくる前に雨音だけが降るようになった。「カエルの鳴き声みたいなもんでしょ」ひゃー、今日は湿気も先にやってきたよ。ちょっと早めに洗濯物を取り込もう。


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モーと鳴く乳牛をスーパーで買ってきて、冷蔵庫に入れる。常温で保存するとすぐに大きくなってしまうし、食費もバカにならないので冷やしておく。もうスーパーでは牛乳パックを売っていない。mooスーパーでなら瓶牛乳が売っているよ。


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「我が名は食欲魔神モグモグフィト! 焼肉怪獣タンカルビよ、この網の上の肉を食らい尽くせ!!」タンもカルビも焼かれる側じゃん。「た、確かに! ええい、覚えていろ!! こうしてタンカルビはモグモグフィトに美味しく食べられました」一人で食うな。


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怒らないで聞いてほしい。月曜日が来るのがつらい。君がそう言ったから、こっそり君を鍛えていたんだ。じつはこの一ヶ月間、連続で月曜日が続いていた。君は強くなった。もう月曜日なんかに負けない。来月からは火曜日の特訓をしよう。


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マッチング? 敬意と品性を欠いた下品な言葉ね。私のモラルが理解できないなんて問題外。外見なんてどうでもいいわ。重要なのは中身! 才能を感じさせる人間以外はお断り。は? AIの分際で態度がでかい? 私に金を払う人間なんていくらでもいるんだけど?

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