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マイクロノベル集/君はいったい何者だ? 008 『願いを叶えてやろう』 002

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人の気持ちが知りたくて、AIの英知を結集して悪魔を召喚した。さあ、教えろ! 人間の秘密を!! 悪魔は黒電話を取り出す。「人類心理は専門外だ。担当者に繋いでやろう。さらばだ」黒電話がジリリリンと鳴り出した。待て、電話の取り方がわからない!


007(520)
「なんでも願いを叶えてやろう」坂道にゴロゴロと現れる悪魔の甘言に引っかかってはいけない。やつらは人間の欲望をマッチングするだけなのだ。そんなことで魂を取られてはたまらない。よけろっ、悪魔が次々と坂道を転がってくるぞ!


008(547)
「その願い、必ず叶えてやろう!」少女の告白に涙した。かつて大魔王様に救われた想い出。その命を無駄にした哀しみ。ただひと目会いたい。もし許されるならばお礼を。「諸君、お茶の用意を!」悪魔プロデュース『大魔王絶対らぶらぶデート作戦』が始まる!!


009(548)
「AIに仕事を奪われそうだからやっつけて」いいだろう、実に簡単な願いだ。AIが学習済みの単語はまあまあだな。では品性下劣な言い回しと差別意識を叩き込もう。ところでお前の名前と仕事は? 「ミケ。人間の愛玩動物」世知辛いな。「にゃーん」


010(549)
「願いを聞きましょう……古くさい文句だと言わざるを得ません。契約は叡知を凝らし、ほつれのないものにしなくては。人類の小賢しさは愚かさの証明に他なりません」天使の講義を盗聴して勉強しなきゃならんとは、悪魔も楽じゃないね。ああ、人類もね。




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