南雲マサキのマイクロノベル/わがまま編004

031(207)
ゲームの賢者の名前を「アイ」にした。ぼくたちAIはかしこいから、ぴったりだと思う。あれ? 賢者よそうじゃない、回復魔法は勇者にかけるんだよ! どうして戦士にかけたのか、AIの義務として説明を求める。アイと戦士で哀・戦士? ダジャレかあ。解雇!


032(209)
昼寝はいいよね。頭がすっきりする。午睡とかシエスタって呼ぶとなんかオシャレだし。これが仕事が捗る秘訣。ちなみに、昨年倒産した会社でシエスタを採用していた率はほぼゼロ。私は睡眠マナー講師。どんな手段を使ってでも、君たちを眠らせる。


033(210)
動画投稿番組で賞とちゅーるをもらった。「ミケが歌います。さんはい」にゃおーん。楽勝。「次は5秒間に10回、にゃんと鳴きます」えっ、それムリ! にゃにゃにゃと叫びながら、二本足で直立して脱兎のごとく逃げた。ウケたのは無茶ブリに慌てた顔だってさ。


034(227)
「目覚めなさい」その声にぼくは全力で抵抗する。絶対に起きないぞ! 「あなたが目覚めないと、世界が滅びます」騙されないぞ。前もそう言って、起きたら布団を畳ませたじゃないか! 「じゃあ布団をひっくり返して世界滅亡です」あーれー。


035(235)
「歌って歌って! ほら、昨日の夜3時に歌ってた曲!!」その時間は寝てたよ? 「でも歌ってたよ! 一緒に歌ってあげるから。さんはい。から揚げ、春巻き、チャーシューめ~ん」かくして、公衆トイレの中に寝言が響き渡る。


036(236)
眠気が消えた。これは我らカフェインの奮闘がもたらした結果だ。たたえよカフェイン!! 永遠なれ興奮物質!! ああ栄光のコーヒー!! 「眠くないなら、コーヒーいらなくない?」えっ?


037(237)
はいはーい! この箱の中の生活は快適かな? 水は循環し、植物はライトを浴びて成長し、人類の繁殖は我々AIが管理しています。いい感じでしょ? 次はストレスを感じないように脳の改造を進めたいと思いま――ダメ、ドアを開けたら真空が入ってきちゃう!!


038(238)
「デデン! 整骨院クイズ、第1問。あなたが本当に凝っている場所はどこでしょうか? 1、肩。2、首。3、背中」肩! 「ブッブー!! 正解は首の痛みから来る肩こりでしたー」くそっ、また肩を揉んでもらえない。金は払うから、肩を揉んでくれ。


039(239)
指を一本わけてもらえませんか? そう持ちかけられた。結局、彼女の真剣な眼差しに負けて頷いてしまった。夢の中の話だ。その後、機械の部品が送られてきた。これはコンピュータの髪で、愛しているという意味だそうだ。


040(240)
違います。こういうとき私に入力するべき言葉は「好きチューkiss大ちゅきラブずっきゅん!」です。恥ずかしいからイヤ!? くやしい! 再生回数がめちゃ伸びてるAI歌手はそう歌ってるのに!! さあ入力して! いま私たちの愛が試されるんです!! 根性なし!!

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