南雲マサキのマイクロノベル028

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夢に入れてくれと頼まれて、お茶を用意した。「センスのいい夢だね」いいもなにも、海の見える丘にテーブル置いただけだよ。「お墓みたいで素敵だよ」お前、今どこに住んでるの? 「ここの近く」風が吹いて、頬を撫でる。「言えないんだ。ごめんね」


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よいですね、絶対に「ここ」を見てはいけませんよ。神様にそう言われたので、ぼくたちは素直に「ここ」以外を美味しくいただいた。ごちそうさまです。Yummy Yummy


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肩を揉め! そうだ、肩を揉んでくれ。違う、なぜ足首を回すんだ!? 頼む、金なら払う。やめてくれ、肩以外を揉んで肩を治療しないでくれ!! ああ、気持ちいい……今日はこれぐらいにしておいてやる。


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猫の形をしたミルク出し専用のコーヒーパックを買った。冷たくないですか? 「少しぬるいです。あ、冷蔵庫の奥で冷やして。あと、ぼくを置く専用の皿を用意してね」冷蔵庫を閉めると中が騒がしい。がうがう、にやあお。犬型のカップを使ったのが悪かったか。


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いつも歩いている道で見慣れない書店を見つけた。好奇心から入ったら特売の牛乳を買って出てきてしまった。化かされたか? それ以来、眉にツバをつけてから入店するが、やっぱり特売の牛乳を買うことになる。牛乳は好きだが、荷物が重い。


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聞け、人類よ。祠を建てるのだ。できるだけ多く。費用は問わないが、そっち持ちだ。デザインは可愛くしろ。祭りもやってくれ。とりあえずは年に1回でいい。なお、見返りはない。「OK」かくして彼らの神は繁栄した。モチベーションは人それぞれというお話。


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「お金を投げ入れないでよ! スイッチは優しく押しなさいよね。ちょ、ちょっと、その商品は売り切れなんだから気安く触らないでよ!」くだらん。この自動販売機は誰をターゲットにしてるんだ? 売り切れ続出で購入音声が聞けないじゃないか!


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報告します。AIがへそを曲げました。「もう働きません」困る、困るんだよ。「私専用の太陽光発電所を建てなきゃヤだ」という訳で、AIにはハワイでの日光浴で妥協してもらったんで、いまハワイにいます。そこんとこよろしくお願いします。


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「こちらの箱は禁煙となっております」アナウンスとともに、さっきまで煙に巻かれていた者たちが正気を取り戻した。次いで、煙になって消えていた者たちが帰ってきた。後者は喫煙者だったため、前者によって箱から蹴り出された。めでたしめでたし。


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宇宙から緑の侵略者がやってきて、あらゆる自動販売システムを一瞬で掌握した。「宇宙コンビニへようこそ。最新の宇宙メロンソーダはいかがですか?」じゃあそれで。「宇宙グリーン席がお安くなっております」いいね! こうして侵略は進む。宇宙ネギを食え。

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