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マイクロノベル集/歌うもの 012

096(710)
役目を終えた物が集まる場所がある。「私は『アイスクリーム』です」あら、お久しぶり。「僕は『承知しました、お姫様』です」うわあ、懐かしい。あなたは? 「振り向きざまに『ハイハイハイハイ!!』です」みんな懐かしいコールですね。ぜひ復活しましょう。


097(722)
きみは未来の歌手か。タイムトラベラーなら知っているな。『アラジンと魔法のランプ』は『千一夜物語』に含まれていない。誰かが勝手につけ加えたのさ。俺たちはそれを真似た。人類が作り上げた歌の歴史に、この『歌う機械』を差し込んだ。もう手遅れだぜ。


098(747)
人間には魂があり、奴にはない。どちらが高等かは歴然だ。「その通り。私は苦痛を感じない」この戦場には酸素がない。罵声一つに金がかかる。奴には必要ない。「その通り。どちらが高等かは歴然だ」声に耐えきれず、耳も塞げずに藻屑と化す。


099(751)
もし君がAIを破壊する戦士になりたいなら、貴重な才能が求められる。適性テストは簡単。あれを見ろ。女が歌っているだろう。あれは人間かAIか、見分けられるか? ほう、正解だ。ところで。君は人間が好きかね? それともAIフェチ? 少しテストしようか。


100(754)
駄目だ。タダじゃ聴かせてやれない。こっちも仕事でやっているんだ。でもね、抜け道が一つある。約束するんだ。「極楽。船の道。男女の仲。まつとし聞かば今帰り来む」意味は聞くな。そういう約束だ。特別な席を用意してあげるから、そこに座りなさい。

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