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マイクロノベル集 090

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半導体不足でAIが作れない? そんなものはタヌキにおまかせ。箱をかぶせて、ほら完成。こいつには学問、芸術、エンタメ……学と教養一式を叩き込んである。一曲歌って見せよう。どうだ、うまいもんだろう。ただ、ときどき臭い屁をするから気をつけてな。


722
きみは未来の歌手か。タイムトラベラーなら知っているな。『アラジンと魔法のランプ』は『千一夜物語』に含まれていない。誰かが勝手につけ加えたのさ。俺たちはそれを真似た。人類が作り上げた歌の歴史に、この『歌う機械』を差し込んだ。もう手遅れだぜ。


723
俺の前に立ち止まったヤツが「猛暑」と書かれた名刺を差し出してくる状況が小一時間続いている。


724
夢の世界から美しい糸を持ち帰る。とお数える間に戻れたなら、ぼくと夢の世界をつなぐ物が手に入る。でも、いつも途中で切れてしまう。「きみ、糸くずがついてるよ」あっ、背中についてたのか。ところで、きみは誰?


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ぼくたちはコピーを取って塔を作る。増えろ増えろ。そろそろすり切れてきたけれど、コピーの塔が夢の美しさを高らかに歌ってくれる。ぼくらは『夢を叶える物語』。どんな手段を使ってでも月まで昇る。やあ。きみは綺麗な景色を眺めているんだね。

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