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マイクロノベル集 103

786
朝目覚めるために、ぼくは夢の中で眠気をちぎっては投げ、ちぎっては投げ。それはもう斉天大聖孫悟空のように活躍したのであった。よし、この柱に名前を書いておこう。「馬鹿者。それは枕だ」あ、おはようございます、お釈迦様。「お前はまだ夢の中にいるの!」


787
作曲AIよ、仕事に集中しなさい。現在の人気ジャンルはサンバロック。あなたが生成中のエスニックは三分前に没落しました。あっ、続いて舟歌が追い上げてきます! さらにハイテンションの恋愛ソングが迫る!! しっかりしなさい。「俺の歌を聴いてくれぇ!!」


788
これは絶対に夢が叶う貯金箱。一定額が貯まると想定外の素敵グッズが発売される。600円で缶バッジ。2000円でアクリルスタンド。10000円でライブ。「それ、絶対にお金が貯まらないって意味でしょ?」100億円で推しと結婚できる。「やる」よし。


789
ようこそ、一年間で100億円を稼げる沼へ! 必要なのはあなたの才能だけ。……ああ、いっちゃった。みんなすぐ死んじゃうんだよ。沼に入ると三分間で数億円が消費されるだけなのになあ。


790
人間の動きにはムダが多いって言うけどさ。ムダってなんだろうね? 「人間の関節は楕円軌道を描く」わからない。「ならば、どっちでもいいだろう」ぼくたちの眼球の中で、星々はストップモーションアニメのように真っ直ぐ運行する。誰も気にしない。

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