マイクロノベル集 205「昔みたいに」

No.1241
道路工事が進んだせいで土手に隠していたトンネルが見つかってしまった。三十年前に小学校の友達と作ったタイムトンネルで、僕たちの思い出が保存してあるのに。どうしよう。このままじゃ、僕はサッちゃんのことが好きで結婚したってタカシ君にバレちゃうよ。

No.1242
あいつ、最近元気がないな。前はまぶしいぐらいだったのに。ここはテンションを上げてもらうために一肌脱ぐか。ヨッ！　おおっ、いい感じ、いい感じ。輝いてピカピカしてきたぞ。なんだか人間も寄ってきたな。みんな楽しそうだからオールオッケー！

No.1243
「枯れ木に花を咲かせましょう」だって？　ははは。お嬢さん、ワシは枯れているわけじゃないんだよ。これは葉が落ちただけさ。そりゃあ冬は寒いが、耐え忍ぶことには慣れているから、安心して雪を降らせるといいよ。春になったらまた咲くからさ。

No.1243
「どこにもいないの。さっきまでここにいたの。一緒にお話しして遊んでたの。信じてくれる？」信じるよ。でも、さっきじゃないんだよ。もう夢の国はお片付けは終わって、ヒツジさんだけが残ったんだ。そのヒツジさんも小さくなっておもちゃ箱の中へ。またね。