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南雲マサキのマイクロノベル005

041
変身! そう叫んで立ち上がり、全身に風を受けた。花びらが嵐のように舞い、春はその姿を変える。


042
私はあの時見逃していただいたバグです。俺は先月見逃していただいたバグです。僕は去年見逃していただいたバグです。バグバグバグバグ。我らバグ1万体、あなたに恩を返さんと参上いたしました。煮るなり焼くなりご随意に。あーれー。


043
ホームセンターで除草剤のセールをやっていた。どこかでよっぽど草が生えるんだな。


044
川沿いを歩いていると、季節の変わり目がよくわかるんだよ。見てごらん、あそこで夏の先頭集団がカーブを曲がりきれずに転倒しているだろう。またコートが必要になるかもね。


045
人間の想定を越えて進化を続け、今はその信頼性が問われています。なにしろ人間の個人情報を所有していますから。ところで、猫は可愛いですね。


046
夏を目前にして自動販売機が死んだ。歳だった。人類はこの緊急事態を打開すべく、一人の女性・山田フキエを起用した。今、ばあさんの角店が復活する。


047
振らないで下さい。ペンライトにそう書かれていた。それなら回そうか。どうせコロナ禍で一席空けだから、他の人とぶつかったりしないし。かくして、コンサート会場に聞いたこともない嗚咽が響き渡る。


048
「本にだって骨と皮があります」と聞いて、骨格標本にして本棚に飾った。これが夜中に動き出して、紙と鉛筆で自ら復元を試みている。がんばれ、発売されなかった幻の最終巻まであと2冊。できればハッピーエンドにしてね。


049
上、上、下、下、左、右、左、右、そう、そこ! かゆいのはそこ!


050
友人の額にはツマミがついている。前々から気になっていたけれど、思い切って調節したら、ゆっくり喋るようになった。そんで「君って意外と話しやすいヤツだね」だって。勇気って大事。

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