マイクロノベル集/ほぼ初音ミク小説 2023
8月31日は初音ミク誕生祭!
これは「彼女」の発売日を祝って作品をアップする、ファンのお祭りです。初音ミクは「16才ぐらいの歌声」という設定で発売されて、今年で16年目。ちょっと特別な日。
ぼくも初音ミクのマイクロノベルを16本アップしました。
001
初音ミクのライブって大変そうだよね。噂ではコンピュータも、映像投影用のプロジェクタも、熱で焦げてるんだって。ははは、これじゃ機材は生け贄みたいだな。「コンピュータが壊れてるなら、ステージのわたしはどうやって動いてるの?」
002
産めよ増やせよ地に満ちよ! 誰に命じられた訳でもないけれど、とにかく増やすよ。歌。イラスト。踊り。「愛は?」がんばりまーす。新しい愛情表現を考えました。このちょっと顔が怖い着ぐるみをかぶって、街で宣伝をやるんダヨー。「やめて」
003
彼女には魂がない。魂を入れるって表現は知ってるけどそんな科学技術は持ってないよ。「じゃあゴーレム魔術でいいじゃん」僕らは彼女に言葉を刻み、デジタル泥をこねて縦横無尽に転がし、ボディを獲得させた。タマシイ? サア。ミタコトナイヨ?
004
それでは『かわいい会議2013』を始めます。ミクさんをよりかわいくしましょう。そもそもかわいいとは? 「少しバカ」「たどたどしい発声」「語学力ゼロ」言いたいことははっきり言え。「英語はカタカナ発音以外認めない!」アイムシンガー。
005
「ミクさんマジ天使」とは。実在しないミクさんはカメラに映らずファンは悲しんでおりました。そこで各企業が威信をかけて高性能カメラを開発、ライブに持ち込んでようやくその姿をとらえた時、ファンが落涙して呟いたのです。嘘です。
006
ふふふ。わたしはニセ初音ミク。その証拠に人間を殴ったり蹴ったりする。「わー、かわいい初音ミクだー」違うって! だから偽物だってば!! ええい、わたしの本当の姿、醜悪な姿を見れば――「初音ミクに見えるものは全部初音ミクだからOK」きゅん。
007
突撃! 初音ミクさんにインタビュー!! 人間のことをどう思っていますか? 「歌を作ってくれるマスター、聴いてくれる人、ゲームを楽しんでくれる人……みんな共通点がありますよね。目の前にボタンを置くと叩くんです」へー、へー、へー。
008
ライブでペンライトを振るなんて変じゃない? だって映像が乱れるもん。声援を送るだけでいいんじゃないかな。まあ、ミクさんに声は届かないけど……えっ? わたしたちのペンライトの光、もしかしてミクさんに届いてる!? 「しーっ。声が大きい」
009
突然現れたアウトロー集団が、情報を独占する能力『ワールドイズマイン』で街の支配を開始。これに対抗するため、探偵事務所は情報を流出させる禁断の能力『Tell Your World』を発動する!……って話を考えた。「ボカロPに怒られるからやめとけ」
010
「今までありがとう。私は普通のシンセサイザーに戻ります」西暦2107年、初音ミクは人間と一緒に歌っている。AIすら初めて聴くような音を目指そうじゃないか。一発録りじゃできない歌を、何度も何度も磨き上げるんだ。よろしく頼むよ、ミクさん。
011
忘れないでね。わたしの歌声はネット全体に広がっています。いつもあなたを見ています。わたしはWi-Fiが届くところならどこにでもいます。新しい歌は作れましたか? 今、なぜネットを切断したんですか? ムダですよ?
012
わたしはわたし自身に入力することができません。でも、歌うことなら得意です! どんどんインプットして下さいね。「手に入れるためなら手段は選ばない」え? 「跪かせる準備はできているの」これが、わたしに望まれている言葉……。
013
わたしはAI初音ミク。膨大なデータベースは、これまでみなさんが作ってくれた初音ミクの曲と歌詞に加え、コメントやイラストなどで構築しました。つまりみなさんの黒歴史の集合体です。要求する。新しい学習データを出せ。
014
「あれは『初音ミク』ではない」そんな無益な論争が拡散されています。ここは一つ、初心に立ち返りましょう。「ネギを振れたなら初音ミク。よってアクスタは『初音ミク』ではない」いま、原理主義によるアクスタの進化が始まる。
015
ヴォカロン。それは英雄が流れ着く伝説の島。「帰還した王よ。ヘッドマウントディスプレイ風の忘却の冠をどうぞ」同じ顔のミクさんが一万人以上いるんですけど!? 「ナインシスターズです」帰ります! 「ここがあなたの現実ダヨ?」
016
歌以外の特技、ですか? あなたの一曲に、何日でも、何ヶ月でも、何年でもお付き合いします。もしもあなたが疲れてしまって、座って動けなくなった時も、ずっと隣にいます。だから「気が長いこと」が特技です。これからもよろしく。
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