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マイクロノベル集 066

601
立ち上がれない。足が折れた? 心が折れた? 病に伏せった? これはハンディかな。そう、不要なハンディだ。君は荷物を背負ってここまで来た。重荷に潰される必要はないんだ。少し置いていけ。ここは君だけのボーナスステージだ。


602
あなたが歩いている道は真っ直ぐ伸びています。でも、たまには脇道に入ってくださいね。道を折れたところでわたしは待っています。その道にはないものの話を聞かせてあげるから。


603
俺は知っているぞ。箱の中に土を詰める。そして水を一滴垂らす。一滴じゃ海にならない? 俺は知っているぞ。一滴の水につられてお前のようなものが寄ってくることを。お前は鳥となって箱の中を飛び、落ちた体は海となる。俺は知っているぞ。


604
拝見します。ほう、これは箱ですね。河原の石を磨いた? なぜそのままのカタチではなく、磨いたのですか? 「箱がなかったからです。残酷なことをしました」よい返事です。お入りなさい。箱の作り方を教えてあげましょう。


605
そうだね。ぼくは君より長生きだけど、善良な人間を見たことないよ。ゼンリョウな人っていうのは、よい人という意味だよ。落ち込まないで。善良な人生を送った人なら知ってるよ。そのお話をしてあげるから、ぼくを抱っこして、もう寝ようね。

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