エスケープ

サムライ・エスケープ②

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「テッチュロウウウ!」

 叫び声の正体は、既に分かっていた。

「ヤヘジ! お前が裏切り者か!」

 おれは即座にハッパを取り出した。濡れてはいるが、効力に問題はない。今は戦闘力が大事なんだ。

「オオオラアアア!」

 傲慢な声と拳が、おれに襲いかかる。
 鋭敏になった視力が、頭部にいるヤヘジを捉えた。レバーか何かで、コイツを動かしてるらしい。

 右。左。もう一度右。
 動きは緩慢だが、一撃は重い。地形が変わる。倒木や穴が、山を痛め付けていた。本来なら、死んでいる。

「クソッ!」

 おれは毒づく。あの頭部に刀を届けねば、絡繰は止まらない。ならば。

「死ねえええ!」

 緩慢な拳が振り下ろされる。が、避けない。
 直方体の拳にそっと飛び移る。腕にしがみつき、刀を口に咥えて。拳の振り上げを耐える。

 瞬間、俺とヤツの目が合った。驚いている顔すら、はっきりと見えた。

「――!」
「キエーッ!」

 おれは左腕に力を込めると、右手で刀を握り……投げ付けた!


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#繋がっても繋がらなくてもいいから俺の創作を見てくれ
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