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現代折り紙の極地

随分、久しぶりの折り紙。

去年、親が入院した際、病院の帰りに紙を購入していたのを完全に忘れていた。

折り紙で使う紙となるとかなり特殊な部類になる。

勿論、折る作品によっては一般的な物で問題ないが、複雑な作品となると薄手で、はりのある、しかも大変大きなサイズの紙(ハトロンとか四六判)が必須となる。

大型の文房具店、例えば世界堂(漫画描きにもお馴染み)や伊東屋でも購入出来るが、意外と前述したような適切な紙がなく、やむを得ず「竹尾」まで行くことになる。

竹尾とは一体…(笑)。

竹尾は神田にある紙の専門店で、凄まじい数の見本帳(サンプルを自分で見て触れて購入出来る紙の束)が白を基調としたお洒落な店内に設置されている。

流石に紙の専門店だけあって世界堂より紙の選択の幅が広い。

特に複雑な折り紙に適した紙の入手は意外と難しく、試し折りに最適な安価なクラフトペーパーさえ薄手となると、なかなか入手困難だ。

もっとも、目星の物が決まっているなら通販という手もある。

しかし、やはり折りたい作品は当然毎度変わるので、色や質感、薄さを直で見て選びたくなるもの。

そして竹尾の店舗に必ずしも在庫が常時あるわけではないので基本的には取り寄せということになり受け取りの際、再度足を運ばなければならない。

勿論、郵送して貰えばいいわけだが、いつもケチって電車に揺られて行くことになる。

去年は病院の帰りだったこともあり気分転換にもなった。

御茶ノ水から竹尾まで結構な距離なので面倒といえば面倒なのだが途中楽器の専門店があって(作曲も頓挫してるんだよな…)演奏できないのにエレキギターに見惚れてしまうのだ。

飾っておくだけでもいいかな、など邪な想像を巡らしつつ歩く。

竹尾までは一本道なので迷うことはないが、そうそう行く店ではないので(10年ぶりか)
まさか閉店してないよね(失礼)と、少し不安もあった。

この頃スマホもなくネットカフェで調べるのも面倒なので、まあ、大丈夫だろうと高を括ったわけだが…

何とか無事たどり着けた。

流石に10年ぶりと言うこともあり、欲しかった紙が廃盤になっていたりと時の移ろいを感じる(苦笑)。

普段は購入しないような上質な紙まで購入したのだが去年は部屋の片隅に立てかけたまま放置してしまっていた。

(これまで度々noteの見出しで使った作品は遥か昔折ったものでした。苦笑)

ここ最近、思考することが多すぎたので頭を休めたかった。

今回折るのは大好きな折り紙作家、神谷哲史さんの「エンシェントドラゴン」。

神谷さんは昔、TVチャンピオンで度々優勝してる方なので折り紙界では超有名人。

現在は白山の、おりがみはうす(作品の展示や書籍販売などしているギャラリー)のスタッフとして働いているんで行けば普通に会える(笑)。

火沢は口下手なので本人を前にして「ファン」です、とは言えなかったが、神谷さんの作品集を御本人に接客していただいて購入したこともある。

普通に客と店員である(笑)。

神谷さんは、複雑系折り紙作家の中心的存在で国の内外を問わず多大な影響を与えた人だ。

ゲームやファンタジー系のモチーフが多く、デザインが極めて「格好いい」のでファンも多い。

とりわけドラゴンは神谷さんの独壇場という感じで神谷さん以上に格好いいドラゴンを折る人を俺は知らない。


今回のエンシェントドラゴンは2002年に制作された物で最近、牙などを追加してバージョンアップされたものが発表された。

ソシムから出版されている「ORIGAMI DRAGONS」

神谷哲史さんの作品集はこれまで「おりがみはうす」のみで販売されてきた。
これは、あまりに内容が高度でマニア向けであるため。

しかし近年、折り紙の認知度が上がり、複雑な作品が一般の方に受け入れられつつあるため、おりがみはうすの書籍並みの難易度の折り紙本が一般書店でも流通するようになった。

この本は神谷作品のみの作品集ではないが、一昔前ではまず、考えられなかった光景。

すごい時代だ。

まず、いきなり折ってもいいのだが所見で綺麗に折れるか微妙なので複雑な作品であれば通常、安価なクラフトペーパーなどで「試し折り」をする。

複雑な工程の確認、紙の厚さ、サイズが適切か、などを確認するのである。

そして本番で上質な紙を使う。

旧バージョンのエンシェントドラゴンは何度か折ったことがあるが、牙が追加されただけでも凄まじい難易度で想像以上に堪える(苦笑)。

今回、改めて自分が若くないのだと身にしみた(苦笑)。


80センチ四方が目安らしい。
随分昔の余り紙があったので、これを使う。
328工程のうち52。

折り線をひたすら付ける作業。紙が大きいとスポーツのよう(苦笑)。最近折り紙をやらなくなった理由の一つ。意外に体力を使うので、本当に疲れる。

ここから本格的に折り畳んでいく。
まだまだドラゴンには程遠い。
無数の襞が…
実物はもっとヤバい(笑)。
紙の重なりが異常。
中心のグチャグチャが頭部なのだが新バージョンで牙を追加したためか仕込みがヤバい。
脚が汚い(苦笑)。

ここまで2日。
脚の部分が紙の重なりで、ぱんぱん。
これ以上折り込むのは不可能かも(苦笑)。

と、いうか紙がやはり小さすぎた。

3日目

スマホで検索してみると皆、くしゃくしゃになりながらも最後まで折ってる。

まあ、試し折りなので練習だと思えばいいか…

分厚い四肢を捻じ曲げるように力技で折っていく…

指が痛い。

なんとか形に…
地獄でした(苦笑)。
頭部の情報量が凄まじい…これが一度も切り込みを入れず正方形の紙一枚で折られるわけ。
信じられます?
全体像。
光の加減で白く写ってしまったが同じ物。
手乗りドラゴン。
サイズが丁度良い。

折り紙歴35年くらい…
数多折ってきたが…
折り図がある作品では最高難易度だと思う…

これ…
本当によく書籍化できたな、と。

折り紙は、たいして金もかからないので人に勧めたい趣味だけど複雑化すればするほど紙の選択が難しくなる。

今回、薄手のクラフトペーパーを使用したがまだ厚く感じた。

雲流紙やカラペなど極薄の紙もあるが、折り紙に適した物にするため糊で裏打ちしたり、加工が面倒くさい。

そして今回のエンシェントドラゴンのような作品の場合、ただ薄ければいいというものでもなく(貧弱になってしまう)なかなか丁度良い紙が国内では少ないと思う。

そして80センチ以上となるとハトロン判ということになり入手がさらに難しい。

竹尾でもお気に入りの紙が廃盤になるなど、理想の紙の入手は折り紙を実際折ること以上に難しい場合もある。

本番用に赤い紙も買ってあったのだが、クラフトペーパーと同サイズでほんの少し厚いかもしれない。

それなりに高価だったためチャレンジする勇気は今のところない。

それほど紙の重なりが凄まじく折りにくい作品なのだ。

今回の記事は80センチのクラフトペーパーでどこまで綺麗に折れるかの検証に留まった。

ちょっと悔しいけど、いい紙が見つかったらリベンジするかもしれない。

それでは、また!


















































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