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【名大ニュース】ヒトと動物の垣根を超えた新薬開発へ/COMIT1周年シンポジウム

名古屋大学と岐阜大学が連携する「One Medicine創薬シーズ開発・育成研究教育拠点(COMIT)」は、開設1周年を記念して3月5日、名大EI創発工学館でシンポジウムを開催しました。両大学などで創薬に関わる研究者らが登壇し、「One Medicine=ヒトと動物の疾病は共通」という考え方の下で取り組む研究成果を報告。参加した研究者や企業の関係者らが、ヒトと動物の医薬品開発の加速に向けて情報を共有しました。

シンポジウムで登壇した岐阜大学の宮脇慎吾准教授は、イヌの遺伝性疾患を研究してヒトの治療につなげようという研究を報告。特定の犬種で見つかった血液凝固異常症の研究例を挙げ、イヌのゲノム(遺伝情報)から疾病の原因となる遺伝子の変異を推定し、それをマウスに組み込んで検証することで原因を特定したほか、マウスで遺伝子治療を確立してイヌへの応用を目指していることを報告しました。
また、ヒトの疾病への応用について宮脇准教授は、遺伝子改変マウスでヒトに近い病態を再現することができてきたとして、「ヒトとイヌとで同じ疾患が見つかれば、マウスの研究を介してヒトとイヌ、双方の治療に貢献できる可能性がある。マウスはイヌとヒトをつなぐ“共通言語”となり得る」と展望を語りました。

新たな薬の候補化合物は、マウスなどの動物に投与して安全性や有効性を確かめるものの、動物ではヒトの疾病を完全に再現できないため、ヒトに使用する薬として実用化するための治験に進めるのはごく一部に限られるのが実情です。
そこでCOMITでは、ヒトの疾病を再現できる動物をオーダーメイドに作り、有望な候補化合物の開発を促進するほか、産官連携や人材育成も行い、創薬ターゲットの特定から候補化合物の実用化までを通して支援する方針です。

COMITは、医学、獣医学、薬学、工学などの研究者が横断的に連携して「Sharing Medicine(人獣共通医療学)」という新たな学術領域の開拓を目指す拠点として、2023年4月に設立されました。ゲノムに加え、細胞や組織など様々な尺度で動物とヒトを比較し、病態解明や創薬につなげる予定です。
拠点長の岐大医学研究科・矢部教授は、「創薬研究を加速させて伴侶動物、そして人の医薬品を同時に開発していく。その先に人と動物のウェルビーイングを実現したい」と、30年先までを見通した構想を語りました。

COMIT拠点長・矢部 大介教授(岐阜大学大学院医学系研究科)

【リンク】

・東海国立大学機構 One Medicine創薬シーズ開発・育成研究教育拠点
https://comit.gifu-u.ac.jp/
 
・One Medicine創薬シーズ開発・育成研究教育拠点シンポジウム開催のお知らせ
https://comit.gifu-u.ac.jp/seminar/post-1719.html

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