ベートーヴェンにとっての英雄になれなかったナポレオン。フランス革命の複雑さ~ベートーヴェン:交響曲第3番『英雄』
こんばんは。名古屋クラシック音楽堂(@nagoyaclassicca)です。フランス革命とクラシック音楽の関係をテーマにした第4回?です。
今日のテーマは、ベートーヴェンとナポレオンの切ない関係について。とても有名なエピソードの残るベートーヴェン作曲の交響曲第3番『英雄』を取り上げます。
今日は少し長めです。
ナポレオンの半生~誕生から皇帝へ
ナポレオンが生まれたのは1769年のコルシカ島。イタリア半島の西に位置するフランス領の島。
父方のブオナパルテ家は、イタリア貴族の血統でしたがフランスに寝返りフランス貴族と同等の地位を得ます。
ナポレオンは、1784年にパリの陸軍士官学校に入学。優秀な成績で卒業し、1785年に砲兵士官として任官。1789年のフランス革命後の混乱で人材の乏しいフランス側において旅団陸将(少将相当)に昇進し、一躍フランス軍を代表する若き英雄へと祭り上げられていく。
フランス革命へのヨーロッパ諸国の警戒から各国からの宣戦布告に対し、ナポレオンは連戦連勝し1797年、パリへと帰還したフランスの英雄ナポレオンは熱狂的な歓迎をもって迎えられた。
1779年にクーデターを起こし、統領政府を樹立し自ら第一統領(第一執政)となり、実質的に独裁権を握った。
その後も、対仏大同盟を崩壊させることに成功し、フランス内政においても1804年に「フランス民法典」を整備するなど尽力する。
しかしナポレオンの暗殺未遂事件が頻発し、王党派など反ナポレオン勢力に対して独裁色を強め、帝制への道を突き進んで行くことになる。
そして1804年5月、国会の議決と国民投票を経て世襲でナポレオンの子孫にその位を継がせるという皇帝の地位についた。
ナポレオンと同時代に生きたベートーヴェン
一方、ナポレオンと同時代に生きたベートーヴェンはどんな半生を生きたのか。
ベートーヴェンは1770年、当時の神聖ローマ帝国ケルン大司教領のボンに生まれます。
ベートーヴェン一家は、ケルン選帝侯宮廷の歌手(のちに楽長)の祖父の恩恵で生計を立てていた。ベートーヴェンの父も宮廷歌手だったが、祖父ほどではなく、息子のベートーヴェンに期待をし音楽のスパルタ教育をする。
1789年に宮廷楽団員に任命され、5月にはボン大学に入学する。同じ年の7月14日にバスティーユ監獄襲撃が起こりフランス革命が始まる。
ボン大学は、啓蒙思想を研究するアカデミーが前進でベートーヴェンもフランス革命の思想的な理念である「自由・平等・博愛」に大きな影響を受けた。
1792年、ハイドンへの弟子入りが認められ、ピアノの即興演奏の名手(ヴィルトゥオーゾ)として広く名声を博すようになる。
ベートーヴェンはなぜ交響曲第3番を書いたのか
啓蒙思想の流れをうけたフランス革命の思想的な理念に影響をうけたベートーヴェン。
フランス革命後の世界情勢の中、王政からの市民の解放を行うナポレオン・ボナパルトへの共感から、ナポレオンを讃える曲として作曲し、タイトルに『ボナパルト』と付け、献呈しようと思い立ったのです。
1802年の夏に曲を書き始め03年に完成しました。
革命の英雄に憧れ、失望する
交響曲第3番が完成後まもなくナポレオンが皇帝に即位し、その知らせに激怒したベートーヴェンは「奴も俗物に過ぎなかったか」とナポレオンへの献辞の書かれた表紙を破り捨てた、という逸話がよく知られています。
結局、タイトルも「シンフォニカ・エロイカ(英雄交響曲)」のタイトルの後に「ひとりの偉⼤な⼈間の思い出を祝して」という⾔葉が添えられたのみでした。
曲は、献呈者でもあるパトロンのロプコヴィツ侯爵の邸宅で私的に初演された後、1805 年4⽉7⽇、ウィーンで公開初演された。
この後、ベートーヴェンの住んでいたオーストリアの首都ウィーンが2度にわたってナポレオン率いるフランス軍に占拠され、戦禍に巻き込まれたりする。
こうしてベートーヴェンの心は完全にナポレオンを軽蔑し、失望していくのです。
【動画】ベートーヴェン:交響曲第3番『英雄』
管弦楽:オランダ放送室内フィルハーモニー
指揮者:フィリップ・ヘレヴェッヘ
コテンラジオで「フランス革命」を総復習できる!
前回もご紹介しましたが、歴史を面白く学ぶコテンラジオでフランス革命がテーマになっている回があります。
#55 戦争天才・ナポレオン!敵は、全欧州。 ― COTEN RADIO 歴史を面白く学ぶコテンラジオ では、ナポレオンがどんな人生を送ったかがわかりやすく知れます。
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