村上春樹の小説を読むことは、他人の生活の中にある音楽と食生活を覗き見することだと思う『ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第3番』
いつの頃だったか、好きな女の子が好んで読んでいた村上春樹の小説を僕も読むようになった。
村上春樹の小説の魅力は、主人公や周りの登場人物が聴く音楽や食べるもの、それらが登場する他人の生活の中にある日常感だと僕は思っている。
事実、村上春樹の小説の中には、ジャズやクラシック音楽を聴いている場面や、パスタを茹でたり、サンドイッチをを作ったり、バーでピスタチオの殻を床に捨てる場面がたくさん登場する。
クラシック音楽や食べ物が僕の生活に染み込んでいく
僕はそんな場面に出会うたびに同じ曲を聴き、同じ食べ物を作って食べるのを習慣にしていた時期がある。
それまで、姉たちが必死に練習していたピアノや父がステレオで満足そうに聴いていたクラシック音楽は、僕の生活の日常にあったけれど、曲名はおろか作曲家の名前もほとんど知らなかったし、自分で積極的にクラシック音楽を聴くこともなかった。
それが村上春樹のおかげで、作曲家の名前を覚えて、登場人物が聴いたと思われるCDを探して聴いて、ほぼ初めて自分でパスタを茹でたりするようになった。
風の歌を聴け×ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第3番
村上春樹の『風の歌を聴け』は、1970年の夏、海辺の街に帰省した <僕> は、友人の <鼠> とビールを飲み、介抱した女の子と親しくなって、退屈な時を送る。2人それぞれの愛の屈託をさりげなく受けとめてやるうちに、 <僕> の夏はものうく、ほろ苦く過ぎさっていく。青春の一片を乾いた軽快なタッチで捉えた出色のデビュー作。
ベートーヴェン「ピアノ協奏曲第3番」は、 小指のない女の子が勤めるレコード店で登場する。「僕」は差し出されたヴィルヘルム・バックハウスの盤とグレン・グールドの盤からグールドの盤を選ぶ。
グレン・グルード バーンスタイン&コロンビア交響楽団
バックハウス カール・ベーム&ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
どちらも甲乙付け難い演奏で、主人公がグレン・グルードを選んだ理由は分からない。(たぶん選んだ段階では演奏も聴き比べてないだろうな…)
皆さんはどちらがお好きですか?
とはいえ、僕はこの小説の1文で、グレン・グルードとバックハウスを知り、同じ曲を違う演奏家や指揮者、オーケストラが演じたものを聴き比べるという行為を知ることになる。
これは結構衝撃で凄い体験をしたことを覚えている。
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