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句を読む―おいなりさんを囲む

すべて分かつた振りして春の油揚げ

佐藤文香 編『天の川銀河発電所』より
「中山奈々」

油揚げ。
どんな料理を想像しますか?

私がこの句を読んで連想したのは、おいなりさんでした。

春、と入っているからかな。お花見の席に合いそうなものを想像したのかもしれません。

おいなりさん、作るのが結構好きです。お揚げを甘辛く炊いて、椎茸とかにんじんを刻んだものも煮て、ご飯に混ぜ込んでお揚げに詰める。
うちのおいなりさんは三角です。

中身はお家によって結構違いますよね。うちは椎茸と人参を入れるけど、ご近所さんからもらったのは酢飯とごまだけだった。それも美味しい。

ふと、中山さんの句に戻ると。
「すべて分かつた振りして」という、いろいろあるけどとりあえずいったん丸く収まった形、がおいなりさんに似ているな、と思います。

あなたの言うこと、全部理解できたわけではないけど。
私の言うこと、何も分かっていないみたいだけど。

とりあえず、今は桜の木の下で、一緒においなりさんを食べている。
危ういといえば危ういけれど、人間関係って全部そうかもしれないな。

(こちらは同人誌なのですが、中山さんの作品が収録されています)

***

現代俳句・短歌を好む私が、ひとつひとつの作品を読んで思ったことをぽつぽつお話ししています。
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私が読んでいるのはこちらのアンソロジーです。


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