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優しい言葉

うちの三男の発言や表現がちょいちょいおかしいのは、きっと周りの子より幼いからだと思っていたのだけど、最近になって「これは天然なのでは?」と思うことが増えた。

例えば学校から帰ってきて遊びに行くという三男に、「夕方に雷雨が来るかもしらんから、雷の音が聞こえたらすぐ帰っておいでや」と言うと、「雨なら遊んでていいの?」と聞くし、4点だった都道府県テストに頭を抱えている私の横で、「だってふりがなが書いてなかったんだもん」と平然と言う。ふりがな書いてたらみんな正解できるやんか。

思えばこの子は小さい時から、『長い・短い・暑い・寒い』の表現はいつも逆だったし、タンポポと言えなくて「タンポポポ」となんかちょっと多くて可愛かったのに、お好み焼きは「お友達焼き」とサイコパス発言をする不思議な子だった。

よく喋るのに圧倒的に語彙力が足りなくて、ついこないだも「お母さん、大変!頭にのった黒いツブツブが落ちた!!」と叫ぶので何かと思ったら、あんぱんのごまが床に散らばっていて、私は『ごま』という単語を知らなかった三男に心底驚いた。

あと、プラネタリウムの丸い外観を「バランスボール」とも言ってたっけ。進撃してくる巨人の遊び道具じゃないんやで、あれは。跳ねたらマジで危ないと思う。


子供の言い間違いや勘違いは可愛い。
でも、小4にもなってこれは大丈夫なんだろうか。


加えて三男はお人好しだ。人を疑うことをあまりしない。それでも流石におかしいと思ったら私に聞いてくるのだけど、人を疑うことに罪悪感があるのか、すごく思い詰めた顔をして「ちょっとお母さんに聞きたいんだけど…」と切り出してくる。

「先生がね、18歳だって言うんだけど、18歳でも先生になれるの?」

先生、何を言うたんや。

詳しく聞くと、子供達に年齢を聞かれた先生が「永遠の18歳」と答えたらしい。そんな昭和のアイドルみたいなセリフに、みんなは「うそだー!!」とゲラゲラ笑っていたのだが、三男は『でも、先生が言うし…』と不安になったという。

「それは冗談やで」
「えー、だまされた!!!」

真相を理解した三男はプリプリと怒っていたが、私はこれまた「永遠の18歳」に騙された三男に心底驚いた。先生、うちの子は冗談が1ミリも通じません。


そんな三男だけど、彼はとても優しい。

ミニバスの体験にきた低学年の子がいれば、側についてストレッチから丁寧に教えるし、コーチの集合がかかれば手を繋いで連れて行く。

私が通勤途中にうり坊と出会った話をすると、「ママを探していたんだね。車が走るから匂いが消えちゃったんだよ。かわいそう」と本気で心配していたし、家の前で野良猫のフンを見つけた時は、「お家がないから仕方ないよね。お腹痛かったんだね」と労わるほどの優しさ。


そしてつい数時間前、ミニバスの練習帰りにスポーツカーが走り去るのを見た三男が、「スポーツカーってかっこいいけど、ボクは乗りたくないなぁ」と言うものだから「どうして?」と聞くと、「だって二人乗りだったら、お父さんとお母さんを一緒に乗せれないじゃん」と答えた。

そんなこと言ってくれるのは三兄弟の中で三男しかいないので、私もついつい嬉しくなって「じゃあ運転できるようになったら、お母さんを買い物に連れてってね!」と原田知世ばりの笑顔でお願いすると、

「今、お母さんがボクをたくさん送迎してくれてるから、大人になったらボクが運転して恩返しするよ」

なんて男前なことをサラッと述べて、私の視界を曇らせた。


人より幼くて、天然で、語彙力がなくて、お人好しで、表現も独特だけど、時折り現れる優しい言葉に嘘がない三男は、間違いなく私の自慢の息子だ。

多少の不安はあるけれど、これからもこの子の成長を楽しもう。


今日は、そう思えた日だった。





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