見出し画像

乳酸菌発酵と生体アミン

頭痛や動悸、呼吸困難などを引き起こす原因であり、食品安全上の問題があるとして研究が進められている生体アミン。最悪のケースではアナフィラキシーショックを引き起こし死に至るとされています。

生体アミンはアミノ酸からの合成によって作られる物質です。ヒトも動物も植物も、そして微生物も体内で合成することが出来ます。このため微生物の活動によって腐敗が進んだ食品の中には高い濃度で検出されますが、同時に発酵食品などの、微生物の代謝を利用して作られる食品の中でも同様にそれなりの量が検出されます。これは微生物の代謝が強く関わっているワイン造りにおいても同じです。

ワインに生体アミンが含まれる可能性が高いタイミングやその原因は現在ではかなり明らかにされています。そうした中でもっとも多くの生体アミンの合成が行われるとされているのが、MLFの工程です。MLFは赤ワインの醸造で多く採用されている醸造手法ですが、最近増えているナチュラルワインでは造り手が意図しない形でMLFが進行する可能性があり、そうしたワイン中には意図しない濃度の生体アミンが含まれることが想定されます。

生体アミン自体はほとんどの発酵食品に含まれているものであり、特別なものではありません。しかしその一方で、人体有害性や食品安全性を考えるのであれば、可能な限りその含有量を減らす努力をすることは食品に関わる生産者の義務だといえます。

ここではMLF中の生体アミンの生成を中心に、ワイン中における生体アミンの合成について一歩踏み込んで解説をしていきます。

この記事はNagiと一緒に学ぶオンラインコミュニティ「醸造家の視ているワインの世界を覗く部」に投稿された記事の一部を再編集したものとなります。
#サークル記事

ここから先は

3,296字 / 3画像

¥ 680

期間限定 PayPay支払いすると抽選でお得に!

ありがとうございます。皆様からの暖かい応援に支えられています。いただいたサポートは、醸造関係の参考書籍代に充てさせていただきます。