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実はポンコツなのに褒められる不思議

皆さんワインのオフフレーバー、という言葉はご存知でしょうか?
オフフレーバーという表現はあまり一般的ではないようですので、もしかしたら欠陥臭という言葉の方が知られているかもしれません。まぁ、どちらも同じ意味ですのでどっちでもいいんですが、要は本来はワインにあってはいけない、まさに「欠陥」としての臭いのことをいいます。

今日はちょっとこのワインの欠陥臭にまつわるお話でも書いてみようかと思います。


ワインの欠陥臭、種類はいろいろありますが、ブショネとかが有名だと思います。コルク臭とも呼ばれるやつですね。ちょっとだけ専門知識をひけらかしてみると、TCAと呼ばれる成分がワインの中に存在することで生じるオフフレーバーです。
ちなみにTCAはトリクロロアニゾールの略です。”クロロ”という単語が入っていることからも分かるように塩素が関係しているのですが、、、まぁ、どうでもいいですね。興味があったら調べてみてください。いろいろなサイトがすぐに見つかると思います。

このオフフレーバーですが、その種類によって原因がそれぞれ違うんです。で、その原因というやつは基本的に化学物質です。それこそTCAみたいなやつですね。
ちなみに、リースリングというブドウ品種から造られたワインで典型的な香りと呼ばれることもあるペトロール香という臭いはTDNと呼ばれる化学物質が原因です。TDNはトリメチルジヒドロナフタレンの略ですね。うん、やっぱりどーでもいいです。詳しく知りたい方は、「徹底解説 | ぺトロール香」という記事を以前書いたことがありますのでそちらでも何となく読んでみてください。

で、この各種欠陥臭の原因になっている化学物質ですが、その量によって感じられる人と感じられない人とがいます。

むちゃくちゃたくさん入っていたら誰にもでも分かるんですが、なにしろ元々が入っていてはいけない物質ですから、その量は基本的に少ないです。ですので、その少ない量をそれでも感じちゃって不快な気分を味わう羽目になっちゃう人と、幸運にも感じられなくて楽しくワインを楽しめる人が出てしまうんです。
敏感な人ほど損をする世の中なんですね。鈍感力が大事です。

それはさておいて、この敏感さもしくは鈍感さのことを「閾値」と呼んでいます。なにやら難しい漢字ですが、「いきち」と読みます。その人が対象となるものの存在を知覚できる「最低値」のことです。これ、「しきいち」とも読むようです。こちらの方が意味は分かりやすいですね。

で、この閾値ですが「最低値」を指していますので、値が低ければ低いほど敏感である、ということになります。逆に閾値が高い、ということはそれだけの量がないと感じることが出来ない、つまり、鈍い、ということです。
ちょっと面倒くさいですが、ここまでいいでしょうか?

ワインの欠陥臭は化学物質が原因で、
その化学物質を感じられるかどうかは人によって違っていて、
その感じられる最低限度の量のことを閾値という、
閾値が低ければ敏感、高ければ鈍い

ということですね。

そしてここからは私の話になるんですが、私、どうも軽度のアレルギーがあるようで硫黄とかアセトアルデヒド、ケトンといった化学物質が原因になっている欠陥臭に対してはたぶん、軽く自慢してもいいんじゃないかな、ってくらいにすごく敏感です。まぁ、アレルギーがあるってことは突き詰めれば生命の危機に関わることなので、そりゃ敏感じゃなきゃ逆にダメでしょ、ということでもあるんですが。
上の言い方をするなら、これらの化学物質に対する閾値が低いんですね。人一倍。

ただ人間、得意分野があれば不得意分野もあるわけでして。
私、ブショネに対しては人一倍どころか人二、三倍くらい鈍いです。TCAに対する閾値がとても高いんです。
これが不思議なところで、塩素に対しては敏感なんですよ。なのにTCAになると閾値が上がってしまってわかんなくなっちゃう。なんでなんでしょう?ワインの中にあるのがダメなんでしょうか。でもワイン以外でブショネを感じられても意味ないんですよね...

まぁ、それもまた置いといて。
しつこいようですが、私のTCAに対する閾値は高いわけです。なので、逆に言うとそんな私がブショネを感じるワインという奴はほぼ全員が同じようにブショネを感じられるわけです。実際に何人かでワインを飲んでいる場で私がブショネを指摘して反論されたことはこれまで一度もありません。むしろ皆気が付いていたけど指摘していなかったのに、私が空気を読まずに指摘したから便乗している感が無きにしも非ずです。最近はけしかけられているような気さえします。酷いですね、みんな。
もちろんこの広い世の中、TCAに対して私よりもさらに高い閾値をお持ちの方もいらっしゃるとは思うんですが、まぁ、それを加味しても十分に私はTCAの認識に関してはポンコツなわけです。

ところが、です。
たまたま私が抜栓してブショネを指摘している場面を何度か見かけてしまった人がいたわけです。

私が指摘できるほどのブショネですから、その場の誰が抜栓していても同じように指摘していたと思うんですが、まぁ、タイミングが悪かったんですね。私が指摘して、実際に確認したその場の全員が異論を述べない場面を何度か見かけてしまったものですから、

Nagiってすげぇ!なかなか意見が一致しにくいTCAを百発百中じゃないか!!

となってしまったんです。
事実は完全に逆なんですが、なぜか結果は私のTCAに対する閾値はかなり低く、かつ信用性も高い、となってしまったわけです。不思議です。そんな頓珍漢な褒められ方をしてしまうと、正直、ちょっと困ります。というか、引きます。自分にドン引きです。
いや、敏感どころかポンコツなんですが、、、と言ってみてもただの謙遜と思われるんですよ?もう、申し訳なくて。。。


ただ、事実はどうであれ、確かに私がTCAを指摘すればそれはほぼ100%の確率でTCAです。そして、それはそれでまた事実なんですよね。
きっちりとした閾値の測定をすれば明確に答えは出てしまうんですが、誰がどれくらいの閾値を持っているのかなんて実際には分からない、というグレーな中でやっていると、指摘して全員が納得できた、という事実の方が重要視される場面はたぶん多いです。
これはもう、ポンコツの役得だと最近は開き直っています。

これで今回のお話しはおしまいです。
え、何を言いたかったのかって?
実は先日公開した、ちょっと真面目に書いた記事が全く反応してもらえなくて軽くへこんでたんです。そこで、

気晴らしのために単に自慢をしたかった!それだけ!!

です。
お目汚し、失礼しました。

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