ブドウの花と温度の影響を知る

ブドウの花が開く時期になりました。ブドウの花は萌芽から7~9週間で開きはじめ、満開になったおよそ100日後には収穫のタイミングが訪れます。またブドウにとって開花は枝の急激な生長期入りの1つの合図でもあります。

ブドウ畑では花が開き始めるのと時期を同じくして枝が一気に伸びはじめ、葉の枚数も増えます。こうした生長期はその年の良好な収穫のために欠かすことのできないものですが、同時に気温や病気の影響を受けやすい時期の開始でもあり、栽培家にとっては天気予報から目の離せない日々が始まることになります。

いくら剪定で枝の数を管理し、その年の収穫のための準備を進めていたとしても、各枝にきちんと花がつき、その花が開き、実を結ばない限りすべては絵に描いた餅になってしまいます。開花不良や結実不良は予定している収穫量を実現する上で絶対に避けたいものです。

ブドウの開花や結実の進捗に対してヒトが栽培技術的側面から何らかの介入をすることは現状できません。そうした人為的介入ができない一方で、自然環境の変化はいくつかの面でブドウ畑からの収穫を増やす方向に後押ししています。温暖化により花序の形成、開花率の向上、そして結実率の向上が望めるからです。開花時期前後の気温の上昇はブドウに対してポジティブな影響を与えます。

この記事では温度がブドウの花を中心とした生理にどのような影響を及ぼすのか、その詳細を解説していきます。

この記事はNagiと一緒に学ぶオンラインコミュニティ「醸造家の視ているワインの世界を覗く部」に投稿された記事の一部を再編集したものとなります。
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