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美しい泡を生み出すには | スパークリングワインの泡を化学する

スパークリングワインが人気です。

世界的にみてスティルワインの生産量は大きな伸びを見せていない一方で、スパークリングワインの生産量は右肩上がりに伸びてきています。造れば造るだけ売れる、とまでは言いませんが、スパークリングワインがワイナリーの販売量にも単価にも大きな貢献をしてくれることはほぼ間違いのない事実です。それほどまでにグラスの中を立ち昇る泡は飲み手の心を魅了して止みません。

スパークリングワインを造る際の最大の肝は味や香りもさることながら、泡をより美しく見せることです。グラスの底から上がっていく泡が液面まで届いてもなお美しく残っている光景。その光景だけで飲み手は華やかな気分になることが出来ます。

スパークリングワインをグラスに注いだ際に出る泡の量はワイン中に溶け込んでいる炭酸ガスの量、溶存二酸化炭素量でほぼ決まります。そしてグラスに注いだ際の美しい泡立ちはグラスの状態でほぼ決まります。

これだけを聞くとスパークリングワインに重要なのは溶け込んでいる炭酸ガスの量だけのように思えるかもしれません。間違いです。溶存二酸化炭素量が規定するのは立ち昇る泡の量だけです。この泡が液面に届いた時、そのまますぐに弾けて消えてしまうのか、しばらく残って目を楽しませてくれるのかはガスの量では決まりません。それを決めるのが、醸造です。

スパークリングワインでもビールでも、泡を持った醸造酒の醸造で重要な指標として挙げられているのがタンパク質です。タンパク質量を多くすると泡持ちがよくなるといわれています。一方で単にタンパク質量を増やしても泡持ちが必ずしも改善されるわけではないこともわかっています。

美しい泡を実現するためには何が必要なのかをみていきます。

この記事はNagiと一緒に学ぶオンラインコミュニティ「醸造家の視ているワインの世界を覗く部」に投稿された記事の一部を再編集したものとなります。
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