私とアフリカンファブリックとの出会い①自分のルーツを愛すること
こんにちは。ガーナ生地を使ったアパレルブランド「Cherry et Cacao(チェリエカカオ)」を運営している大森渚と言います。
この記事を見つけてくれて、そして読んでくれて、本当にありがとうございます。
みなさんには、心の中で大切にしている「ふるさと」はありますか?
私のふるさとは自分が育った山口です。その次は、両親が育った関東。
そして、私にはもう一つふるさとがあります。
私の祖父母が生まれ育った、私のルーツでもある沖縄です。
私の祖父母は沖縄の首里で生まれ育ち、祖父のさらに祖父は首里城で料理人をしていました。由緒正しき(?)沖縄人ですね。
祖父と祖母は遠い親戚でした。沖縄にいた頃は面識が無かったそうですが、友人にも恵まれ楽しく生活していたようです。
しかし、二人の人生を大きく変えたのが戦争でした。まだ祖父母が20歳前後、結婚前のことです。
不幸中の幸いかもしれません。二人は東京に親戚がいたため、沖縄を離れ、親戚のもとに身を寄せることになりました。そしてそこで出会い、結婚しました。
逃げることができたのは、運が良かったとしか言えません。二人が住んでいた街は焼け、多くの友人たちが亡くなりました。
関東に生活の基盤ができてしまったからなのか、戻る場所が無くなってしまったからなのか、戦後も祖父母が沖縄に戻ることはありませんでした。
ただ、祖父母は沖縄をとても愛していました。
祖父は沖縄空手の師匠を一生の仕事としましたし、玄関にはシーサーが飾られ、私たちが行くとラフテーや鶏飯をふるまってくれました。
祖父母の娘である私の母も同様に、沖縄のルーツを誇りに思っていました。
そのような環境で育ってきた私は、一度も沖縄に住んだことがないにもかかわらず、沖縄をもう一つの故郷だと思って育ってきました。
その気持ちが揺らいだのが、何度目かの沖縄訪問、30代になり仕事で沖縄に行った時のことでした。
沖縄の人たちはルーツを沖縄に持つ私をあたたかく迎えてくれました。しかし、彼らと話せば話すほど、私が沖縄とまったく無縁に生きてきたことを実感しました。
沖縄の生活文化や言葉、また、沖縄が抱える基地問題や就労の問題についても私は無縁でした。
私は沖縄にルーツを持つだけの、本州の人間でした。
私は私のルーツである沖縄をふるさとだと思っていいんだろうか?
そのような疑問がモヤモヤと心の中に残るようになりました。
30代半ばになり、市場調査と勉強を兼ねてヨーロッパの展示会を回るようになりました。
ミラノサローネと同時に開催されるミラノデザインウィークで、市街地のギャラリーを回っていた時のことでした。
歩き疲れてベンチで座っていると、ミラノの歴史ある街並みに、極彩色のふわりとしたものが飛び込んできました。
よく見ると、それはアフリカ系の美しい女性でした。
彼女は、黒いぴったりしたTシャツに、色鮮やかなアフリカンファブリックのふわりとしたスカートを身につけて、ミラノの街並みを颯爽と歩いていました。
彼女のファッションや立ち居振る舞いから、彼女が生粋のミラノっ子だということは明らかでした。
それでも、彼女は自分の遠い遠いルーツがあるアフリカのファブリックを身に纏って、このように堂々と歩いているのです。
私は目が覚めるような思いがしました。
「自分のルーツをもっと愛してもいい」というメッセージを、アフリカンファブリックが放っているように感じました。
これが私とアフリカンファブリックとの衝撃的な出会いです。
アフリカンファブリックはアフリカ系の人々のアイデンティティでもあると言われます。
ヨーロッパを旅すると、沢山のアフリカ系の人たちがいて、素敵なアフリカンファブリックの服を身につけているのをよく見かけます。
その中には、ご自身がアフリカから来た方もいれば、祖先がアフリカから連れて来られた方もいます。
様々な背景を持つ人たちが身につけるアフリカンファブリックは自分のルーツに自信を持つことや、祖先の土地を愛することの大切さを教えてくれます。
沖縄にルーツを持つ日本人である私が、アフリカンファブリックの力を借りるのはおかしなことかもしれません。
でも私にとってアフリカンファブリックは、「自分のルーツを愛することの大切さ」を教えてくれる特別なものです。
私自身も、完全に本州の人間として生きてきたことを自覚しつつも、祖父母が生まれ育った土地である沖縄をもう一つの「ふるさと」として愛そうと思っています。
(わずかながらではありますが、首里城再建のための募金を続けています)
さて、30代半ばでの私とアフリカンファブリックとの出会いについてお話しました。
ただし、まだこの時点ではアフリカンファブリックで仕事を始めようとは思いもしませんでした。
アフリカンファブリックで仕事をしようと思ったのが、さらにその3年後。
長くなりそうなので、続きはまた次回!
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