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【短編小説】豚の貯金箱

 ぼくのへやにはぶたのちょ金ばこがあります。
 おかねを入れると「ちゃりん」という音がします。
 ぼくはお金をためて、うちゅうりょこうに行くのがゆめです。
 少しずつ、おこづかいをちょ金しています。

 ある日、クラスのとなりのせきのミカちゃんとけんかをしました。
 今までぼくといっしょにあそんでいたのに、さいきんはほかの男子といっしょにあそぶようになったのが、なんだかむかついたからです。
 ぼくは、ブスのくせにちょうしにのるなとか、ひどいことを言いました。
 ミカちゃんは泣いてしまいました。
 泣いているのを見て、ぼくはあんなこと言わなきゃよかったと思いました。

 この前、先生が、ミカちゃんがてんこうすると言ったのでぼくはびっくりしました。
 ぼくは、ミカちゃんとけんかしたままだったので、なかなおりしたいと思いました。
 そこで、おわかれのプレゼントをよういして、ちゃんとあやまろうと思いました。
 でもこん月のおこづかいはもうつかってしまっていたので、ぼくはお金をもっていませんでした。
 だからぼくは、ぶたのちょ金ばこのお金をつかおうと思いました。

 お父さんからハンマーをかりて、ぶたのちょ金ばこをわりました。
 わるときに、ちょ金ばこは「がちゃ」という音がしました。
 もっとたくさんお金がはいっていると思ったけど、あんまり入っていませんでした。
 おかしを買ったおつりの1円とか10円とかしか入れてなかったからだと思います。
 こんどからは、100円とかも入れようと思いました。

 ぼくは、ちょ金ばこのなかみをあつめて、ヘアピンをかいました。
 ミカちゃんがすきだと言ってたたんぽぽの花のヘアピンにしました。
 ミカちゃんがさいごにがっこうに来る日に、プレゼントをわたして、ひどいこと言ってごめんねとあやまりました。
 ミカちゃんはまた泣いてしまいました。でもこんどはわらいながら泣いていました。
 そして、いいよ、またいっしょにあそぼうねと言ってくれました。
 いつか会いに行くからあそぼうねとぼくはやくそくしました。

 ミカちゃんがてんこうしてから、ぼくはあたらしいぶたのちょ金ばこに、またちょ金をすることにしました。
 こんどは100円とかもちゃんと入れていっぱいお金をためて、ミカちゃんに会いに行きたいです。

 * * *

「おォォい!お袋、なに見せてんだよ!」
「だってぇ、あの美佳ちゃんがこうしてご挨拶に来てくれたんだもん。昔のアルバムとか日記とか見せるのは普通でしょ?」
「写真はいいけどこの日記はどう考えてもダメだっつーの!」
「なんでよぉ。転校直後はあんなに美佳ちゃん美佳ちゃんって言って寂しがってたんだから。今なら正直なことを教えてあげてもいいじゃない」
「よくねーよ……うるせーよ……」
「アンタが彼女を挨拶に連れて来るって言うからどんな人かとドキドキしてたら、すっかり美人さんになった美佳ちゃんなんだから私ビックリしちゃったよ」
 何も言えず少し頬を赤らめてにこにこしている美佳の髪には、タンポポの花がデザインされたヘアピンが光っている。

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