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民藝性の時間経過による価値変動について

民藝性とは、日常生活の中で生み出される美しさや機能性を持つ工芸品や生活雑貨を指します。その価値には、物や考えが古びていく過程で失われる価値と逆に時が経つにつれて意味や歴史を帯びて上がっていく価値の二つがあります。


1.時間とともに失われていく価値

まず、物や考えが古びていく過程で失われる価値について考えてみましょう。例えば、日本の伝統的な陶芸品である瀬戸物は、数百年以上もの歴史を持ちます。しかし、現代ではプラスチック製品や陶器の量産品に取って代わられ、その需要が減少していることが指摘されています。また、一度失われた技術を再現しようとすると、その技術が持つ独自の文化や歴史的背景を理解する必要がありますが、それが難しい場合もあります。その結果、失われた技術を再現できずに、それに付随する文化や歴史も失われてしまうことがあります。

2.時間とともに帯びていく価値

一方で、時が経つにつれて意味や歴史を帯びて上がっていく価値について考えてみましょう。例えば、アメリカのアーティスト、ジャスパー・ジョーンズは、1970年代に制作した「Bad Painting」シリーズが、現代では高い評価を受けています。当時は芸術家たちからも批判されていたこの作品群は、独特の雑多なスタイルと強い個性が特徴であり、その当時の社会的背景を反映したものとして、現代のアート市場において高い価値を持つようになったのです。

また、日本の伝統工芸品である「鉄瓶」も、時が経つにつれて意味や歴史を帯びて上がっていく価値を持っています。かつては、火鉢に乗せてお茶を沸かすために使われていましたが、現代ではコンロや電気ポットに代わってしまいました。しかし、その美しさや機能性、そして歴史的な背景から、鉄瓶は現代でも人気があり、多くの人々に愛されています。以上の例からも分かるように、民藝性の価値には失われる価値と上昇する価値の二つがあります。失われる価値は、時代や状況の変化によって需要が減少してしまうことが原因です。それに対して、上昇する価値は、時間が経過することで歴史や文化的背景が重視され、価値が上がっていくことがあります。

3.失われたはず価値の見直し

しかし、失われる価値になってしまったものが、その後再び注目を集めることもあります。例えば、日本の伝統的な染物である「藍染め」は、一時期は失われる価値になってしまいましたが、近年再び注目を集めています。その理由は、天然染料である藍がエコロジーに優れ、また繊維素材によって表情が変わるため、工芸品やファッションアイテムなど多岐にわたって活用できることが挙げられます。

4.まとめ

民藝性の価値には失われる価値と上昇する価値の二つがあることが分かりましたが、これらの価値は単純に時間だけが経過すれば上がるものではありません。重要なのは、その製品や技術が持つ文化や歴史的背景を正しく理解し、現代の需要や価値観に合わせて新たな魅力を与えることが必要です。そして、その製品や技術が持つ民藝性の価値を未来に継承していくことが、今後も重要な課題となっていくでしょう。

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