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記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
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花言葉に秘められた想い(前編)|サマータイムレンダを理系オタクがフカンしてみた #07

こんにちは。
理系オタクのフナギと申します。
少年ジャンプ+の作品、「サマータイムレンダ(以下、サマレン)」を少しでも応援するために記事を書いています。

さて今回はいよいよ、サマレンファンに、さらに作品を楽しんでもらうための考察記事を書きます!
以下、ネタバレが含まれますので、作品をまだ読まれていない方は、ブラウザバックをおすすめします。

記事の情報
難易度:中(サマータイムレンダを読んでいるファンが対象、作品の理解を深める解説が目的)
ネタバレ:139話(単行本第13巻)までの内容が含まれます。
※上記の話までお読みで無い方は、本記事よりも先に、原作をお読みいただくことを推奨します。

作中の植物

作中には幾つかの植物が登場し、番外編の「記録」にて詳しく紹介されているものもあります。
そしてこれらの植物は、日都ヶ島の風景・世界観を醸し出す役割を担っていますが、ストーリーへの直接の関わりは無いように思われました。
しかしある時、これらの植物の「花言葉」が、キャラクターたちの心情のメタファーになっているのではないかと僕は考えました。

そこで、今回と次回の記事では、作中で名称が分かっている植物について、その花言葉に隠された、キャラクターたちの想いを考察します。
(当初はひとつの記事にまとめる予定でしたが、サマレン愛があふれるあまり長文になりすぎたので、2回に分けることにしました笑)

今回は、「ネリネ」と「キキョウ」の2つを取り上げます!

ネリネ

まずはこちらの画像をご覧ください。

アニメのティザービジュアル[1].

こちらはアニメのティザービジュアルで、原作第1巻表紙と同様に、海に足を浸ける潮と慎平が描かれています。さらに潮の手(第1巻表紙では慎平の手)には、何か重要な意味を持つかのように、赤い花が添えられています。
原作第1話を読むと、この花は潮の葬式で別れ花として棺に手向けられたものだと分かりますが、具体的な花の名前は不明でした。

潮の葬儀で棺に手向けられた花[2].

当初僕は、この花は彼岸花でないかと考えていました。
彼岸花はその名の通り、「彼岸」「あの世」「死」を連想させるため、その花言葉も「悲しき思い出」「あきらめ」となっています。
そのため、潮との永遠の「別れ」を鮮烈に印象付けるために、第1巻表紙にわざわざ描かれているのだと考察していました。
しかし、ネットで検索して出てくる彼岸花とは花弁の形状が異なるため、その点はずっと腑に落ちませんでした。

そんな中、物語終盤の記録#018で、この花はヒガンバナ科の「ネリネ」であることが明かされます。さらにこのネリネは、潮が好きな花であり、それゆえ葬儀で手向けられたことが判明します。

潮が好きな花。急いで花言葉を調べてみると、なんとこのネリネは、「華やか」「また会う日を楽しみに」を意味することが分かりました。

この事実を基に、ネリネは潮の心情を表すのだという仮説を立てました。
まず、「華やか」については、天真爛漫な潮そのものが体現されています。
また、「また会う日を楽しみに」には2つの意味が考えられ、1つ目は、上京した慎平の帰郷を2年間待ち続けた潮、2つ目は、3日間の時空を超えた旅の先に、慎平との再会を待ち望んだ潮の気持ちを表しているのではないでしょうか。
これが、物語冒頭の「ちゃんと私のこと見つけてよ」、そして物語ラストの「私が待ってるから―」そして「おかえり!」に繋がるわけです。

つまり、潮の葬儀で手向けられた花は、潮と慎平の「別れ」ではなく、「再開」を意味していたということであり、それを示唆するために(あるいは僕と同様のミスリードを誘うために)、第1巻表紙やアニメキービジュアルにわざわざ描かれたのかもしれません。

本作では、様々なキャラクターたちが、様々な「別れ」と「再開」をタイムループで繰り返します。
彼岸花の様に「別れ」を連想させると同時に、真の花言葉は「再会」を意味する。まさにネリネは、本作や、本作の象徴である潮を体現した花と言えます。

キキョウ

続いては、キキョウ。この花もネリネと同様に記録#018で紹介されているため、キャラクターの心情を表しているかもしれないと考えました。
花言葉を調べたところ、「永遠の愛」「誠実」「従順」などの意味があるようです。

それでは、これは誰を表しているのでしょうか。作中をくまなく探したのですが、キキョウが明示的に描かれたシーンは見当たらないので、記録#018の内容から推測するしかありません。
もちろん、このキキョウは特に意味を持たない可能性もありますが、個人的には、波稲を表しているのではないかと考えています。(ここで、波稲とは、ヒルコではなく、人間の人格のことを指します。)

そう考える理由は2つあります。
1つ目は、記録#018によって、ネリネやキキョウはハイネが愛でた花であることが分かるため、ハイネ(波稲)にまつわる可能性が高いためです。
2つ目は、ハイネ(波稲)がシデに順従だった理由は、「ただ一緒にいたかった(第13巻91ページ)」という誠実な気持ちであるため、この花言葉は、シデに対する波稲の気持ちと捉えることができるためです。

あくまでひとつの仮説ですが、300年間シデに対する気持ちを捨てきることのできなかった波稲を、「永遠の愛」「誠実」「従順」というキキョウの花言葉で表現したのかもしれません。

まとめ

今回の記事では、作中に登場する「ネリネ」「キキョウ」の2つの花を取り上げ、その「花言葉」から、キャラクターたちの心情を考察しました。
本記事を読んでくださったサマレンファンの皆様が、このような「作品の隠し要素」を知ることで、作品をさらに好きになっていただけたなら、僕はとても嬉しいです。

次回は、今回とは別の2種類の花を取り上げ、同様に、花言葉に秘められたキャラクターたちの想いを考察します。
ぜひ、次回の記事もご覧ください!

図の出典
[1] サマータイムレンダ公式Twitter, "―ティザービジュアル公開!―", <https://twitter.com/summertime_PR/status/1418118622006947841>.
[2] 田中靖規, “サマータイムレンダ【1】”, p.19, (2018).

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