06 お気に入りの小説たち



本日は、お気に入りの小説たちを紹介していきたいと思います。

お気に入りの漫画、お気に入りの映画、と書いてきましたが、やっぱり好きなものを語る時間は幸せで楽しいし何よりその瞬間に救われた気持ちになれます。

そして最後の''お気に入り''シリーズとなりました。今回も決めきれなかったので四冊のみ!と制限をつけ、死闘に死闘を繰り広げた脳内会議によって決定した作品を紹介します。これは涙無くしては語れないドラマがあります。(ないです)

ぜひ最後までお付き合いくださいませ。



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『あのひとは蜘蛛を潰せない』 彩瀬まる

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あらすじ:ドラッグストア店長の梨枝は、28歳になる今も実家暮し。ある日、バイトの大学生と恋に落ち、ついに家を出た。が、母の「みっともない女になるな」という“正しさ"が呪縛のように付き纏う。突然消えたパート男性、鎮痛剤依存の女性客、ネットに縋る義姉、そして梨枝もまた、かわいそうな自分を抱え、それでも日々を生きていく。ひとの弱さもずるさも優しさも、余さず掬う長編小説。


かなり前に読んだから内容の記憶が薄いのが致命的なんだけど、お気に入りを聞かれたらパッとこの作品が出るくらいだからよかったんだと思う。面白いタイトルというのもあるけどね。


梨枝という一人の女性の何の変哲もない日常のようなんだけれど、その彼女の日常を囲む''ちょっとおかしなひと''が与える影響によって改めて自分を見つめ直すきっかけを得ていくヒューマンもの。他人の弱い部分を見て強くなれたり、ずるい部分を見て正直になれたり、可哀想な部分を見て優しくなれたり。なんだか他人の不幸の上で自分の存在価値を保っているような気がしてくる。生産性のない日々に嫌気がさしつつも、いかに自分の弱さを受け入れ生きていくのか。些細な日常がそうでなくなったときに問われる優しさとは何か、を教えてくれるようなお話。

彩瀬まるさんは、人間が隠したいと思うところをポップに優しく切り取るのが上手いのだと思っていて、読んでいると、そのお話しの中で生きる人の熱や人肌みたいなものを感じることができる。文字から温度を生み出せちゃうんだから凄いよなあ。

『骨を彩る』という小説もよかったです。



『しろいろの街の、その骨の体温の』 村田沙耶香

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あらすじ:クラスでは目立たない存在である小4の結佳。女の子同士の複雑な友達関係をやり過ごしながら、習字教室が一緒の伊吹雄太と仲良くなるが、次第に伊吹を「おもちゃ」にしたいという気持ちが強まり、ある日、結佳は伊吹にキスをする。恋愛とも支配ともつかない関係を続けながら彼らは中学生へと進級するが...


大好き。物語の世界観がモノクロを超越したところで異色を放ちまくっていて、触れたことのなかった感性や耳馴染みのない言葉にドキドキしながら読んでいた。

女の子なら誰もが経験するクラス内での暗黙の了解、スクールカースト制度はとにかくリアル。世界の中心だと思っていた教室はただの箱庭でそれが歪な繭の生産工場である、ということにどこか気付いていた。それでも彼女たちは、綺麗な羽をはためかせ自由に空を飛び回れるいつかの日を信じ、静かに糸を紡ぎ続けるのだ。一方、恥ずかしくなるほどに無垢な『性』への好奇心はそんな箱庭を飛び出し、止まった街の隅っこで彼女たちを少女へと変貌させる。『好きって言いたくなかったの。たぶん、それよりずっと好きだったから。』自分の気持ちに従順な少女たちのようにそんな言葉を言えたなら、と既に少女を忘れてしまった私は後悔する。

見てはいけないものを見ているようで、それでも目を逸らせない。少女たちはあっという間に大人になっていく。それを勿体ないと思ってしまうくらいに魅力的に書くのが村田沙耶香さん。



『限りなく透明に近いブルー』 村上龍

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あらすじ:舞台は東京、基地の町、福生。ここにあるアパートの一室、通称ハウスで主人公リュウや複数の男女がクスリ、LSD、セックス、暴力、兵士との交流などに明け暮れ生活している。明日、何か変わったことが起こるわけでも、何かを探していたり、期待しているわけでもない。リュウは仲間達の行為を客観的に見続け、彼らはハウスを中心にただただ荒廃していく。そしていつの間にかハウスからは仲間達は去っていき、リュウの目にはいつか見た幻覚が鳥として見えた。


村上龍の衝撃のデビュー作。

まさに衝撃的だった。

文章の書き方がまるで暴力的で何度か読むのをやめたくなった。だけどそれと同時に、情景描写の異常な細かさ、生々しさに惹きつけられ読むのをやめられなくなる。油臭い口紅、腐ったパイナップル、熱帯魚のヒレみたいなつけ睫毛。いちいち場面に忠実だ。見事なまでに丁寧と乱暴を上手く共存させている。そしてこの矛盾がどうしようもない人間の醜さを物語っているようである意味ノンフィクション。

人を殺したことのない殺しの素人に鈍器で殴られて気絶はしたけど死ねなかったみたいな感じ。

『インザ・ミソスープ』もかなりよかった。

いつかの晩、たまたま流れていたテレビ番組にいた村上龍さんを見て、こんなどこにでもいそうなおじさんがあんなやべえ話を書くんだ、とびっくりしたのを覚えている。まさに、見た目で人を判断してはいけない、ということを自らの身を持って体現しているんだ(勝手な解釈)と思って安心しちゃった。



『出版禁止』 長江俊和

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あらすじ:社会の暗部を暴き続ける、カリスマ・ドキュメンタリー作家の「心中事件」。相手は、有名女優の妻ではなく不倫中の女だった。そして、女だけが生き残る。本当は誰かに殺されたのではないか?「心中」の一部始終を記録したビデオが存在する。不穏な噂があったが、女は一切の取材に応じなかった。7年が経った。一人のルポライターが彼女のインタビューに成功し、記事を書き上げる。月刊誌での掲載予告。タイトルは「カミュの刺客」。しかし、そのルポは封印された―。それは一体何故なのか?


私の大好きなファウンドフッテージもの。いわゆるモキュメンタリー。この単語だけでもワクワクする。

ちょっと昔に『放送禁止』という番組が深夜にやっていて、その製作者に小説を書かせてみたらやばかった、的な。まずその番組がやばいので、知らないよという方は以下の動画を見てみてくださいな。(心霊現象やホラーとかではないので大丈夫だよ)

リアルタイムで見たかった。



前情報なしで読んでほしいためこれ以上は何も言えないのです...


映画にもファウンドフッテージものの作品は沢山あって、最近だと『コリアタウン殺人事件』という映画がなかなかよかったです。大抵のフェイクドキュメンタリーは、POV(カメラの視線と登場人物の視線を一致させる主観ショット、視点ショットなどと呼ばれるカメラワーク映像のこと)で撮られていてより一層リアリティを感じられるし、一見ドキュメンタリーなのか?とこちら側を惑わせる演出が最高に胸熱。

ラスト10分のどんでん返しがやばい!裏切られる!みたいなつまらなそうな広告に見事釣られてしまうわけですね。



なんだかんだお勧めしているみたいになってしまいましたが...こんな感じでした。


いよいよ明日が最終日となりました

自己満足のこの企画でしたが、ここまでお付き合いいただき感謝します

ラスト一日もよろしくお願いします✔︎



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(あしのかかとにあるほくろが可愛かったので)



= 死せる孔明''note''ななのかかんプロジェクト =


1日目 『イントロダクション』


2日目 『お気に入りの漫画たち feat 独断と偏見』


3日目 『夕焼けに触れるとき、』


4日目 『お気に入りの映画たち』


5日目 『住む場所の音に対する執着のこと』


YouTubeでオリジナル曲をあげたりしているのでこちらも是非、チェックお願いします



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