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足跡機能

娘が2歳半を過ぎて子育てがぐっと楽になった。
お昼寝もまとまってしてくれる。
娘が寝ている間は私の自由な時間。
のんびり紅茶を飲みながらパソコンでyoutubeを観たり
友だちにメールをしたり読書をしたり
あと、mixiで友だちとやり取りをするのがとても楽しかった。

mixiとは2004年にサービスが開始され
日本のSNSブームの先駆けとなったSNSのこと。
自分のページの訪問者がわかる足跡
趣味や趣向でつながるコミュニティ日記や
メッセージ機能での交流、などなど。
今でこそ当たり前になったSNSだけど当時としては画期的だった。

友だちに招待されて何となく始めたmixiだったけれど
夢中になるのにそう時間はかからなかった。

ある日、ただ何となく、ほんとに深い考えがあった訳でもなく
高校の時に片想いをしていたAくんの名前をmixiで検索した。
Aくんは珍しい苗字だったからすぐにヒットした。

そこで高校卒業以来、分からなかったAくんのその後を知ることができた。

Aくんは高校を卒業した後、ある音楽大学に進学し
その後バークリー音楽大学に留学。
卒業した現在はニューヨークで活動しているようだった。

ちゃんと自分の夢を叶えているんだ・・・
そして、高校時代を思い出しちょっぴり切ない気分になった。
Aくんにずっと片想いしていたから。

背が高くてスラリとしていて小栗旬に似ている人がいた。
カッコいい・・・と思った。
その人がAくんだった。

文系の男子クラスで吹奏楽部、お父さんは同じ高校で教師をしている。
そして、、、彼女がいる。

Aくんが3階の音楽室で窓を全開にしてドラムの練習をしていると
お父さんは2階の職員室の窓を開けて大声で
「おい!A!うるさい!静かにしろ!これから職員会議が始まるんだ!」

そんな親子のやり取りを眺めているのが好きだった。

Aくんは本当にモテた。
彼女と別れたと聞いても、すぐに新しい彼女が隣にいる。
私なんて付け入る隙が無かった。

共通の友だちがいたにも関わらずAくんと直接話したこともなかった。

ううん、一度だけ話せるチャンスはあったんだ。
Aくんと友だちが話しているときに不意にAくんが私に
「そうだと、思わない?」と話しを振ってきたんだ。
あまりにも突然の出来事に
頭が真っ白になって何も言えずにその場から逃げるように立ち去った。
そんな可愛らしい出来事があった。

高校の卒業式。
好きな人から第二ボタンをもらう、そんなことがあったよね。
制服も詰襟からブレザーが主流になり
第二ボタン文化は今はもうないのかな?

昇降口でこっそりAくんを待った。
2.3人の友だちと一緒に現れたAくんは
第二ボタンどころか全部のボタンが無かった。

好きと告白することも話すことも何もできず
私の完全に一方的な片想いで終わった恋だった・・・

懐かしさに浸りながら、Aくんのページをそっと閉じる。
mixiには足跡機能があり、私がAくんのページを訪れていたことが分かる。
それを見てメッセージが届いたりしないかな?と少しだけ期待をした。
でも、そんな上手くいくはずない。
その通りに何事もなく毎日が過ぎて行った。

ある日、娘をお昼寝させていつものようにmixiを開いたら、、、
なんと!Aくんからメッセージが届いていた。

『いつも、見てくれているようなのですが
もしかして知り合いだったりしますか?』

心臓がドキンとした。
その鼓動をきっかけに血液が全身を駆け巡るような
居ても立ってもいられない衝動に駆られた。

気付いたら、Aくんに返信をしている私がいた。








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