天才よ。都会の大学にいけ!Wikipedia掲載5万人のデータからみた大学の人材輩出力

こんにちは!永山ゼミ4期生の佐藤と小池です。

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佐藤優成(さとうゆうせい)法政大学経営学部経営学科 3年
高校時代、甲子園目指して野球を頑張っていました!

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小池晃弘(こいけあきひろ) 法政大学経営学部経営学科 2年
日本各地歩き旅を現在もしています。九州に行ってみたい!

今回は自分たちの研究をnoteで記事にしてみました。

はじめに

2月といえば節分やバレンタインが大きなイベントかもしれません。
ここで共同研究者の一人である小池の例を挙げます。
私は良い思い出も悪い思い出もある大学受験の記憶が色濃くのこっています。大学受験は人生を左右する大きなイベントです。
みなさんどのような条件で大学を選びましたか?
私は周りから不思議だと言われる選び方をしました。

私が通った高校は中央大学の付属校でした。通常、多くの付属高生は付属の大学にそのまま進学します。そもそも学生は熾烈な受験勉強を回避するために付属校に進学するからです。私の高校は、外部の受験をする場合、内部進学が不可能となる制度でした。つまり、私のように進学オプションを捨てて、わざわざ外部受験する人は非合理的といえるでしょう。

私がこの非合理的な行動をとった背景にはある大きなきっかけがありました。それは高校1年生の時に中央大学のオープンキャンパスに参加したときのことでした。大学はどのようなものか期待を膨らませいくと、まず最寄り駅でヤギがお出迎え。さらに幽霊でもでそうなトンネルまでありました。極めつけはキャンパスから見える広大な森です。到底私の知っている大学の雰囲気ではない姿が多摩の奥地にありました。

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中央大学 多摩キャンパス周辺の航空写真

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法政大学 市ヶ谷キャンパス周辺の航空写真

私は1時間かけて毎日田舎にいくのか?1時間かけて都会に通うのか?この選択を天秤にかけるまでもありませんでした。付属高校に通っていた私はエスカレーターで大学に進学できるオプションを捨て、都会の大学(千代田区に位置する法政大学)を受験しました。
私は法政大学で様々な刺激を受けながら楽しい大学生活を送ることが出来ています。

ただ私は中央大学に進学したならばどうなっていたのだろうかと思うことがあります。
中央大学の方が成長し成功を収めることが出来る可能性が高いのであれば、都会だからで選ぶより田舎だからで選んだ方が良かったといえるでしょう。

そもそも人の成長や成功というのは場所で変わるのでしょうか。
研究を参考にしてみたいと思います。

先行研究と仮説

今回参考にした研究はこれです。
「Bell, A., Chetty, R., Jaravel, X., Petkova, N., & Van Reenen, J. (2019). Who becomes an inventor in America? The importance of exposure to innovation. The Quarterly Journal of Economics, 134(2), 647-713.」
(アメリカでは誰が発明家になるのか?イノベーションに触れることの重要性)
この研究は120万人の特許記録と税務記録を分析しました。分析の結果、発明家がいる地域と発明家がいない地域に引っ越した人どちらが発明家になる可能性が高いのかを比べた結果、発明家がいる地域のほうが発明家になりやすいと結果が出ました。この分析により環境が重要であり(生まれつき持った能力が全てを決めるのではなく)学ぶ環境が将来に大きな影響を与えたことを示しました。
この研究が明らかにした重要なことは、たとえ才能があったとしても、経済社会的に不遇な境遇で生まれると、それが発掘されにくいということです。

個人の才能も重要ですが才能と同様に才能のある人からどれだけ影響を受けるのかが将来を左右するということが分かりました。大学に置き換えて考えると、カフェや飲食店、周りの企業数が多ければ多いほど才能がある人が集まりやすくなる。つまり、大学周辺に才能がある人物が集まることで大学生が成長する機会が増えているのではないかと私たちは考えました。私たちは周りに様々な店舗や企業があることを都会度指数とし分析を行いました。

分析の準備!

今回分析するにあたり私たちは以下3つのデータを集めました。

都内130大学の大学データ
  都内130大学のデータでは各大学の偏差値、設立年数、1960年から2020年までの生徒数、学部数(『全国学校総覧』より取得)
偏差値データ(『みんなの大学情報』より取得)
② 対象大学出身のWikipedia掲載者のデータ(偉人のためのデータ)
      各大学出身の人物約5万5000人の誕生年、職業
③ 東京都内の市区町村の事務所データ(産業の複雑性のためのデータ)
  産業別の事務所の数(『東京都の統計』より取得)

私たちは一定の社会的成果を収めた人物を「偉人」とし、これを「Wikipediaに記事が掲載されている人物」かどうかで判断しました。
参考:Jara-Figueroa C, Yu AZ, Hidalgo CA (2019) How the medium shapes the message: Printing and the rise of the arts and sciences. PLoS ONE 14(2): e0205771. 

大学が位置する場所の発達度合は様々な企業がある環境のことを指すとします。そこで、大学が位置する市区別の産業別の事務所数から産業の複雑性を求めることにしました。

偉人にも職業によって頭の良さであったり必要となるスキルが異なるので産業の複雑性の影響具合も変わるのではないかと考えました。そこで私たちは偉人の職業を学者、事業家、政治家、芸術家、メディア、スポーツ、その他の7つに振り分けました。今回はその他を除いた6つの職業に産業の複雑性はどのような影響を与えているのかも調べました。
分析では以下の変数を利用しました。


・産業の複雑性(場所に内在する情報の多様性の測定のため)
・偏差値(知性の測定のため)
・偏差値と複雑性の交互作用(下記で説明)
・生徒数(偉人数は在校生徒数が多いほど生まれやすいと考えられる)
・前期の偉人(前期の偉人の数が偉人輩出に影響していると考えた)
・累計の偉人(累計偉人輩出が偉人輩出に影響していると考えた)
・設立年数(設立年数の長さが偉人輩出に影響していると考えた。)
・学部数
(学部数の多さが偉人輩出に影響していると考えた。)
・国立ダミー
(国立だと偉人輩出の影響度合が変わると考えた。)
・医学部ダミー
(医学部がある大学だと偉人輩出の影響度合が変わると考えた。)
・芸術学部ダミー
(芸術学部がある大学だと偉人輩出の影響度合が変わると考えた。)


分かりづらい変数や測定方法についての説明

産業の複雑性と言われてもピンとこないかもしれないので、難解な変数の解説をします。

産業の複雑性
区ごとの産業別事務所数からエントロピーを求めたものです。
エントロピーというのは「どれだけその情報元が珍しい情報を発信しているかの尺度」です。今回の分析だと「その区にはどれだけ色んな産業があるかの尺度」ということになります。簡単に言えば都会度指数みたいなものです。
偏差値と複雑性の交互作用
交互作用というのは複数の因子が組み合わせた結果表れる相乗効果のことです。例えば、若者と高齢者だと高齢者がよりコロナが重症化しやすく(因子1つ目)、喫煙をしているとさらに重症化しやすい(因子2つ目)みたいな作用を意味します。今回の分析だと偏差値が高ければ偉人を輩出しやすく(因子一つ目)、さらに産業の複雑性が高いとより輩出しやすくなる場合、正の交互作用があることを意味します。

前期の偉人・累計の偉人
10年前・今までの偉人がいたことによる影響を見るものです。例えば、大勢プロ野球選手を輩出している横浜高校に行きたい!と思い横浜高校に進学する。

分析結果

データを集め、変数も作りました。都会かどうかは偉人輩出に影響をしているのでしょうか!?

分析はRにて重回帰分析を行いました。

気になる結果はこちらです!

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このような結果になりました。表の見方について説明します!

・数値のそばにある「*」はその数値の有意水準を示しています。
星の数が多いほど、その変数の効果が0である確率が極めて低いことを意味します(よって、何らかの影響がある可能性が高い)。
・数値が正の場合は偉人を多く輩出する効果があり、負の場合は偉人の輩出を減少させる効果があるということです。

 今回の分析では偏差値と複雑性の交互作用が統計的に有意な正の係数を示しました。これは偏差値が高く(頭が良い)産業の複雑性が高い場合(都会である)偉人を輩出しやすくなる」ということです。
この交互作用をグラフで出力するとこのようになります。

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縦軸は偉人の数、横軸は偏差値です。+1SDというは産業の複雑性(エントロピー)が1標準偏差平均よりも高い場合、Meanは産業の複雑性の平均の場合、-1SDは産業の複雑性が低い場合の線になります。

すべての線が右肩上がりに増えていることから偏差値は偉人輩出を増加させる効果があることが分かります。

そして産業の複雑性(エントロピー)は偉人排出の効果を強くするということが分かります。

まとめ


社会的に高い評価を得る人物(偉人)となるためには自分自身の「頭の良さ」だけでなく都会という「場所」が必要ということです。
私たちから大学選びのアドバイスをさせていただきます。

(天才だったら)都会の大学に行った方が良い!

考察・今後の展望

今回の分析から、大学周辺の都会度は頭の良い人間を成功に導く可能性を高めることがわかりました。では田舎の大学がどんな対策を施せば、都会の大学同様またはそれ以上に成功する可能性を高められるのでしょうか?

原因として、田舎は都会に比べて情報を知る機会が少なく、機会格差が生まれています。都会と田舎で機会の格差が生まれる原因は、田舎には情報を知る機会が少ないことにあります。そこで、田舎の大学は、そこに住む人々が情報を知る機会を増やす施策として町おこしを行えばよいのではないかと私たちは考えました。

町おこしの例として徳島県神山町の町おこしが挙げられます。若者たちの流出により人口減少が問題となっていた神山町は都会並みの通信網のインフラを構築し企業を誘致した結果、町おこしに成功し、IT企業が多く集まるようになりました。それにより"自然とテレワーク"という新しい働き方を作り、テレビに特集されました。神山町は企業や住人を集めることで過疎化していた地域から新たなワークスタイルの発祥の地になることが出来たのです。

町おこしを行うことで田舎がトレンドを作り都内に発信することができました。神山町のように特定分野に特化した町おこしや町づくりを行えば独自性を生み出すことができトレンドを創り出せます。町の独自性をだすことにより田舎は都会となりえる存在になり田舎と都会の情報格差はなくなるのではないかと私たちは考えます。

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