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将来の夢を魔法使いに変更した話。

小学生のころ、作文の授業で将来の夢について書いたことを覚えている。
スタイリストになりたいと書いた。
雑誌でモデルさんが着る洋服をコーディネートしたいと思っていた。

高三になって進学先を決める頃、親にファッション系の専門に進みたいと言ったら却下された。四大出てからでも遅くはないでしょ、と。

大学生の頃は一時期服屋さんでバイトをしていた。既に専門学校もスタイリストも叶わないかもしれないと思っていたが、アパレル会社なら四大を出てすぐに服に関わる仕事ができるかもしれないとは思っていた。
けれど私の所属店舗はひときわ厳しかったようで、バイト先で毎日のように泣いていた店長や社員さんを見ていた甘ちゃんな私は(アパレルは怖い…)とアパレル業界すら諦めた。

さて就職先をどうしよう。と、きちんと考えなければいけなくなった頃
やりたいことがなかった私は何故か急に魔法使いになることを思いついた。
なり方は分からなかったけれど。
パッとしない就活中も無事に社会人になってからも、自分はいつか魔法使いになるんだとしばらく思っていた。

時は過ぎて魔法使いのまの字も考えなくなった頃、ご縁があり事務職からエステティシャンに転職した。

施術後にきらきらした笑顔で店を出るお客様方を見送っている中で、ある日「魔法使いになりたい!」と脳内でひっそり進路を変更した自分を思い出した。
これかもしれないと思った。けれどいい大人にもなって…と口に出すことはなかった。
しかし他店の凄腕スタッフ達を「魔法使いだ!」と賞賛する口コミを見かける度に、見習いスタッフでありながらも私まで嬉しくなっていた。

今はフリーランスとしてサロンをお借りしてエステティシャンを続けている。

もちろん魔法使いとは呼ばれないし自分でもおこがましくて言えないけれど、
施術が終わってにこにこされるお客様や
うっとりとしたお顔をされるお客様、疲れがとれてほっとした顔をされるお客様を見て
技術がもらたす結果の他にも、手から伝わる魔法的な何かは必ずあると実感している。

「永槻さんはどうしてエステティシャンになろうと思ったんですか?」とまれに聞かれることがあるが、一度も「魔法使いになりたいと思っていたらこうなってました」と答えたことはない。

でもあの時(ひっそりとではあるけれど)進路変更しなければ本当に今の自分はいないかもしれないと思うと、お花畑な脳内も少しは悪くないかもと感じる日々である。

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