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夜道のビール

夜の公園の脇道、マスクをずらし窮屈感から解き放たれて深呼吸をする。
傍に植えられた数本の桜を眺めながら、ついさっきコンビニで買ったばかりの麒麟を開ける。

夜道は立ち止まることなくさっさと家に帰った方が安全だ。
それでも最寄りの夜桜の前では歩調を緩めてしまうし、満開の時期なんかは立ち止まってしまう。


もはや「未来の安寧」の為に生きる人よりも「今」を生きる人の方が多いと感じられる中で、
出店が立ち並ぶ人混みの桜並木道をマスクをはずして練り歩ける日は再びくるのだろうか。
自分だって不要不急の外出をしておきながら、なんとなく未来を憂う。

私しかいない公園、そよ風に吹かれて飲むビールの苦味と炭酸が心地よい。

マスクを再び装着し、飲みかけの缶を片手にいそいそと歩き始めた。


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