とんかつ

ライフ・イズ・とんかつソース

「メニュー開発が趣味なんだ。」

その日の仕事は、
老舗とんかつ屋の取材でした。
春物のコートでは頼りないような季節で、

まだライター業を
はじめたばかりのころです。

40年以上つづく店で、
壁に貼られた若いころの有名人の写真や
色あせた色紙が
長い歴史を感じさせてくれました。

僕の人生よりも長く
とんかつを揚げ続けている店主。

「僕はまだこの仕事始めて
1年満たないんですが、
40年も続いてるってすごいですよね。」

まだ1年も経ってない新米ライターの僕は
40年もその道一本で食べていける理由を
聞いてみたくなったのでした。

うまく店主のプライドをくすぐれたようで
試行錯誤の日々を話してくれました。

「新しいメニューを考えるのが好きでね。・・」

その日の天気で
衣の配合や揚げる時間を変えて
反応や売れ行きを見ては
また違う手を考えて試してみるそうです。

「ソースは一応注ぎ足してるけど、
1年前と今じゃ全然違うだろうね。」

なんて笑って言うのでした。
そして、

『長く続けるコツは、
常に新しく変化しようとすること』

こう締めくくってくれました。

変わらなかったのではなく
ずっと変わり続けてきたから
40年も飽きずに続けられたそうです。



今、持っているものを
持ち続けようとするのは苦しいです。

健康・若さ・愛情
資産・美しさ など

悔しいけど、次第に
指の間からこぼれおちていきます。

追いかけようとしても
拾い集めようとしても
完全な状態には戻りません。

逆に、意識をすると
いつも手のひらに
乗ってくるものもあります。
新しい情報や知識、経験です。

『覆水盆に返らず』と言いますが
常にチャンスの雨は降ってきています。

今日と同じ明日は来ないんですね。

だから、

いろんなものを手のひらで受け入れて
ソースのもととして
注ぎ足していく必要があります。

ときどき味見をしながら
その日の一番美味しい状態を
目指していけば良いんです。



ことばも仕事も生もので、
世代やブームなどによって
求められる”味”は異なってきます。

新しい単語や文化も出てきますし、
カタカナ語やアルファベットが増えるのは
仕方がないことです。

新しい情報を常にインプットして、
自分を最新状態にアップデートすることが、
長く食べていくには大切ということです。

そして、求められる味を
ずっと変化しながら応えてきた結果が
文化になり、
伝統になっていくんだと思います。

味のないものマズイものは忘れられて
淘汰されていくのでしょう。

また、自分の味だけでも
美味しいかもしれませんが
違う味があった方が
美味しくなることもあります。

トマトだけでもいいですが
塩やオリーブオイル、にんにくがあると
嬉しいのと似ています。

味のある『美味しい人生』になれば
満足できそうです。

自分の味を無理に守っていこうとせず
情報や知識、経験を注ぎ足して注ぎ足して
いろんな素材ともかけあわせて

求められる味をいつまでも
追求していきたいですね。

最後までお読みいただき
ありがとうございました。

nagatouch

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