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着せ替えが好きだと告白した話

 先日、小さい頃から着せ替えが好きだということを初めて家族に打ち明けた。

 打ち明けた、というのは少々大げさな表現だが、会話の流れで「実は着せ替えがずっと好きなんだよね」と言った時にちょっと緊張していたのは間違いない。
 なぜこんなに緊張したのかというと、幼少期からわたしはそういったいわゆる「女の子らしい」ものとは無縁だったからだ。日曜日の朝は魔法少女ではなくレンジャーを見ていたし、スカートを履くのを嫌がって5歳から中学校入学時までズボンで通した。おままごとよりも虫取りの方が好きだった。お人形は怖かった。

 しかし、着せ替えはずっと好きだった。何が好きなのかと問われると答えられないのだが、とにかく着せ替えが好きだった。小さいわたしはこっそりコンピュータの着せ替えゲームでお姫様のドレスを選びながら、幼いながらにこれは「自分のイメージ」ではないなと思っていた。つまり、気恥ずかしくて着せ替えが好きだと言えなかったわけである。我ながらいじらしい。
 それから約20年、わたしは遂に家族に着せ替えが好きだと告白した。理由は簡単で、そんなに恥ずかしいと感じなくなったからである(全く気恥ずかしくないわけではない)。20台半ばに差し掛かると、TPOによって服を選び、マナーとして化粧をすることが求められるようになった。上手ではないが、それをそこそこ楽しめるようになってきて、今なら言えるかなと思ったので言ってみたのだ。

 家族には大層驚かれたが、楽しい話題を提供したようで大盛り上がりしていた。いかにわたしのイメージと着せ替えが遠いものだったか分かってもらえるだろう。実はまだいくつかこっそり好きなものがあるのだが、それはまた折をみて告白しよう。
 幼い頃に何も考えずに好きだと言えたら、わたしの趣味趣向は変わってたかもなと思いつつ、言えないところがどこまでもわたしだなあとも思う。もし、ちびっ子がこっそりイメージと違うことをしていたら突っつかずにそっと見守ってほしい。その子が恥ずかしがり屋ならなおのこと。小さいわたしが着せ替え中に話しかけられたら多分、恥ずかしさで悶絶した挙句、話しかけてきた大人を徹底的に避ける。1年くらい。冗談ではないので本当によろしくお願いします。

 なんにせよ、今回の告白によって20年来の秘密は秘密ではなくなり、わたしは悠々とリビングで着せ替えゲームを楽しめるようになったわけだ。言ってみるものである。


 

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