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【追記あり】VR空間とリアルの融合を模索した2ヶ月半で見えてきたこと

はじめに

6月中旬から縁あってVRSNSのVRChatをリブートし、こんな投稿などをしてきました。

私の副業のテーマの一つが多拠点居住であるため、こんな可能性も模索してみました。

仮想現実内でのソーシャルグラフを考えるため、 #ラジオ好き集まれ集会 というイベントを毎週開催していますが、そこに込めた思いを記したこともありました。

ここまでVR空間に入り込んだのは、オフライン会議以上に効率的なVR会議の模索だったり、VR空間が多拠点居住の1拠点となりうるかどうかの見極めだったり、「リアルの世界とVR空間の融合」について知見を深めるためでした。

いや、というよりも、日常生活に加え、VR空間での経験やソーシャルグラフ、エコシステムを含めた全てを「リアル」と定義した上で、このコロナ期を経た世界を生き抜くための新たな可能性を見つけることが目的だった、と言い換えることができるかもしれません。

ここで突然明かすのもなんですが、実は #私立VRC学園 には今も、2期生の1クラスの副担任(要はスタッフ)という立場で関わっていて、今月31日の卒業式をもって一段落となります。
そこで、ここまでの2カ月半の経験を踏まえて見えてきたことを整理し、まとまった形で一つのアウトプットをしたいと考え、この投稿の筆を執ることにしました。
コロナの影響はまだまだ長引きそうで、このテーマについては今後も継続的にウォッチしていくことになるとは思います。
個人ベースの体験に基づく拙い論考とはなりますが、ここを土台に論を補強していく一里塚としたいと思います。

今回のアジェンダ

今回のアジェンダはこちらとなります。

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このテーマについて何らかのプレゼンをすることを想定し、そのための登壇資料をこちらのnoteに再編集する形としているため(とはいえ、現時点で特にどこかでプレゼンをする予定はないのですが)、「本日のアジェンダ」と書かれていたり、このnoteでは省略する「自己紹介」について記されていたりもしますが、その点はご容赦ください。

問題関心

この2カ月半の問題関心を整理すると、以下のようになります。

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既出のVR会議や多拠点居住の話に加えて、「ライブエンターテインメント面での模索」という項目があります。
私がこれまでの人生で接点を持った人たちの中には、スポーツや音楽活動に従事されている方々が少なくありません。
そうした方々は、いわゆる大人数を集めた興行が打てないために経済的に大打撃を受けています。
そこで、「密」になっても伝染病の感染リスクのないVR空間内での興行に活路を見いだせないか、直接の当事者ではないけれど、可能性を模索したいと考えたのでした。

模索の遍歴

この2カ月半の模索の遍歴で、身をもってリサーチしたのは、VRChatRec Roomclusterでした。
Facebook Horizonもβ版テストに参加できないか申し込んだのですが、返事がないので、ひとまず現時点で分かっている情報だけを元に論を組み立てたいと思います。

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私がOculus QuestやMacBook Pro、iPhoneで利用し、それぞれのサービスについて得た考察は以下のようになります(経験ベースで記しているので、加筆・修正すべき点などございましたら、ご指摘いただければ幸いです)。

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この間で一番入り浸っていたのがVRChatです。
日本人利用者も一定数いて、コミュニティーが育ってきています。
イベントも豊富で、人気Vtuberらによる動画配信番組も増えてきていて、一番活動が活発で、エコシステムが形成されつつあるサービスと言えそうです。
ただ、私はOculus Quest利用者、いわゆる「Quest勢」だったので、パソコンで利用している人たちと比べて、やれることに制限があったのも確か。
動画配信も、生中継はfacebookでのみ。
YouTubeにアップするには、facebookにアップしたものをダウンロードしてそれを改めてYouTubeへ、という面倒くさい手間が掛かる辺りが難点でした。

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Rec Roomはまだ開拓途上。
日本人コミュニティーはVRChatより小さい感がありますが、色々と面白い取り組みをしている人たちもTwitter上で見つけられます。
適宜ウォッチしていきたいサービスです。

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イベント開催と言えば、clusterかもしれません。
OBSというツールを使えば、私のMacBook ProからもYouTubeに生配信できるので、色々と模索しているところです。
企業とのコラボイベントも次々と出てきていて、マネタイズには一番近いかもしれません。
ただ、フレンド機能はあるのですが、それで交流できるというよりは、生配信をする際のスタッフにできる、みたいな位置づけのような感があり、ソーシャルグラフの形成という点では少々弱いところがあるかもしれません。

上記の部分、clusterに詳しい方から、「ソーシャルグラフ機能が弱め、とありますが、そんなことはないですよ」とご指摘をいただき、cluster上のワールドにご案内いただきました。
そこでの体験を別の投稿でまとめましたので、こちらにリンクを貼ります。よろしければ、こちらもご覧になっていただければ幸いです。


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そして、年内にローンチされると言われるHorizon。
facebookのサービスなので、facebookアカウントベースのソーシャルグラフで楽しむVRSNS、という感じになるかもしれません。
リアルのソーシャルグラフとの親和性が高いことでどんな世界線が見られるのか、楽しみでもあり、怖くもあるところです。
また、なんらかのコミュニティーがあるところでは、なんらかの価値を数値化するものが必要となるケースも少なくありません。
その際、昨今静かな状況となっている、facebookが構想する仮想通貨リブラが存在感を発揮してくる可能性があるかもしれません。
その辺りも注目したいところです。

なお、VRSNS以外でもこの間、FortniteMinecraftあつまれ どうぶつの森に関してリアルとゲーム世界との融合的な事案があったので、参考までに載せています。

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まとめ

これらを踏まえてのまとめは、以下の通りとなります。

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VRChatやRec Room、clusterをやっている方々の創作意欲はとても旺盛です。
アバターを作ったりするほか、音楽活動やダンス活動などに勤しむ人たちもたくさんいますし、その模様をYouTubeなどで配信している人たちも少なくありません。
アバターなどはBOOTHなどの外部サービスを通じて販売できるので、そこで(そこまで大規模とは言えないまでも)なにがしかのマネタイズにつながっているとも言えます。

なお、clusterでの横浜DeNAベイスターズの試合観戦、Fortniteでの米津玄師のライブがこの8月の話題となりましたが、リアルな映像を映すとしたら、現時点では平面で映すしか手がないようでした。
あたかもVR空間に入りながら、テレビを見ているような感覚です。
3Dにしようとすると、トラヴィス・スコットのようにアバター対応となってしまいます。
この点は何となくの不満が残るところであるのは確か。
何らかの突破口があるのか、注目したいところです。

ソーシャルグラフについては、VR空間はかつてのTwitterやfacebookの初期のように牧歌的で親切な人たちが多いこともあり、何らかの仲間・友人的な繫がりが生まれているところは確かです。
ただ、中には「この人、ちょっと厄介だな」という人がいないわけではありません。
ブロックやミュートの機能もあるし、リアルな知り合いと比べて、VR空間だけでの知り合いは「嫌ならば付き合わなければ良い」となりがちなので、関係が消滅するのも早いかもしれません。

おわりに

さて、上記のまとめから導き出される結論は以下の通りです。

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色々と可能性を模索しましたが、このコロナ期の巣ごもり生活を経て利用者が増えたにしても、VRSNSはまだイノベーターやアーリーアダプタ-の世界。

値段の割には高性能とされるOculus Questでだいぶ世界が近づいてきたとはいえ、5万円ほどしますし、例えばVRChatであらゆるワールドを訪れ、アバターやワールドも自分でアップロードしてフルに楽しもうと思ったら、10万円以上するそれなりの性能のゲーミングPCが必要となります。
世界経済に激震が走っているこのコロナ期において、新たにそれらのガジェットを揃えようと出費ができるのは、もはや「マス」の人たちとは言えないと思います(私も、1年ほど前にOculus Questを買っていましたが、ゲーミングPCを今から……というのには正直、抵抗があります)。
となると、もっと広く利用者が増えていく未来は、まだまだ先のことと言えそうです。

ただ、劇団ひとりらがComicVketを訪れるYouTube番組に出演したり、MusicVketでデーモン閣下や、スクウェア・エニックスの人気ゲーム「ニーア オートマタ」のキャラクターのアバターが販売されたりするなど、「マス」との繫がりや、強力IPがマネタイズに乗り出しそうな萌芽は見えてきています。

一方、リアルとVR空間とのソーシャルグラフの融合についてですが、匿名利用者の多い日本ではfacebookアカウントとOculusアカウントとの統合のニュースが出た時点で、反発の声が至るところで聞こえてきました。

facebookがVRの世界に注力するのは、リアルとVR空間とのソーシャルグラフを統合し、かつ、仮想通貨リブラも絡めてエコシステムを構築したいからではないか、という推測も抱きうるのですが、匿名性の強いVRSNSと、実名制のVRSNSとの棲み分けみたいな現象が起きていくのかもしれません。

結論を言えば、VRの世界はまだまだ発展途上。
ただ、着実に技術力や参入者が増していることから引き続き、ウォッチを続けるべき世界であることは間違いないでしょう。
ヘッドマウントディスプレーがさらに軽く、安くなり、魅力的なコンテンツが増えた先に爆発的な普及が待っているのか。
現時点での問題関心は変わらず抱きながら、模索を続けていきたいと思います。


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