与えることは、奪うこと? / ドラマ『元彼の遺言状』より
この春、新しいドラマが始まった。
その中の1つ『元彼の遺言状』を見ている時に、なぜかすごく引っかかった言葉がある。
「与えることは、奪うこと」
この言葉の意味が、よく分からなかった。
いったんスルーしてみたものの、やっぱり気になる…。
そこで私は見ていたドラマをいったん止めて、しばらく考えてみることにした。
与えているのに「奪う」とは…?
与えることは、奪うこと。
これはつまり
という意味なのだと思う。
そこまでは、分かる。
でも、そこから先が分からなかった──。
与えている以上、奪うことにはならないはず。
それなのに、両者がイコールになるとは……?
どういうことだろう。
うーん………
・
・
・
そして、閃いた。
答えを与えることは、奪うことと同じだ!
与えることで、奪うもの
例えば、相手が悩んでいる時。
「こうしてみたら?」
「こうするべきだと思うよ」
と、声を掛けるのは簡単だ。
だけどそれは、相手の考える時間や答え探しの工程(つまり自分で見つけるチャンス)を奪うのと同じことなのだと気付いた。
人は、人に教えてもらったことより、自分で学んだことや自分で気付いたことの方が強く心に残る。
自分で考えて答えを見つけるという行為は、いわば『体験』なんだ。
これがないと心に残らないし、感動も覚えない。
仮に『感動もの』の映画を見た友達がいたとして、その友達がその映画の素晴らしさを熱く語ってくれたとする。
でも、どんなに熱く語られても、きっとあなたは実際に映画を見ない限りは感動しないはず。
自分で体験していないことや外からの言葉というのは、それくらい『自分事』になりにくいものなんだと思う。
芸能人のスクープだってそう。
自分で記事を読み発見したネタと、友達や家族から「こうなんだって」と聞かされたネタ。
それぞれの場合を比べると、なぜか自分で発見したネタの方が「マジか!」と驚くし、信じやすい。
ましてやそれが自分の悩みに対する答えなのだとしたら、自分で気付けたかどうかの差は大きい。
場合によっては、その後「行動に移そう」と思えるかどうかに大きく関係するかもしれない。
それに、誰かの助言を元に実行した結果は助言した人の成果になってしまう。
本人にとっては、なんの成功体験にもならない。
いや、多少はなるかもしれない。
けど……
きっと感動は薄れると思う。
自分で答えを見つけるという体験は、それくらい意味のあることなんだ。
そして何より、この“自分で考える”という行為。
私たちが幸せに暮らしていく上では、すごく重要だと思う。
例えば「言われたからやる」という姿勢で仕事に取り組む人と、本当に必要な仕事かどうかを理解してから取り組む人。
この両者は、同じ仕事をしてもプロセスや結果が少しずつ違ってくる。
要は『自分で理解したり納得したりしたからこそ選べる道』というものが、目には見えないけれど存在しているのだと思う。
それはつまり『自分で考えた人にしか見えないもの』であり『物事の本質』でもあるのだと思う。
でもこの“自分で考える”という行為は、普段から取り組んでいないと、なかなか難しい。
なぜなら、習慣になっていないから。
自分で考えることが習慣になれば、わざわざ「考えよう」なんて思わなくても頭が勝手に考えてしまう。
裏返すと、自分で考えないことが習慣になってしまえば、何も考えなくても身体が勝手に動いてしまうということだ。
そして答えを教えたりアドバイスしたりすることは、この“自分で考える”という大事な習慣を相手から奪ってしまうことにつながる。
それどころか『考えない習慣』を植え付けてしまうかもしれない。
これは大問題だ。
よかれと思ってしたことで、相手の大切なものを奪ってしまうなんて。
ましてや、悪い習慣を植え付けてしまうなんて…。
愛あればこその「与えない選択」
与えることは、奪うこと。
これは、本当だった。
全てではないにしても、そうなってしまうケースは少なくない。
例えば「子どもが転んだら手を差し伸べずに見守ろう」という教え。
これは昔からよく耳にしていた言葉だけれど、本質をたどれば「子どものためにならないから」という理由から来ているのだと思う。
転んだ子どもに手を差し伸べたり声を掛けたりする行為は、一見すると『優しさ』を与えているように見える。
でも実は、『優しさ』を与えるのと同時に『子どもが成長する機会』を奪っているのだ。
そう考えると、この言葉ってすごく優しい言葉だなぁと思った。
もちろんドラマにはドラマの設定があるし、同じ言葉でも指しているものは違うのかもしれない。
でも、私の中では納得できた。
与えることは、奪うこと。
私も気を付けようと思う。
相手のためを思うからこそ、与えない勇気も必要なのだ。
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