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旅の話.51 ヌエィバ②

銀行で両替したいだけなのに...…

エジプトの旅はあと少しで終わるが、手持ちのエジプト通貨が少なくなっていたので、やはり銀行へ行って両替する必要があった。
宿泊しているベトラの近くに銀行はないらしい。
場所を聞き、歩いて目指すが、遠すぎる。

今までの経験上、着いたら閉まっていたとかの、嫌な予感がする。
歩き疲れて、やっぱ引き返そうかと思っていると、タクシーが声をかけてきた。タクシードライバー不信の僕は「ノーサンキュー」と言ったが、「お金はいらない、乗せてってやる」と何度も言う。そんなうまい話があるわけないと思いつつも、ここは人の多い都会じゃないし、何度も「君を助けたい」みたいな事を言うので、ちょっと信じてみようかなと思ってしまった。

結局、このおやじもいいかげんな事ばかり言う嘘つきだった。

銀行や、ヒルトンホテル内の両替所へ連れて行ってもらったが、日本円もUSドルのトラベラーズチェックも取り扱っていないからダメだと言われた。
「じゃあ俺が、その1万円を150£Eで両替してやる」
と、相場の半分の額を提示してきた。こちらの弱みにつけ込む気満々だ。
最後にヘルナンホテルの両替所へ連れて行ってくれ、ここでようやく両替出来た。手数料が掛かり、1万円が290£Eになった。

「ここまで20kmも走ったんだから、やっぱりタクシー代金を払ってくれ」
と言ってきた。最初にいらないと言ったくせに、やっぱりか。
でも、これだけ仕事させておいて約束だから払わないってのも、何だか僕が気持ち悪い。やっとこの両替ミッションが終わった嬉しさもあったし、これから宿泊先のベトラへ帰らなきゃいけない。
「40£Eだ」と言うので、高いなぁと思いながらも払ってしまった。

エジプト人

エジプト人の挨拶は「サラーム アレイクン」
イスラム教徒は、唯一絶対神アッラーの下で皆平等であるとの考え方から、「今日も良い加護が(みんなに)ありますように」と言う意味らしい。
返事をする場合は逆にして「アレイクン サラーム」と言う。

多くのエジプト人は、素朴ないい人達なんだと思う。
しかし、戒律の厳しいイスラム教徒だからこそ、異宗教・異文化の外国人と触れる機会の多い、観光業に係わる人の一部は、結構なストレスを感じているはずだ。
藤子F不二雄のSF短編みたいに、言葉は通じるのに常識が通じないという奇妙な感覚や、理解はできるが認めたくない価値観、経済的に豊かな国への羨望と嫉妬などもあるかも知れない。だから僕みたいな明らかにイスラム教徒ではない日本人観光客は、神の加護の対象外として、騙してもいい相手なのかよって思った。

絨毯屋へ

昨日約束したショウキーとアリの働く絨毯屋へ行った。
ショウキーが夕食を作ってご馳走してくれた。
ひき肉と玉ねぎを甘じょっぱく味付けて炒めたものを、アエーシですくって食べた。すき焼き風でおいしかった。
ここで会う人は皆、楽しくていい人達だった。
絵を描いてプレゼントするよと提案したら、めちゃめちゃ喜んだ。
翌日また来て、絵を描いた。
仲良くなったショウキーとアリに、お礼と友情の証のつもりだったのに、
描いた絵を見て感動したのか、周りの仲間に見せびらかしに行ってしまった。案の定「俺も描いて!」って人が集まって来た。

全員は無理。

実際に僕と交流があり、仲良くなった人だけOKって事にして、この日はあと3人、翌日また来て5人描いた。

アリは薄毛を気にしているのか、こっそり自分で髪を描き足しているの見てしまった。

描けなかった人に、油性マジックペンでタトゥーっぽい落書きをしてあげたら、そっちも人気となって、いろんな人に描いた。
「君があと1ヶ月ここにいて、有料でこの似顔絵&タトゥー屋をやったら、すごいお金持ちになれるよ」と、みんな言ってくれた。

やればよかったな~。




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