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悠々と坂くだる老兵

私の家の近くに少し長い坂道がある
そこをくだって毎日駅まで歩く

約1年半前に引っ越してすぐにその坂道をシルバーカーに乗りながらゆっくりくだるおばあさんと出逢った

シルバーカーとは高齢者が使うキャスター付きの中に荷物を入れたりフタ部分に座れる高齢者用手押し車だ
よく田舎のおばあちゃんがそれを押したり道端で座って休憩したりしていたあれだ

そのシルバーカーに乗りながらおばあさんは手を座るとこに置き足をすり足のように動かしながらゆっくりとくだっていた

私は下の方から歩いていておばあさんに

「大丈夫ですか?手伝いましょうか?」

と言うと

「いいよいいよ〜足の運動だから」

と元気に返された

80歳前後で緩やかな坂とはいえ見てるほうが少し心配になるすり足ではあったが、ゆっくりとくだっていき下の方に着いたらシルバーカーから降りてシルバーカーを押して歩いていった

後日またおばあさんに会った
同じように長い坂道をすり足でくだっていた

「こんにちは」

と声をかけ

「大丈夫ですか?」

と言ったらやっぱり

「大丈夫よ、運動だから」

とおばあさんは元気に答えた
続けて

「少し疲れないとお酒は美味しくないのよ」


私は

「お酒飲み行くんですか?」

と聞くと

「そうよ、赤ワインね」
「早いですね笑」
「早い方が空いてるしちょっと安いのよ」
「なるほど!飲み過ぎないよう気をつけてください」
「はいは〜い、ありがと〜」

と悠々とその場を去っていった

そこから少しあいてまた出会った
覚えていてくれたのかおばあさんは

「老兵が通りま〜す」
「かっこいいですね笑」
「ど〜も〜」
「気をつけてください!」
「ありがと〜」

と笑顔でシルバーカーに乗りながらすり足でくだっていった

出会った頃は心配が強かったが、その背中は本当にかっこよく見えた
歳を重ね【老兵】となろうとも自分の足で飲みに行く、そしてそのお酒はさぞ美味しいのだろうと感じた

そしてまたいつの日かお会いした時には足軽としてお供してよいか尋ねてみようと思った

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