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上京の日に母からの『大きなかしわ飯のおにぎり3個』


2006年3月19日
私は鹿児島から東京へと向かいました
高校を卒業してお芝居の世界にいきたくて東京へ

私は富士山が見たい、そして飛行機が怖いという理由から地元の駅から新幹線での上京でした
両親がホームまで来てくれました

ただその時は早く東京に行きたいという焦燥感や両親に対してやりたい事を選んでごめんという罪悪感や今まで18年間育ててくれてありがとうという感謝の気持ちやら思春期なりの照れもありどこかソワソワしてて両親とちゃんと話せませんでした

新幹線がやってきて乗る時に「がんばってね」「キバれよ」と声をかけられ私は「うん」「着いたら連絡する」とそっけない言葉ばかり

その時母を見ると母は泣いていました
あまり親の涙というのを見たこともなく私もびっくりして「じゃあね」くらいしか言えませんでした
その時の母の涙は忘れられません

そして新幹線は熊本、福岡を通り過ぎ本州に入ったあたりでお昼頃食べたのが
『大きなかしわ飯のおにぎり3個』です
私がお願いして母が握ってくれました

年末年始や祝い事があると「かしわ飯」が出ていました
餅米のモチっとした食感に鹿児島の甘い醤油の風味、そこに地鶏肉や根菜が沢山入った「かしわ飯」

料理が上手だった母
当分母の手料理を食べられないのかと思いながらも私は『大きなかしわ飯のおにぎり3個』を一気に食べました

そしてお目当ての富士山は座ってた席の逆側だったので必死に覗きこんでいたら福岡から乗って来られた老夫婦が体を仰反って
「今日は綺麗に見えるよ」
と言って下さいました

そして品川駅に近づき車窓から見たでかいビル群の衝撃は今でも記憶鮮明に残っています
あとは東京駅に着いて電車の路線図の難解さにも衝撃を受けました
そうして私は東京に辿り着きました…


あれから17年
今はもう母の手料理を食べることはできません
でも私がいつの日か母のもとへいったときにはもう一度お願いして母に握ってもらい『大きなかしわ飯のおにぎり3個』を食べたいと思っています

いろんな想いや後悔はありますがあの時母の握ってくれた『大きなかしわ飯のおにぎり3個』は私にとって人生で1番の

#元気をもらったあの食事

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