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【ちそうの学校 #1 レポート】地層学者から見る、野母崎の地層とその歴史

10月21日、第1回ちそうの学校がスタートしました!初回のゲストは野母崎の地質を調査している長田充弘さん。長田さんは大学生時代から長崎半島(野母半島)を8年以上調査しています。その調査期間もさることながら、現地の人に向けたトークも滅法面白いという、地元の方の間でも有名な地質学者です。

【ゲストプロフィール】
長田充弘(ながた みつひろ)
国立研究開発法人 日本原子力研究開発機構 核燃料・バックエンド研究開発部門 東濃地科学センター 地層科学研究部 年代測定技術開発グループ 博士研究員。1991年、富山県生まれ。2013年より長崎県長崎市の長崎半島(野母半島)の地質を調査している。2020年、富山大学大学院理工学教育部新エネルギー科学専攻(博士課程)修了後、現職。

そんな長田さんをゲストに迎え、「野母崎の地層」をテーマに、長崎アートプロジェクト ディレクターの林 曉甫(NPO法人インビジブル 代表)と、同キュレーターの桜井 祐(TISSUE Inc. 共同設立者)のトークセッションが行われました。

スクリーンショット 2020-11-02 18.31.30(左上:桜井 左下:林 右上:野母崎パブリックビューイング会場 右下:長田)

地質研究者が「夫婦岩」を見ると?

トークセッションは長田さんのスライドショーを中心に展開されました。主な内容はこの3つ。

1. 地質研究者は何をしているのか
2. 地層や岩石の基礎知識
3. 野母半島の地質

「地質研究者って何をするの?」「地質と地層の違いって何?」「岩石の年代の特定はどうやって行うの?」「岩石の見分けはどうやってするの?などの何気ない疑問を、基礎知識から野母崎の地形に関わる専門的な知見まで、スライドショーを用いて1からわかりやすく説明してくれました。

スクリーンショット 2020-11-02 18.44.11(スライドショーを共有して説明している様子)

例えば下の資料をご覧ください。

スクリーンショット 2020-11-03 19.19.33

「あれ、何だか見覚えがある……?」「実際に行ったことがある!」そんな方もいらっしゃるのではないでしょうか。これは長崎県長崎市以下宿(いがやど)町にある夫婦岩です。岩の間には軍艦島が覗く、野母崎半島で見られる有名な観光名所です。私たちから見れば『有名な観光名所』。ではこの景色、長田さんの目にはどのように写っているのでしょうか?

(長田)これは観光名所にもなっている、以下宿町の夫婦岩です。みなさんにとっては「岩と岩の間に軍艦島が見える、地域の名所」という認識かと思うのですけれども、我々自然研究者がこの岩を見ると「これは5億年前からあるもので、この石は一体どうなっているのか?」という話になります。

そう、実はこの夫婦岩は5億年の歴史を持つ岩なのです!夫婦岩をさらに拡大すると、以下のように見えます。

スクリーンショット 2020-11-03 20.54.25(夫婦岩を拡大した写真)

(長田)夫婦岩の岩肌を拡⼤すると、⽩っぽい⽯と⿊っぽい⽯が複雑に⼊り込んでいる。なので、複合岩体という名前がついています。岩⽯名で⾔うところの「深成岩」という⽯が、⻑い時間をかけて変成したもの。 白っぽい部分は「花崗(かこう)岩」と専⾨⽤語で言います。花崗(かこう)岩⾃体は、墓⽯などにも使われており御影⽯とも呼ばれる岩⽯ですね。⿊っぽい部分は専⾨⽤語で「はんれい岩」と⾔い、このように変成しているものには「変はんれい岩」と⾔う名前がついています。これらの岩⽯が、5億年くらい前のものという分析だ、ということですね。


何気なく目にする岩に、こんなにも多くの情報が含まれているなんて、考えたことはあったでしょうか。この話を伺うと、私たちの見えている景色と長田さんの見えている景色の違いがはっきりとわかります。


たかが石、されど石。何気なく拾った石が持っている歴史。身の回りや足元、実は至る所に、私たちに見えない「じかんのちそう」が存在していて、それは私たちが少し視点を変えるだけで、見えてくるものなのです。

どこが化石? 地層から想像する土地と暮らし

トークの途中では説明された知識を用いた実践クイズも。みなさんは、下の資料内の写真、どの部分が化石かわかりますか?

スクリーンショット 2020-11-02 19.06.43

オンライントークの参加者だけでなく、ライブ配信を見ている方からもチャットを通じて様々な意見が出ました!果たして正解はどこの部分で、一体何の化石なのでしょう……?

YouTubeのアーカイブ動画から、岩石にや地層についての詳細な解説、さらにクイズや濃密なディスカッションを見ることができます。ぜひ自分の目と耳で確認してください!

⬇️こちらからYouTubeサイトに飛べます⬇️

本プロジェクトの重要なテーマである「ちそう」という言葉。土地に残された記憶としての“地層”や、さまざまな人が訪れ紡がれてきた人間たちの“血層”、そして世代を超えて継承されている知恵や知識といった“知層”。「ちそう」という三文字に、時を経るからこそ繋がることができる、たくさんの思いや意味を込めています。

第1回ちそうの学校では、地質学の専門家、長田さんによる目線から、その土地の歴史や風土という意味での「地層」を学び、「ちそう」というプロジェクトテーマに関わるうえで、非常に重要な回となりました。

次回の「ちそうの学校」は11/18(水)19:30〜!

次回の配信は11/18(水)19:30-21:00
ちそうの学校 #2「風土 ―“その場所”である制約と意味―」
です。

ゲストは、長崎アートプロジェクトの招聘アーティストである谷口弦さん(KMNR™・名尾手すき和紙7代目)と、長崎市出身で「定額で、世界中住み放題」を可能にした新サービス「HafH(ハフ)」を運営する大瀬良亮さん(株式会社KabuK Style Co-CEO)。今回同様、長崎アートプロジェクト ディレクターの林 曉甫と、同キュレーターの桜井 祐が聞き手として参加し、4者によるトークセッションをお送りします。

詳細は以下をチェック!⬇️⬇️⬇️

▽テーマ
ちそうの学校 #2「風土 ―“その場所”である制約と意味―」

▽日時
11月18日(水) 19:30-21:00

▽配信URL
https://youtu.be/eaKR2jkqJuc

▽パブリックビューイング会場
きまま焙煎所(長崎市脇岬町3630-1)

▽ゲスト
谷口弦(KMNR™・名尾手すき和紙7代目)
アートコレクティブKMNR™(カミナリ)主宰。佐賀県名尾地区において300年以上の歴史を持つ名尾手すき和紙の7代目。長年受け継がれてきた紙漉き技術を駆使し、特定のマテリアルを漉き込んで一枚の紙に仕立てることで、その素材が内包する情報(魂)を受け継ぐ、新たな文脈を持った媒体としての紙「還魂紙」を生み出し、作品制作を行う。

大瀬良亮(株式会社KabuK Style Co-CEO)
1983年、長崎県生まれ。2007年筑波大学卒業後、電通入社。被爆をデジタルマップで伝える「Nagasaki Archive」でYahoo!デジタルアワード特別賞受賞。2015年から首相官邸初のソーシャルメディアスタッフとして内閣広報室に出向。2018年からつくば市役所まちづくりアドバイザーとして広報戦略を担当。

▽聞き手
林 曉甫(長崎アートプロジェクト ディレクター/NPO法人インビジブル 代表)、桜井 祐(長崎アートプロジェクト キュレーター/TISSUE Inc. 共同設立者)

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