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企業向けバーチャルYouTuber入門 ~短くて激動の歴史を添えて~

バーチャルYouTuber(VTuber)が流行り始めてから約4年、キャラクター単位では流行り廃りがあるものの界隈全体としては今でも拡大し続けている。一方で、未だにVTuber界を理解していない企業が参入し、経営が軌道に乗らずに会社およびVTuberが苦しんでいる様子を見せ続けられている側面がある。そこでバーチャルYouTuberの何が受け入れられているのかということをこれまでの歴史を振り返りながら書き綴っていこうと思う。今後VTuber関係の事業を始めたい企業の方々にはこの記事を参考に関わり方を考えてもらいたい。

まず簡単にバーチャルYouTuberとは何かを説明すると、バーチャルYouTuberとはキャラクターとして映像に登場する人達のことである。発声と一緒にそのキャラクターがまるで生きているかのように動かし、さもそのキャラクターが存在するかのように成りきって動画配信を行う。3Dや2Dや他にも表現方法はそれぞれであり、厳格な定義は不可能と考えられ、本人がVTuberと名乗ったらVTuber程度の扱いで考えるとよいだろう。

VTuberの流行の歴史

明確に分けることはできなく、誰かがまとめているわけでもないが今の流行りはおよそ第4ウェーブにあたると思われる。便宜上だが説明しやすいのでこの各ウェーブを説明していく。

流行の始まり

第1ウェーブは2017年の年末頃である。
この時期よりも前からVTuberそのものは存在していたが、バズったVTuberが登場してVTuberの知名度が一気に上がることとなる。それが特徴的な声を持ち不思議な言動が話題になった輝夜月(かぐやるな)のデビューである。人気イラストレーターによる魅力的なデザイン、一度聴いたら耳に残り続けるマスコットキャラのような声質、元気溢れる動画、それらに魅了されて興味を持った視聴者がたくさん産まれた。また近い時期に、見た目が可愛いキャラクターにもかかわらずおじさん声で活動するバーチャルのじゃロリ狐娘YouTuberおじさんのねこますの動画も多くの人に衝撃を与えて日本のインターネット上で大変話題になった。それに伴って先に海外で話題になっていたキズアナイの日本での知名度もさらにあがり、VTuberブームの第1ウェーブが始まったと言えよう。同じく他にも第1ウェーブより前から活動をしていた電脳少女シロは、そのイルカのような引き笑いとかわいい見た目とは裏腹な狂暴な言動が話題になり、ミライアカリはその明るいキャラクター性などが話題になって、この大きな波にのることになる。

キズナアイはバーチャルYouTuberという概念を作った存在であり、その昔からアバターを使ったキャラクターの配信はあったが、そこにバーチャルYouTuberと名付けたことで実際に生きているようなリアルな存在になったといえよう。キズナアイは声や見た目の可愛さはもちろんのこと、これまで多くの動画を出していたことで、それらの動画内のリアクションなどもよく話題に上がるようになった。

この頃はバーチャルYouTuberという新しい概念そのものが注目されており、可愛い見た目と特徴的な声やそのギャップなど、キャラクターそのものの面白さがよく話題にされていた。この時代は録画・編集された動画配信がメインで行われており、投稿される動画は一般的なユーチューバーのような紹介系動画やゲームプレイ動画などが多い。

VTuberの爆発的増加

第2ウェーブは2018年上旬~中旬頃。
第1ウェーブの影響を受けていろいろな種類のVTuberが生まれることとなる。VTuberのカンブリア紀であり、配信内容も多様的になった。波に乗るべく多くの企業が参戦し今まで通りのユーチューバータイプだけではなく、バーチャルアイドルグループのデビュー、歌を中心としたバーチャルシンガーのデビュー、アニメやゲームのキャラをVTuberとしてデビューさせたり、サントリーやロート製薬といった企業の広告塔としてのVTuberもデビューしている。これまでのバーチャルという表現はコンピュータ上の電子的な存在という意味が強かったのだが、現実などに仮想的に存在するという意味合いが強くなり、VTuberの設定もバラエティに富むようになった。

ここで大きな転換期がやってくる。にじさんじというVTuberグループのデビューである。これまではVTuberといえば3Dのモデルを持ち自由に四肢を動かせることが当たり前だったが、にじさんじではほぼ顔(頭と目と口など)だけしか動かないイラストを元とした2Dモデルを利用して自宅から配信を行うVTuberを続々と誕生させていった。今までのVTuberが投稿動画を主軸に活動していったのに対して、2Dモデルを使ってトークやゲームなどをリアルタイムに行う生配信もよく行われるようになった。特に月ノ美兎(つきのみと)の破天荒なトークが話題となり、アニメキャラクターらしい可愛さだけではなく、現実に近い親近感のある生々しい内容も楽しまれるようになっていった。

3Dモデルではなく2DモデルでもVTuberを表現できることが分かると、3Dモデルと比べて必要な経費と時間が少ない2DモデルでデビューするVTuberが急増した。この頃より動画投稿ではなく生配信が話題になることが増えてくる。

続くように電脳少女シロの実質的な妹分としてアイドル部というグループが2Dモデルでデビューした。今までと大きく異なっているのは、グループということを前面に押し出した配信スタイルという点である。生配信を1人1時間で終わらせリレー形式で繋げていくことでテレビの番組表のように続けて配信を行い、VTuber単体で応援するのではなくグループ全体で盛り上がれる仕組み作りをしたのが特徴である。電脳少女シロの妹分ということもあってデビュー時からとても注目を集め、さらに個性豊かなVTuberばかりでアイドル部という1つの群像劇のように多くのファンを楽しませた。

3Dモデルよりも低コストで作れる2Dモデルが流行ったことで、個人でもVTuberを始める人も増えていった。こちらは個人勢と呼ばれており、厳密な定義は難しいが企業主導で活動するのではなく趣味および専業として活動する個人である。それに対して企業に所属しているVTuberは企業勢と呼ばれる。

個人勢はその数も多く、それゆえに多種多様なVTuberがいる。趣味の範囲の活動であるがゆえにどうしても企業と比べて見劣りするクオリティのVTuberも多いが、プロのイラストレーターや3DCGモデラーが自らVTuberとしてデビューするケースなど、見劣りどころか企業VTuberよりも手間がかかっているVTuberも存在する。ボイスチェンジャーなどを利用して男性が女性キャラを演じるバーチャル美少女受肉おじさん、通称バ美肉と呼ばれるVTuber達も個人勢に多い。なお男声のままのタイプ、ボイスチェンジャーを使わずに女性の声をだす両声類というタイプなどバ美肉といってもこちらも厳密な定義は難しい。個人勢の特徴としては判断も責任も本人が全て受け持つため、企業勢よりも自由に好き勝手に活動しているVTuberが多いところである。何か1つのことに特化した個人勢やアットホームらしさを大事にした良くも悪くも内輪で閉じた個人勢など専門性と親近感の幅の広さがより特徴的かもしれない。

VTuberが一気に増えたことでこの頃よりコラボ配信というものも増えていった。コラボ配信とはVTuberが二人以上で一緒に配信することである。一緒にゲームをやるコラボから、なんらかの企画を一緒にやるなどコラボ配信といっても多種多様であるが、それぞれのファンが集まるために盛り上がりやすく話題にもなりやすい。VTuberが増えたといえまだまだ規模も小さく、各企業のグループや個人勢など所属に関係なくいろいろなコラボ配信が行われ、ゲームの大会なども開かれて、VTuber界隈全体が一体となって盛り上がっていった。

また、第1ウェーブでバズったVTuber達は、この頃はYouTubeでの活動だけではなく他メディアへと版図を拡大していった。ライブ会場を借りて音楽ライブを開催したり、イベントや番組への出演、メディア露出、広告塔としての活動などが増え、バーチャルYouTuberとしての新しい可能性を模索していくこととなる。特に音楽ライブでは今までは動画サイトを経由しての盛り上がりだったのが、会場で現地でファンが集まって盛り上がることができ、VTuber本人もファンもお互いにリアルをその場で体感でき大興奮であった。

箱推し時代の到来

第3ウェーブは2019年頃から最近まで続く長くて大きい波である。
企業や個人にそれぞれあまりにも多くのVTuberが誕生し、VTuberであることに真新しさが感じられなくなった。波に乗ろうと参入してきた企業のうち、うまく行かないところは引退および撤退し始めるところもでてきた。VTuber全体を追いきれなくなり、それぞれ別々のVTuberやグループを楽しむファンに分かれ話題も分散するようになる。その結果、新しくVTuberとしてデビューしてもVTuberということだけで話題になることがなくなり、新規企業にとって厳しい状態がやってきた。

では現在は何が話題になっているかというと、現在人気の楽しみ方は、箱推しである。箱とはVTuberが所属しているグループのことを表しており、箱推しとはVTuber個別ではなく所属しているグループ全体を応援することである。無数に増えていくVTuberに注目することは不可能でも、活動内容や増える人数が限られている箱という括りなら情報を得やすく楽しめるという仕組みだ。なお箱推ししかしないというファンもいれば箱推ししながらも他のVTuberも見るファンなど人それぞれである。上記で紹介したアイドル部もこのような楽しみ方であり、各々が自由に活動していたにじさんじなどもグループ内の人数が増えるにつれてグループ内同士で活動することも増え、箱推しの新時代が到来した。

箱推しの面白さはいくつもあるが、特に注目したいのは関係性の面白さである。さながら漫画やアニメのようにVTuberそれぞれの性格が相互に作用しあっていろいろな物語が生まれていった。対立しあって最後に笑うような配信、哀しいことが起きてそれを裏で支えあったエピソードなど1人だけでは表現できない豊かさがそこにはあった。そのような相互作用がいくつもいくつも積み重なって歴史になり、現在も各グループで関係性が熟成していっている最中である。故に、ただグループを作ればすぐに面白くなるわけではなく、積み重ねの上で成り立っていることに気を付けていただきたい。そして歴史を重ねてきた箱はファンと共に一緒に盛り上がってきた一体感があり、VTuber自体を楽しむだけでなく、箱という共通点があることでファン同士がコミュニティで語る楽しみ方も提供してくれる。

一方で箱が大きくなったことで、誰が配信するのかということよりも、誰が何の配信をするかということが視聴する上で重要視されるようになってきた。グループ内だけでも所属VTuberがたくさん存在し、配信数も増え、全てを見ることができないからだ。視聴するかどうかの決め手は内容およびそれを配信するVTuberのキャラクター性とぴったりの題材かどうかなどである。もちろん黎明期の頃からも内容は重要であったが、箱推しによってさらにその振れ幅が大きくなったと感じる。また、グループ外とのお互いが打ち解けきっていない次回がいつか分からないコラボよりもグループ内でするコラボを期待されることも増えて来た。このようにグループであることが強みでもあるが、その上でどのように活動すべきかという指標もまた変わってきているようである。

第3ウェーブで台頭してきたのはホロライブというグループである。こちらも会社としてはVTuber黎明期より存在していたため、活動の歩みが積み重なった箱の成熟度が高いグループである。グループ全員でのライブイベントを行うなどメンバー同士が支え合うようなことも多く、グループ内の様々な関係性を楽しむことができる。またグループ内で作る小さいグループも人気であり、加入が同じタイミングの同期グループや趣味が似通ったグループなど、さらに絞って応援がしやすい。特に桐生ココというVTuberがグループ内の出来事をピックアップした配信を初めて話題となったり、グループ全体で参加できるゲームを流行らせるなど、新しいファンが入りやすいような導線を作り、グループとしての魅力をさらに高めた。

広がり続けるVTuber文化

第3ウェーブが最近まで続いていると書いたが、途中からは第3ウェーブの傾向に加えてさらに新しい傾向が増えてきた。2020年前期くらいから様々な新しい傾向が増えてきて、今はもう第3とは違う第4ウェーブと考えてもいいだろう。

新傾向の1つが海外への展開である。
もともとキズナアイが海外でバズった後もVTuberの海外人気は一旦落ち着きながらも長く続いていたのだが、VTuberのリアクションを切り取った動画が海外でバズったこと、さらに英語が堪能で海外ネット文化をよく知っていた桐生ココが海外向けへの活動も開始したことにより、生配信および箱という楽しみ方が海外にも知れ渡って、再び海外での人気に火が付いた。元々日本の企業も海外向けのVTuberを送りだしていたが、今では海外の企業が発足したVTuberグループも存在するほどVTuber文化は世界に広まっている。

2つ目は致し方ないご時勢柄の問題だが新型コロナウイルスの影響である。
スタジオでの収録がメインであったVTuber達が、この影響によって収録を行うことが難しくなってしまった。特に第1ウェーブから活躍していたスタジオ収録が多い3DモデルのVTuber達はこの影響をもろに受け、しばらくは動画投稿を休止したり、簡易設備などで生配信できるようにしたりと活動の方針転換を余儀なくされた。同様に観客ありの音楽ライブを開催できずにオンラインの音楽ライブに切り替えるなどこちらも影響が大きく、今もなお苦労は続いている。一方でもともと自宅から配信をしていたVTuber達は巣ごもり需要に乗る形で配信を見てもらいやすい状況が続き、追い風の側面もあった。

3つ目は女性ファン増加である。
VTuberの流行の始まりがかわいい見た目やかわいい声などから始まっていることもあり、女性ファンもいたが男性ファンの比率がとても高かった。そのため昔は男性VTuberのファンでも男性の比率が高かったのだが、かっこいい男性VTuberも増えていき、女性ファンの比率もどんどん高くなっていった。そして男性VTuber同士でグループを作ったり、ゲーム配信だけではなくアイドル活動を行うなど女性向けの内容も増え、今では男性向けのファングッズを出すだけでなく女性向けのファングッズも出すなど女性向けのVTuber市場もとても大きくなっている。

そして4つ目がユーチューバーおよびストリーマーのVTuber化である。
元々YouTubeやTwitchなどで配信していた人達が2Dアバター3Dアバターを用意してそのままVTuberを名乗るケースである。最近では特にユーチューバーのヒカキンのVTuber化が大きな話題となった。これまでのVTuber化の主流としては、キャラクターに成りきるためにこれまでの過去の活動や人間の生々しい部分を隠すことを基本としていたが、過去の活動を引き継いだままで配信者の延長としてVTuberを名乗る活動者が増えてきた。そのような形式のVTuberは個人勢が増え始めた頃からも存在していて転生組と呼ばれていたが、その転生組と呼ばれるVTuberともさらに異なり、VTuber化した後でも元のスタイルの活動を続けるなどただのアバター使用配信としてVTuberと名乗ることも多く、VTuberのあり方もより一層曖昧になってきているようである。

第3ウェーブと第4ウェーブの間で話題になったVTuberはたくさんいるが、企業勢と異なる伸び方があったのが個人勢のVTuberの渋谷ハルである。※現在の渋谷ハルはVTuberグループの運営にも関わっているなど個人勢ではない。渋谷ハルはゲーム配信を中心に活動するVTuberなのだが、Apex Legendsというゲームをリリース時から配信し、その生配信や解説動画を上げることによって大きく伸びたVTuberである。元々他のゲームに特化していたVTuberだったのだが、新規タイトルであるApex Legendsが世間で人気になると共にその波に乗る形でよく話題に上がるようになった。さらにはストリーマー達と一緒にグループを作って活動するなど、箱推しのような魅力も作り出した。そういう経緯もあって他のVTuberと異なるのが、VTuberを見ている層だけでなくゲームプレイヤー層からもファンが増えた点である。ストリーマーのVTuber化が多いと書いたが、その背景の1つにVTuberとストリーマーのコラボが増えたことが考えられ、渋谷ハルもストリーマーに混じってゲーム大会に出るなど、VTuberとストリーマーの関係がより密接になった事例の1つである。詳しくは渋谷ハル自身がnoteに記事を書いているのでそちらをご覧ください。

様々な配信コンテンツ

ここまではVTuberの流行の変化を書いたが、次はどのような配信があるのかを書いていく。まずは前半でも書いたが、収録および編集した動画を投稿して見てもらう動画投稿形式、リアルタイムに映像を配信する生配信形式の大きく分けると2種類がある。

動画投稿形式の良いところはトラブルが少ないことと、カットなど編集によって見どころを分かりやすくできるところである。一方で求められる質も高く、動画の撮影および編集に時間がかかって苦労をすることも多い。以前は生配信と違ってファンがチャット欄に集まって一緒に盛り上がることができないデメリットもあったが、YouTubeのプレミア公開という機能によって公開時に視聴者が集まって一緒に見ることができるようになった。

生配信形式の良いところは視聴者とチャット欄を通じて双方向で反応が共有出来ること、最後まで何が起きるかわからないため視聴者との一体感があることである。デメリットは時間が長くなること、見どころがいつ来るのか分からないこと、トラブルが起きてしまって進行が悪くなるなどがある。しかし良くも悪くも段取りがしっかりした配信が必ずしも求められるわけではなく、その場の勢いでフットワークよく配信することもよくある。

現在は生配信が特に話題になることが多い。これは次に何が起きるのか分からないことがファン同士のコミュニティで盛り上がりやすかったり、様々な配信を多く試せるため試行錯誤がしやすいこと、リアルタイムという特別感によって後回しにされにくいことなど様々な理由が考えられる。しかし今後また動画投稿が主流になる可能性もあり、現在も動画投稿が主軸の面白いVTuberも多くいることは覚えておいてもらいたい。

ゲーム配信

次は配信の内容の種類を紹介する。
需要が高いのはやはりゲームプレイの配信であり、あらゆる種類のゲームがプレイされ、まずは代表的なゲーム配信を紹介する。

定番のゲーム配信といえばホラーゲーム配信である。VTuberの驚いたリアクションや怖がっている様子を見て楽しむことが出来る。一人ではホラーゲームを怖くてできない視聴者もVTuberや他の視聴者と一緒なら見れるなど怖さを和らげる効果もある。さらにはホラーゲーム特有の独特なストーリーの考察を一緒に出来ることも魅力の理由である。

根強い人気があるのはFPS(一人称視点シューティングゲーム)の配信だろう。元々TwitchなどにてFPSのゲーム配信が人気のため、FPS配信が馴染み深い視聴者が多いこともあるが、画面映えするような上手いプレイや場面の多様性、ゲームを知らなくても比較的見やすいなどが人気の理由と考えられる。

奇抜なゲームを配信することも多い。例えばVTuberの間で長く人気のGetting Over Itという奇抜なゲームがある。それは壺に入ったおじさんがハンマーで登頂を目指すという意味不明なゲームなのだが、操作がかなり独特のゲームのため、その操作にイライラしたり失敗を嘆いている様子が面白がられている。しかし頑張ればクリアできるゲームのため、クリアを視聴者で見届けて達成感も共有できる良いゲームである。このように視聴者の目を引くインパクトがあって、笑って楽しんで遊べるのが奇抜なゲームの魅力である。

広い年代からも人気のあるゲームがマインクラフトである。探検をしたり建築をしたりといろいろなことが可能で自分の好みに合わせた遊び方ができる。一人で行うマインクラフトももちろん人気だが、特に何人も参加するマインクラフトが箱推しとの相乗効果がとても高く、グループ内での交流によって起こる様々なハプニングや共同作業で友情を育んでいる様子を楽しむことができる。予定したコラボではない突発の出会いが発生しやすく、予想外の筋書きのないドラマが生まれやすいのも魅力である。同様の理由で複数人が同時にゲーム内で活動できるゲームはVTuberに人気が高い。

ソシャゲのガチャを回すというゲームの本編をプレイしないゲーム配信もある。目当ての結果を期待してガチャを回し、その引けた引けないのリアクションを楽しむ配信である。つまらない配信に聞こえるかもしれないが、当該のゲームを知っている人にとっては一喜一憂の共感がとてもしやすくて、初めて見るVTuberでも配信が分かりやすいという強みがある。

RPGなどのストーリーが長いゲームを何日にも分けて配信し、視聴者と共に攻略していく様子を楽しむなどもある。未プレイの視聴者がゲームの内容を一緒に楽しむことももちろんだが、既プレイの視聴者が懐かしさを感じたり自分との感想の違いを楽しんだりと間接的な内容でもよく盛り上がっている。

アクションやレースやテーブルゲームなど他にもゲームのジャンルはいろいろあるが、それらも様々なVTuberによってプレイされている。

ASMR配信

ゲーム以外で有名な配信といえばASMR配信である。こちらも奥が深いため詳細は調べて欲しいが、ASMR配信とは声や物を使った音またその組み合わせで心地よい気持ちになれる配信である。厳密には音以外でもASMRにあたるそうだが、VTuberのASMRといえば音によるものがほとんどである。VTuberは声質も様々であり、また物を使って出した音でも人によって異なる音が出るため、VTuberそれぞれでASMRの趣向も異なる。また、好きなVTuberの囁くような声に癒されたいという人も多く、初期の頃から人気の高いジャンルである。

雑談配信

生配信ならではの配信といえば雑談配信である。雑談配信とはその名の通り最近あったことや自分の趣味などを雑談するだけなのだが、チャット欄の視聴者のコメントからさらに話題を広げたり意見交換したりと、内容が一辺倒にならないのが面白い。時事ネタをラジオのように聞いたり、グループに所属しているVTuberならそのグループ内での出来事を聞いたりと、そのVTuberが考えていることをより深く知ることができるため、熱量のあるファンにとっても嬉しい配信である。ただ雑談するだけでなく、飲酒をして配信する飲酒雑談などもよく行われる。酔っているため普段の雑談配信とは少し違う大胆な一面が見れることもあり、こちらも人気が高い。また、少し近いジャンルとしてはお便りを募集してお悩み相談や質問コーナーのようなことをしたり、近況ではなく何かの体験レポートといった感想を言う配信などもある。

歌配信

また生配信独特のものといえばカラオケ配信、通称歌枠がある。これはカラオケで他の人の歌を聴くような気持ちでVTuberの歌を楽しむことができる配信である。あくまでリアルタイムでの歌唱のため、上手い歌を聞くことよりもその場の雰囲気を楽しみたい視聴者が多い。もちろんリアルタイムの歌唱でも上手に歌えるVTuberもたくさんいる。アニメソングやボーカロイドの曲、昭和や平成の名曲などVTuberによって歌うジャンルは大きく異なり、視聴者の世代に近い曲を懐かしいと感じながら聞いたり、若者に人気の最新の曲を知ることもできる。

生配信ではなく歌を動画投稿形式で投稿する、通称歌ってみた動画という動画もある。これは歌声を収録および編集などを加えてちゃんとした歌として出すカバー曲であり、歌だけでなく映像が凝ったものも多い。そのためVTuberによっては作成にとてもコストと時間がかかるため、歌枠ほど気軽に配信できない問題もあるが、しっかり作ったカバー曲はVTuberを知らない人にも聴いてもらいやすいなどの強みもある。

同時視聴配信

少し特殊な再生方法になるが同時視聴配信というアニメや映画などを一緒に視聴する配信がある。基本的にはVTuber側と視聴者側がタイミングを合わせて同時に映画を再生し、VTuberの反応や視聴者のコメントを一緒に楽しみ、
視聴後は映画についてトークし合い、まるで友人達と映画に行ったような楽しさを体験できるというものである。中にはニコニコ動画提供で映像も一緒に配信することができたり、またTwitchのWatch Partyという機能を使って、VTuberの視聴タイミングと自動で同期して再生するといった方法もある。

3D配信

元から3DのVTuberはもちろんだが、普段2Dで配信しているVTuberにも3Dモデルが用意され、スタジオを使って3Dの撮影する配信が3D配信である。特に初めての3D配信は、元の2Dのイラストからどのように3Dモデルを表現しているのか、また応援しているVTuberの全身の身振り手振りを楽しめることもあって、VTuber人生の中でも特に注目される一大イベントである。
3D配信の内容は様々であり、全身を使って表現ができるものが選ばれやすい。初期の頃は無難にジェスチャーゲームや3D撮影会といったシンプルなものが多かったが、段々とそのVTuberらしい内容が練られるようになった。中でも人気が高いのは歌って踊る3Dライブ配信である。VTuber自身もそのために練習をしてきたお披露目の場でもあり、配信内容そのものだけでなく頑張っている人を見ることで感動する側面もある。また3D同士でのコラボ配信もあり、VTuberのお互いのリアクションが分かりやすくなり魅力がさらに高まるが、技術的な問題でコラボ人数を増やしにくいなどの難点もある。

企画

日常的にやらない配信だったり、バラエティ番組のコーナーのような配信があり、それを企画などと呼ぶ。例えば、視聴者のファッションを評価するような企画、新人VTuberを集めてインタビューするような企画、昆虫を食べる企画、怪談を募って紹介する企画、学力勝負をする企画、俳句対決をする企画など、様々な企画が存在する。仲の良いVTuber同士が集まったり、いろいろな種類のVTuberを集めたりなど人選にも特色がでる。企画配信は準備や発想に時間がかかることも多いが、面白いことをやってくれそうな期待もあり、よく注目が集まる配信である。

特に人気の高い企画に凸待ち配信がある。元々他の動画配信サイトのものらしいが、VTuberの凸待ちは知り合いのVTuberからの通話を待つという企画である。誰が来るか分からない面白さ、普段あまり会話しないVTuber同士が話をする機会だったりとそのVTuberの繋がりを楽しめる。危険性もあるので有名になると少なくなるが視聴者からの通話を待つ凸待ち企画も存在する。

メン限

配信の種類の1つにメンバー限定配信(メン限)というものがある。YouTubeにはメンバーシップという月額の会員機能があるのだが、その会員だけが見れる動画や生配信であり、他のプラットフォームでもファンクラブ会員限定動画といった同様の仕組みが存在する。一般の動画や生配信はファンになる前の視聴者も見るのに対して、メン限はファンだけが見るものであるため、それが前提の内容が多い。普段よりも品質の高い動画を有料会員に見てもらいたいというものもあれば、イベントの裏話といったファンではないとあんまり興味が湧かない話などをすることもある。ちょっとした愚痴などプライベートに近い状態での相談やファンに元気をもらいたい時などにもメン限配信することがある。

配信内容の苦悩

様々な配信の種類を紹介したが、どのVTuberもどういった配信をするかいつも悩みながら活動している。一つのゲームに特化して配信するVTuberもいるが、それでもマンネリ化しないように配慮したりと悩みは尽きない。ユーチューバーらしい動画を作成し続けている3DモデルのVTuberが、実物のものに触れられないバーチャルという制約とも戦いながらネタ出しに苦労しているなどもある。初期にデビューしたVTuberはネタだしや編集などもチームでやっている所が多いのに対して、グループでデビューしている後発のVTuber達は配信内容などそれぞれのVTuber自身で考える傾向がある。グループ運営側から企画を出すこともあるが、特に話題になりやすいのはVTuber自身が考えたものが多く、ライブ感や活動の地続きから生まれた企画を視聴者も重視しているのかもしれない。グループ運営側も様々な企画を提案して試行錯誤し続けており、運営主導企画でも話題の配信をたくさん作れる日も近いだろう。

企業案件

特殊な配信としては企業案件配信がある。案件配信とはVTuberにゲームや商品の魅力を代わりに紹介してもらう配信であり、ゲームならば序盤をプレイしたり、アニメならば1話の同時視聴などを行う。しかし案件配信はVTuberが緊張したり言葉を選ばなければならないために普段の面白さを出すことができないことが課題であり、ただ案件として紹介するだけではなく大喜利のようなことをするといった一工夫をする試行錯誤もよく見られる。

一方で効果的に案件を出している企業も度々見かける。それはVTuberの活動とお互いにWIN-WINとなるような案件である。例えば、雀魂という麻雀のオンライン対戦ゲームがVTuberグループにじさんじの麻雀大会で協賛という形で使われたのだが、大会もとても盛り上がり、見ている視聴者たちも雀魂に興味を持って遊ぶようになってとても大きい宣伝に繋がった。他にもあるゲームシリーズが大好きだと公言しているVTuberにそのゲームの紹介案件をしてもらうことで、より詳しくそのゲームの魅力を伝えてもらうこともでき、VTuber本人も積極的に配信して視聴者共々楽しく案件を知ることができるといったケースもある。また、配信者の気質に合わせた案件も話題になりやすい。月ノ美兎はその破天荒さが人気と書いたが、月ノ美兎にデリケートエリアの治療薬デリケアエムズの案件が来た際には衝撃と驚きの声があがり、実際の配信でも月ノ美兎らしい語り口で配信を行うことができ大きな反響があった。

案件の種類だとコラボ案件というものもあり、これはVTuberが企業のサービスや商品などとコラボレーションするものである。ゲームの中にVTuberが登場するものや商品にVTuberのデザインをあしらったもの、特典としてグッズが付くなど多岐にわたる。こちらも案件配信と同様にそのVTuberの活動と相乗効果のあるコラボ案件ほど話題になりやすい。具体例としては雪花ラミィという日本酒好きのVTuberが酒造とコラボレーションし共同でプロデュースした日本酒はこちらも大反響であり、再販も行うもすぐ売り切れていた。

紹介の案件でもコラボの案件でも、商品の知名度を上げることができても商品そのものに魅力がない限りはあまり効果が続かないことは言わずもがなだが、お互いがWIN-WINとなれるような関係が増えればよいと願っている。これは私のわがままだが、VTuberをよく見ている人達はVTuberに時間を使っているため同じく時間を使うゲームやアニメなどよりも、気軽に手を出せる飲食系の案件が増えてくれると嬉しく思う。

切り抜き動画

VTuberを語る上で欠かせないのが切り抜き動画である。切り抜き動画とは配信の面白い一部分や特徴的な部分を切り抜いた動画であり、解説を付け加えたり切り抜いた部分を繋げ合わせるといったより面白くなるように編集が加わっているものも多い。VTuber本人や会社側が作ることもあるが、中でもファンが作る切り抜き動画が特に話題になりやすい。切り抜き動画は短く見やすく編集しているものが大半のため、そのVTuberの魅力が分かりやすく伝わることや、時間がない人でも気軽に見ることができて新規ファンの会得から既存ファンの継続的な視聴の手助けにもなる。初期の頃ではニコニコ動画での紹介の切り抜き動画からいろいろなVTuberを知ったというVTuberファンもよく見かけ、VTuberの流行の一翼を担ったといっても過言ではない。切り抜きを動画サイトに上げる以外にもTwitterに数分に満たない切り抜き動画を上げて、それがバズるきっかけになることもある。一方で最近では発言を偏向するような悪質な切り抜きも増えてきており、VTuberを悩ますことも多い。

用語解説

次は用語をいくつか解説していこうと思う。

[推し]
推しとは特に応援したいVTuberのことである。VTuber界以外でも元々使われていた言葉であり、推し活とは推しを応援する活動であり、推し変とは推しを変更することである。軽い気持ちで推しと言うファンもいれば、重い気持ちで推しと言うファンもいて人それぞれである。

[てぇてぇ]
VTuber同士が仲良くしているシーンで使われることが多い。尊いという表現がてぇてぇとなったと言われている。仲良くしている様子に感謝やありがたみなど深い感情が湧き、それが尊いと表現されて、てぇてぇとなった。尊いという表現は他の状況でも使うが、てぇてぇは仲が良いシーン以外で見かけることはほとんどない。

[新衣装]
VTuberの新しい衣装のことである。VTuberは3Dでも2Dでも衣装が固定化されているため、新しい衣装のために新しい3Dモデルや2Dイラストを別に用意する必要がある。髪形の長さが違ったり、中には子供の姿から大人の姿になるなど衣装にとどまらない体の変化も多い。

[二窓][複窓][多窓]
VTuberの別々の配信を同時に見ることである。リアルタイムで一緒に盛り上がれることが生配信の面白さの要因の一つと書いたが、VTuberがこれだけ増えると生配信が被ることも多い。そこで生配信をどちらも同時に再生する荒業を行うことである。ゲームで遊ぶコラボ配信で、参加VTuberの他の視点も見たい場合などにも行う。

[伝書鳩]
チャット欄に別の生配信などの話を書き込む迷惑行為である。例としては、同じゲームをしているVTuberがいることを伝えてコラボさせようとしたり、寝坊しているVTuberを起こそうと書き込んだり、他のVTuberの凸待ちに行かせようとするなど様々である。善意なのかもしれないが同じグループでもVTuberは自己責任の世界であり、VTuberをコントロールしようとする行為、そして配信を邪魔する行為になるためほとんどの配信で伝書鳩行為は禁止されている。

[魂]
いわゆるVTuberの演技をする人のこと。台本を作る人が別にいたり、体を動かす人が別のケースなどもあるが、喋っている人のことを指すことが多い。演技をしている人がいると分かっていてもテーマパークの着ぐるみのようにわざわざ触れないのがお約束である。VTuber人気は魂の部分への依存が大きく、同じキャラクターの魂を入れ替えることに抵抗を感じるファンはとても多い。

[Live2D]
2Dのイラストを動かす技術のこと。他にも似たような技術はあるが有名なものがLive2Dである。この技術を使ってイラストを動かす設定をするのがLive2Dモデラーであり、表情の印象にも大きく関与するためとても重要な作業である。近年はVTuberの体の可動域を広くする傾向にあり、可動域を広くしても表情やイラストを崩さずに設計する職人技が求められている。

[パパ][ママ]
VTuberをデザインした人のことである。初期の頃はイラストを描いた方をママと呼び、動きをつけるLive2Dモデラーをパパと呼んでいるVTuberもいたが、最近は特に関係なくイラストレーター側の性別に合わせてパパママと呼ぶことも多い。新衣装のデザインや3D監修なども引き続き行うことが多く、初期デザイン後もVTuberのサポートをする長い関係になる。そのため、VTuberデザインを単純なイラストの仕事としては請け負わないイラストレーターも存在する。もともとVTuberファンがパパママになることが多いというのもあるが、パパママはそのVTuberの配信をよく見たり、Twitterなどでコメントのやり取りをしたり、またファンアートを描くなど、仕事を越えたコミュニケーションもよく見られる特別な関係である。同じパパママから産まれた別グループのVTuber同士が一緒に企画配信をするなど、コラボのきっかけになることもある。

VTuberの楽しみ方

VTuberに限らない話も多いが最後にVTuberの楽しみ方について書く。
あくまで私や私がよく見かける楽しみ方であって楽しみ方は人それぞれなことは気を付けて欲しい。

積み重ねの面白さ

まずよく実感するのが、VTuberは共に歩むコンテンツであるというところである。VTuberに限らないが動画や生配信そのものの面白さだけではなく、これまでにやったことの積み重ねがさらなる面白さや感動に繋がっていく。歌やゲームが前よりも上手くなったなどの配信内容に直結するものももちろんだが、失敗したことに再び挑戦したこと、気が弱かったVTuberが立ち直って頑張れるようになったようなメンタルの問題のことなど様々である。VTuber一人だけの成長も面白いのだが、複雑な相互作用でグループの関係性が変わっていく様子もとても面白い。辛い時に支え合った仲間で一緒に大舞台に立つことや、疎遠になった後にまた仲良くなる、昔は遠慮気味の関係だったが今は冗談が言える仲になるなど、心配しながらも日々の移り変わりを見守れるのが良い。もちろんVTuberだけでなく視聴者についても同じで、過去にどういう応援をしたか、ファンアートを描いたこと、どういう配信が好きで見ていたかなど推し活での思い出も積み重なっていくわけである。

自由な活動

次点はVTuberは活動内容が自由という点である。一般的というと言い過ぎかもしれないが、YouTubeなどで活動する上ではチャンネルを分かりやすくするためにジャンルを絞って活動することが多い。例えば音楽系ユーチューバーなら音楽系ばっかり、健康系なら健康系ばっかり、レビュー系ならレビュー系ばっかりなどチャンネルを分かりやすくして、他に並列的に活動する場合はゲーム専用チャンネルなどと分けて活動するケースをよく見かける。もちろんゲームチャンネルを分けているVTuberもいたり、ジャンルを絞って活動しているVTuberもいるが、しかしVTuberは同じチャンネルでゲームもする、雑談もする、歌も歌う、ASMRもする、企画系の配信もするなど自由に活動することが多い。それほどVTuberの楽しみ方が動画や配信の内容を楽しむことよりかは、VTuber本人のファンになることを目指すコンテンツなのかもしれない。だからこそ様々な配信からVTuberの人間性の部分が垣間見えやすく、直前で書いたようなVTuberの歩みをより体感しやすいことにも繋がるのだろう。一方でVTuber本人に興味を持たない限りは活動内容が分かりにくいなどのデメリットもあり、悩んでいるVTuberも多いと思われる。また、現在の主流は生配信ではあるが、今後もまた動画投稿が注目される可能性もあり、今でも動画投稿が主軸の面白いVTuberも多くいることは覚えておいてもらいたい。

盛り上がるVTuber界

今はこの楽しみ方は少し薄れてきてしまっているが、VTuberがどんどん広まっていく様子を見るのも楽しみの一つである。VTuberが初めてテレビに出た時のことや初めての大型音楽ライブをするようになったこと、初めてのCM出演など、VTuber界隈が新しい分野に広がっていく様子に興奮を覚えたものである。もちろん前ほど初めて尽くしではないが今もVTuber界隈は広がり続けており、最近もまたTV番組にVTuberを起用する試みも増えたり、人気ゲームへの出演、VTuberの会社がメタバースにも力を入れ始めるなど、たくさんの新しい挑戦を見せてくれている。とはいえ勘違いしないで欲しいが、VTuber界で初のことではなくてもそのVTuberには初めてのことであり、そのような新しい世界に飛び出していくVTuberが増えていくことも、本人とそのファンそしてVTuber界全てにおいて喜ばしいことである。

ファンとの一体感

次の楽しみ方は、ファンとVTuberが一体となって盛り上がることが出来るということである。ここまでにも何度も書いたが、VTuberはチャット欄のコメントで視聴者とコミュニケーションしたり、描いたファンアートをVTuber本人に反応して貰えたり、Twitterでファンと触れ合うことも多いなど、視聴者との距離がとても近い。ファンの間で話題になっていることをVTuber本人が触れてさらに話題が大きくなるなど、話題にすることをお互い繰り返し合ってバズに繋がることも多い。また、VTuberは巷で盛り上がっている事を配信の話題にすることも多く、流行しているアニメやゲームの話で一緒に盛り上がったり、ちょっとした時事ニュースを一緒に考えたりと今という瞬間を共に盛り上がることができる。さらにはファン同士でVTuberの面白い所を語り合ったり、キャラクターやエピソードをもじったネタで笑い合ったりなど二次的な楽しみ方も活発であり、このファン同士の交流だけでTwitterのトレンドに乗るほどの話題になることもしばしば見かける。

最後に

同じVTuberの人気がずっと続くかどうかは分からないが、今後もVTuberという表現は盛り上がり続けると思っている。ここで書いたのはほとんどが陽のあたる側面の話であり、陰の部分はほとんど書かなかった。VTuberはバーチャルと銘を打ってはいるが演じているのは生身の人間であり、努力し、喜び、笑い、傷つき、疲弊し、悩んでいる人間なのである。本人だけではなくスタッフの方々も同様である。VTuberが大きなビジネスチャンスなことは確かだと思うし、これまでにも数々の企業がその波に乗ろうとしてきた。そして上手くいかずにVTuberに大きいプレッシャーがかかり、ストレスに押しつぶされそうになっているVTuberも多く見てきた。配信業は水物であり有名なイラストレーターや声優を起用すれば人気が出るというものでもない。だからこそ何が流行するか分からないVTuber界は面白いし、VTuber達もどうすれば面白くなるのかをずっと考え続けている。しかし新しい挑戦をする企業が減ることはVTuber界隈にとっても損失であるため、VTuberの文化を良く理解した企業の参入が今後増えることに期待したい。また、企業だけではなく個人で活動している素晴らしいVTuberも多くそちらにもスポットライトがもっと当たればと思っている。


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