長良しのが小説分類に使う指標について

現在、ノートにて小説の読書メモを書いているのですが、その際最初に小説のパラメータのようなものを数字で書いています。
これは、長良が小説を形式的に分類するために付けている数字なのですが、どういった意図でつけてるかを、一応ここで説明しようと思います。
先に言っておくと、この数字はあくまで小説の分類のためのものであって、良し悪しの評価をするためのものではないということです。
詳細は各項目で書きますが、必ずしも数字が高い=評価が高い、というわけではなないので、ご注意ください。

1.純文学度

その小説が、どれだけ純文学してるかの数値です。
最小値は0、最大値は100で、5ずつ増えていきます。
純文学とはどんな文学か、というのはよくある議題ですが、そもそも長良は純文学感というのは、グラデーションみたいになっていて、0か1で明確に区別できるものだとは思っておりません。
つまり、小説には純文学とエンタメ小説の2種類があるのではなくて、純文学要素が強めの小説から弱めの小説が連続して存在している。
そして、一定の純文学要素が詰め込まれている小説のことを、便宜上純文学と呼んでいるに過ぎない、みたいな認識ですね。

じゃあ、その「純文学感」「純文学要素」っていうのは何で決まるかというと、長良的には「解釈の余地の大きさ」だと考えています。
もう少し具体的に、純文学度の高い小説は、読み手によって結論が変わりやすいのに対し、純文学度の低い小説は、読み手が変わってもほぼ結論が変わらない、と言う事もできます。
まとめると、純文学度の高い小説は、解釈の余地が大きいから読み手によって結論が変わり、純文学度の低い小説は、解釈の余地が小さいので、読み手によって結論が変わりにくい、という感じですかね。
純文学が難しいと言われる理由は、この解釈の余地が大きすぎるがために、確固とした答えにたどり着けない、あるいはもっと根本的に、小説の感想を述べるための前提となる「問い」が見つけ出せない(=何が言いたかったかわからない)からだと思われます。

冒頭にも書きましたが、この純文学度というのは、数字が低い=評価が低い、というものではなく、あくまで、その小説の性質を数値にしているに過ぎません。
この純文学度という考えは、日本酒度という数字を元ネタとしているのですが、それに近いイメージです。
日本酒度は数値が高ければ辛口、数値が低ければ甘口という指標で、辛口が好きな人は日本酒度高めのお酒を買いますし、甘口が好きな人は日本酒度が低めのお酒を買います。
それと同じで、難解な小説(解釈の必要性が高く、文章中にこれといった答えがない小説)が好きな人には純文学度の高い小説がおすすめですし、わかりやすい小説(解釈の余地が少なく、ある程度答えがはっきりしている小説)が好きな人は純文学度の低い小説がおすすめになります。

2.小説の五大要素

続いて、小説の五大要素について説明します。
noteでは、純文学度の次に書いてある、キャラ、テーマ、コンセプト、展開、文体の5つの項目のことですね。
それぞれ、☆1~☆5の数字をつけています。
これも、純文学度と同じく、☆1だからテーマが良くないとか、文章が下手だとか、そういった小説の評価をするための数字ではありません。
どちらかというと、その小説の中で目立っているところ、力が入っているところ、解釈の余地が大きそうなところを、数字で表している、というイメージです。
ちなみに、これらの要素はラリー・ブルックス『工学的ストーリー創作入門』という本で紹介されている、「ストーリーのコア要素」とほぼ同じです。
この本自体は、ストーリーを創るための人に向けて書かれていますが、ストーリーを消費する立場の人が見てもめちゃめちゃ勉強になるので、おすすめです。
それでは、各要素について、それぞれ軽く説明していきます。

2-1.キャラ

1つ目は、キャラです。
これは、もうそのままで、小説に出てくるキャラクター(登場人物)がどれだけ変わっているかの目安になる項目です。
基本的に小説はキャラにある程度の個性がないと成り立たないので、☆1になることは少ないですが、他の項目とのバランスで、☆1になることもあります。
キャラが☆5の小説としては、村田沙耶香『コンビニ人間』九段理江『東京都同情塔』我孫子武丸『殺戮にいたる病』などが挙げられます。

2-2.テーマ

2つ目は、テーマです。
テーマとは、その小説で語りたいこと、問題にしたいこと、最終的に言いたいこと、みたいな意味です。
テーマと混同しやすい概念で、長良がよく使う言葉にモチーフというものがあります。
モチーフとは、一般的に作品の動機などと言われますが、長良は「小説の題材」的な意味で使っています。
テーマを表現するために使われるアイテム、みたいな。
具体的には、上田岳弘の『ニムロッド』を語る時に、「ビットコインと駄目な飛行機をモチーフに、価値とは何かをテーマにした小説」といった感じで使い分けたいのです。
テーマが☆5の小説としては、上述の上田岳弘『ニムロッド』市川沙央『ハンチバック』姫野カオルコ『彼女は頭が悪いから』などが挙げられます。

2-3.コンセプト

3つ目は、コンセプトです。
コンセプトとは、その小説の舞台設定、物語が展開するための枠組みたいなイメージです。
コンセプトが何か、については『工学的ストーリー創作入門』でわかりやすい説明がされており、「もし~なら?」という構文で表されるのが、コンセプトになります。
たとえば、高瀬隼子『犬のかたちをしているもの』であれば、「もし、彼氏の浮気相手から子供ができたからもらってくれと言われたら?」というのが、コンセプトになります。
後は、八木詠美『空芯手帳』であれば、「もし、妊娠していないのに妊婦の振りをして生活したら?」というのがコンセプトになります。
上記2作品は、コンセプト☆5で純文学度高めの小説ですが、どちらかというと、エンタメ系小説の方が、コンセプトのパラメータは高くなりがちですね。

2-4.展開

4つ目は、展開です。
これは割とシンプルで、物語にどれだけ動きがあるかですね。
動きの幅が大きく予想外であればあるほど、展開に力を入れている小説であると言えます。
展開もコンセプトと同じく、エンタメ系の小説で重視されがちな要素で、純文学で展開に☆5が付く小説は珍しめですね。
展開が☆5の小説としては、川上未映子『ヘヴン』町田康『くっすん大黒』山本文緒『自転しながら公転する』などが挙げられます。

2-5.文体

5つ目は、文体です。
文体とは、一言でいってしまえば、文章の癖ですね。
純文学は文体を味わう小説だ、という言説もあるぐらいなので、純文学度高めな小説は、文体の☆が高くなりがちです。
文体が☆5の小説としては、若竹千佐子『おらおらでひとりいぐも』黒田夏子『abさんご』日比野コレコ『ビューティフルからビューティフルへ』などが挙げられます。

以上、長良が読書メモで使う数字の説明でした。

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