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Venture Deals (13) 知財について

以下、米国VC・Foundry GroupのBrad FeldやJason Medelsonが毎年2回提供しているオンラインコース(無料)、Venture Dealsの講義内容が素晴らしかったのでまとめてみました。

今回は「Intellectual Property」のセッションを和訳してみました(和訳することについてはBrad Feld氏と直接コンタクトし、許可を得ております。この写真がBrad Feld氏です)。他のセッションも順次アップしていく予定です。是非ご一読下さい。なお、Venture Dealsはベンチャーキャピタルを理解する上でとても勉強になるシリコンバレーVCのバイブルです。是非ご一読ください。

(以下、講義和訳)

1. 知財の守り方

(クリント)どんな会社であれ、あなたの会社の知的財産の所有権をきちんと管理しておくことは極めて重要です。では実際にどうやって知財を守るのか、大事なポイントについてこれから説明していきます。

(クリント)起業家はどうすれば知的財産を守ることができますか?

(ジェイソン)一番の方法は、あなたの企業のために働くあらゆる人(たち従業、コンサルタント、私的に助けてくれている友人)と、機密情報および発明の取扱にかかる契約書(Proprietary Information and Inventions Agreement)をきちんと結んでおくことです。

この契約は「私があなたの会社のためにしたことはあなたの会社に帰属します」ということを、契約者に約束させるものです。また、契約者が過去に取得したいかなる知的財産も、あなた会社の知的財産と混同しないよう、明確に取り決めるものです。分量としては2、3ページで内容はシンプルなものです。askthevc.comコロラド大学のウェブサイト「起業家向け法律相談所」など、オンラインで入手することもできますよ。

これらの書面は法的にあなたの会社を100%守るために大変重要です。もし私がベンチャーキャピタリストとしてあなたに出資したものの、あなたのビジネスの知的財産に関与する全ての人が、いずれかの書面に署名していなかった場合、すべての人がこれらのいずれかに署名しているわけではない場合、知財の漏洩が発生し、将来的にあなたの会社の事業に大きな影響を与えてしまうのではないかとかなり不安になります。

2. 会社の知財を守るために

(クリント)私が起業家で会社を経営しており、しばらく前に共同創設者と一緒に働いていたとしましょう。私は彼とはあまりうまくいかず、彼は去ってもういなくなってしまいました。ところが、私は彼とは知財にかかる誓約書の署名を交わしていません。これはどのくらいマズいことですか?

(ジェイソン)なんて恐ろしい!署名がない場合、ベンチャーキャピタルから資金を調達することはおそらくできないでしょう。その問題わかった瞬間、即座に解決に動くことをおすすめすします。

交渉についてはまた別のセッションで説明しますが、最も重要な交渉戦術のの一つは、まだ自分が弱いうちに交渉することです。あなたの会社がTech Crunchにニュースで取り上げられるようになるまで待ってはいけません。あなたが強い立場になるにつれあなたの立場はどんどん悪くなります(注;もしあなたの会社が成功に近づいたら、去っていった創業者は当然その成長の恩恵にあずかりたいし、知財は自分のものだと主張したい、知財誓約書などにサインしないということです)。

去った創業者は危険です。もし問題が発生したらすぐに解決してください。何が質問はありますか?

3. 誰と誓約書を結ぶべきか

(学生)知財に関する誓約書については、メンターやアドバイザーにも署名してもらう必要がありますか?

(ジェイソン)テクニカルには不要です。弁護士は多分「必要だ」と言うでしょう。ですが、私はもう弁護士ではないので、答えは「不要」です。

メンターやアドバイザーの評判が世間的にも非常に良い人物だとしましょう。そんな人たちに一枚の紙を持って歩き回るのは嫌だし、またその人々に自分たちの事業アイデアについて語った挙句、「先生、これに署名していただけませんか?」「お願いします、これに署名してくれませんか?」なんて言うのはばかげているでしょう。

(学生)これは実際に昨日私の友人に起こった出来事です。彼は、プロトタイプのために必要な簡単なプロジェクトを推進していて、Twitterで「私のこの仕事を代わりに行ってくれる人が必要です。可能な場合はお知らせください。」とツイートしたんです。

それは非常に単純な作業であることが判明したため、誰かがそれを実行してGitHubに配置し、「ヘイ、完成したぜ」と言ってコードを置いていきました。この成果物は必ずしもオープンソースプロジェクトではなかったですし、ライセンスもありません。この場合はどうなりますか?

(ジェイソン)この場合に起こり得るのは、次のうちのいずれかです。その男は困った人を助けずにはいられなかったクールガイで、その後は何も起こらないでしょう。これが最もありうるパターンでしょう。

もう一方ありえるのは、あなたの友人が「ねえ、そいつはクールだね」と言って、そのコードを彼のプロダクトに勝手に統合し、ベンチャーキャピタルから1,000万ドルを調達し、会社を売却し、作者が戻ってきて、「私のコードの一部はどこにいったのですかの?」となるパターンです。

その時点で、訴訟するかどうか決めるのは当事者間の問題です。訴訟問題、ああ、非常に憂鬱になります。。。知財の誓約書に署名しない限り、誰が知的財産を所有しているかは不明です、ですから絶対に署名は忘れないようにしましょう。

前述した、プロトタイプを作った男が「10,000ドルであなたにコードを譲ります」と言って、あなたが彼に10,000ドルを支払ったとしましょう。これでも、知財の契約に署名していなければ誰が知的財産を所有しているかはまだ不明です。あなたがお金を支払ったからといって、あなたがそれを独占的に所有しているということにはなりません。それがここでの鍵です。

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