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米国のスタートアップ(VC-backed Startups)関連のM&Aは引き続き低調かも知れないという記事

足元好調な米国景気と、インフレ引き締めのソフトランディング期待に伴いS&P500やNYダウ等の株式指標は上昇局面にある。一方でIPO市場はそこまで回復の兆しを見せていないことについては過去の記事で記載した。

https://note.com/nagaoma13/n/n2dd6f782167f

一方で、米国におけるスタートアップ買収絡みのM&Aは回復しているのか、と言われると、そうでもないという記事をPitchbookにて見つけたので掲載しておきたい。

https://pitchbook.com/news/articles/vc-acquisitions-startup-decade-low-2023

https://pitchbook.com/news/articles/vc-acquisitions-startup-decade-low-2023より作成

2023年は、VC-backed Startups(ベンチャーキャピタルが出資を行うスタートアップ)の買収は過去10年間で最悪の年となった。買収に絡んだスタートアップの数は700社/買収金額は267億米(約3兆800億円)ドルで、2021年のピーク時の約4分の1にあたる。

景気後退懸念や、金利上昇、成長率から収益率重視への買い手および市場の目線の変化などが、企業の買収担当者が安価なスタートアップ企業の買収のに飛びつかなかった理由である。

マイクロソフト、アップル、グーグル、メタ等の資金力のある大手のテック企業でさえ、昨年は新興企業の買収に消極的だった。NEAのパートナーであるヴァネッサ・ラルコによると、彼女の投資先企業のひとつは、大手ハイテク企業への売却の可能性を検討していた。しかし、その買い手は立ち去った。「大手テック企業は、今現金を燃やし続けるだけで利益を上げていない(スタートアップを)引き取りたくなかったのです。」と彼女は言いつつも、あまり納得していない模様だった。「巨大企業にとっては、スタートアップにおける月100万ドルのキャッシュバーンなど誤差の範囲内のはずなので、キャッシュバーンは(スタートアップ企業買収に尻込みする)理由にならないはずだ」。

上場する大手テック企業は、コストを抑えることで投資家からの信頼を得てきた。例えば、メタ社の株価は、ソーシャルメディアの巨人であるマーク・ザッカーバーグCEOが "効率化の年 "と呼ぶ取り組みが功を奏し、2023年に2倍以上になった。

法律事務所Debevoise & PlimptonのM&AパートナーであるAly Love Simons氏は、「2023年のM&Aの実績はは多くの予想よりも遥かに下回る結果となったが、業界関係者の多くは、2024年はM&Aに好調になると予測している」と述べた。

Simons氏によれば「2024年、最大手の買い手は、M&Aの交渉のテーブルに戻ってくる。彼らはバランスシート(と株価)を見て、"今が買収のチャンスだ "と言っている」とのこと。

M&Aで大きなリターンを得るためのもう一つの障害は、スタートアップの複雑なキャップテーブル構造である。多くのスタートアップは最終評価額よりも低い価格での売却となるため、すべての投資家が売却益を期待できるわけではなく、投下した出資金を取り戻せるわけでもない。

サイモンズ氏は、このような状況を「サワースポット」と呼んでいる。なぜなら、株主クラスの間で報酬が不均衡であり、売却価格が非常に低い場合、普通株主はまったく何も得られない可能性があるからだ。

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