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「もの・の・まわり」とは。


「もの・の・まわり」には3つの考えがあります。

1・これからの「実店舗」のあり方のために


あなたはものをどう買っているでしょうか。

ネットで何もかも買うという人が増えていることはなんとなくわかります。僕も本はほぼネットで購入します。

本屋さんには行かなくなりました。一度買って気に入ったものは、ネットで合理的に買い物しています。では、路面店は必要ないのでしょうか。本屋さんは本当になくなってもいいのでしょうか。実店舗は何をしていかなくてはならないのでしょうか。

答えはわかっています。

「Webストアにできないことを提供する」です。

ある人が東急ハンズに行き、膨大な品揃えの中から探すのが「面倒」だと思い、ネット検索したそうです。そこには価格も使い方、情報が載っている。
もっと知りたければ、もっと深く検索していけば知りたい情報にたどり着ける。

東急ハンズに行くと、昔はワクワクしました。みたことのないものがたくさんあって、自分が欲しいと思っていたものも、ものすごい種類がある。その中から選ぶ楽しみと、出会う楽しみがありました。本屋も雑貨屋も服屋さんも一緒でした。出会う楽しみと、探し出す楽しみ・・・・・。

今は、検索に慣れて、先の彼に至っては「面倒」だと思ってしまうようになっている。そして、多くの人がそんな「検索」になれている。そんな世の中で、実際の場所を持ち、品物を並べ、来るかこないかわからないお客さんのために環境を整え待つ。それは何なのでしょう。

これからの「実店舗」は、Webストアとの共存が必須でしょう。
店内で確かめ、その場でWebから買ったり注文したりする店も増えています。また、逆にWebストアで出会った情報から、実店舗に足を運ぶケースも増えていると聞きます。

一つは、そうしたことを意識することが重要だと思います。つまり、実店舗を持つ人は、Webストアを意識する。
ということです。ブック型の端末を持って接客する店も増えています。

「もの・の・まわり」とは、まず、実店舗としてWebストアを意識しながら、「実店舗でしかできないこと」を考えていかなくてはならないとした時に、すべきこと。

普通に陳列して、接客するだけではWebストアの方が余程、便利でスマートですから。これからの「実店舗」は、「陳列と対面接客」をベースに、新しい「買い物」を創造する必要があると思うのです。

実店舗のお客さんに対する考えも、少し変えていかなくてはならないと思います。

つまり、リピーターや上顧客を増やし、何度も来店してもらうだけでは、ただの「店」です。

新しい感覚で生活する現代人に向けて、新しい「実店舗」のスタイルをみんなで考え、共有し、実行していきましょう。

まず、一つ目は、実店舗に関わる人が、意識を変えるという点です。昔からある実店舗の魅力に、プラス、現代的なアイディアを盛り込む意識です。

2・これからの「もの」との関わり方のために

これまでは「情報」でものが売れました。

ざっくりと言うと、生活者の多くは「ものが手に入れば、何かが起こり、変わる」と思っていました。

そこに輝かしいデザイナーの名前や、話題性が付加されていたならば、「そういうすごいものを持っている」「そういう話題のものを使っている」という意識で、満足が得られました。手入れの方法や作っている人の様子などの情報を店の中で接客すれば、お客さんは満足して購入していきました。

しかし、「もの」には「購入後」という現実があります。これまでの「実店舗」は、「購入の瞬間」がマックスで、それ以降のことは、購入したお客さんのこと、お客さん次第と、放り投げるようにしていたと言えます。

次のステップとして、「購入後」のことを接客するようになっていきます。
「何かあったら、メンテナンスなど言ってくださいね」と。しかし、「もの」を購入した最大の目的、喜びは、「ただ使える」ということだけではないはずです。

これからは「購入」と「メンテナンス」の間にある「日常」についても、店である「実店舗」が様々に「実際の場」を使って購入した「もの」を使って楽しく生活していくことを継続的に応援していく。

買ってもらって終わりではなく、「買ったらそれによって何かが始まる」ようなことを実際に提供していく。それが「店」の役割だと思うのです。

欲しいものが手に入るだけではなく、新しい生活が保障されるような関わり方。
買い物をきっかけに、一緒に旅に出かけるような継続的な関係性です。

その想いは「もの・の・まわり」という名前に込めました。

「もの」には「まわり」がある。「まわり」とは、その「もの」が生まれるに至った全てであり、「もの」を手にいれるとは、単に「もの」としてだけ、物欲としてだけではないはずで、その「まわり」も手にいれられる。それを「店」がサポートしてあげる。生活者は「まわり」も手にいれることで、「もの」を大切に使い続け、「まわり」に関わる人たちとの交流が、そうした人たち全員の喜びに繋がって、健やかなモノづくり、健やかな生活が生まれていく。「もの・の・まわり」には5つの「まわり」があります。

・その「もの」が生まれた場所、環境を旅して訪ねる。(旅)・その「もの」を持っている人たちと時々、集まる。(仲間)
・その「もの」を通じて、季節を感じる時間を作る。(季節)
・その「もの」の手入れについて、いつも考える。(手入れ)
・その「もの」の背景にある産業を知る(産業)


3・これからの「d」との関わり方のために

これまで「d」として様々な「らしさ」の再認識の活動をしてきました。その土地らしさを再発見する「d design travel」を始め、その土地らしいものを紹介販売する「D&DEPARTMENT」、日本の47都道府県の「らしさ」を一同に検証する「d47」などです。

そして、私たちはそれら活動を「実店舗」で行ってきました。そして、これからもそれは変わらないと思います。

これまでしてきたことをベースに、上記した2つの視点でバージョンアップしていく。まずは私たちが全国にある実店舗の手本の一つとなり、やがて、多くの実店舗に影響を与えるようになっていけたら、みんなで「もの」が「もの」だけじゃなくなり、「もの」を通じて、奥行きのある生活者になっていく。
そう考えています。

モノづくりをしている人たちは、将来へのアプローチを模索しています。そういう人々と一緒に「もの」を通じて生活に幅を作っていく。「d」でものを買うと、定期的に「その商品」を使ったイベントに参加できる。「d」でものを買うと、春夏秋冬の「そのもの」を使った楽しみ方を教えてもらえる。「d」でものを買ったら、同じものを持っている人との交流の時間を作ってもらえて、使い方でわからないことや、新しい使い方などの意見交換ができる・・・・・。

私たち「d」が取り扱う商品の全てに、それらの視点がついていることを目指すことで、どうせ買うなら「そういう店」(例えば「d」)で買おうということになっていく。そう考えています。

また、同じ思考の店舗同士が連動してツアーを組んだり、東京の店舗とその商品が生まれた場所にあるいろんな店舗が連携して、ユニークな企業訪問企画が実現したりすると、ますます「買い物」に意味が広がり、ますます「実店舗」への興味が増していくと思うのです。

「もの・の・まわり」の5つのことは、何も一店舗のスタッフで全てをやらなくてもいいと思います。外部の人が「ツアー」を企画したり、お客さんとして関係の深い主婦の方が、その商品を使った料理教室をやってもいいと思います。もちろん、その商品を作っている人、企業が率先して勉強会やツアーを企画してもいいと思いますし、お客さんとして買われた方同士で、季節の楽しみ方のイベントを組んでも。柔軟に取り組み、「もの」にある背後とも言える奥深い魅力をみんなで共有できるといいなと思っています。


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D&DEPARTMENTの新しい商品の買い方「もの・の・まわり」を実験的に創業者である僕、ナガオカケンメイとライターの西山薫さんとで書いていくものです。

ロングライフデザインをテーマとして20年活動してきた「D&DEPARTMENT」で、これからの「もの」の「出会い方」「付き合い方」を考えた…

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